魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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13章 賢者の塔

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塔の守護者を倒し、アリアとイアンは最奥部の台座の前に立っていた。そこに置かれた古びた書物「調停の書」は、未だに微かな光を放っている。

アリアが剣を収め、台座に近づきながら呟いた。

「これが……この塔の秘密の中心なんだよね。」

「そうだ。そして、剣の真実もここに記されているはずだ。」
イアンが慎重に調停の書を手に取る。

彼はその場に膝をつき、ページをゆっくりとめくり始めた。記されている文字は古代の言語で書かれており、アリアには意味が分からない。

「なんて書いてあるの?」

「待て……少し時間がかかる。」

イアンは額に手を当て、深く集中して解読を続ける。その表情が次第に険しくなるのを見て、アリアも無言のまま見守った。


数分後、イアンは静かにページを閉じ、アリアを見つめた。

「分かった。この剣が持つ本当の力と、なぜ君が選ばれたのか……全てが。」

「えっ!?なんで私なの?」

アリアが驚きの表情で問いかける。

「『選ばれし刃』は、魔族と人間の戦争を終結させるために作られた調停の道具だ。だが、その力はただの武器ではない。魔族と人間双方の力を統合し、制御することで、世界そのものを再構築する鍵となる。」

「世界を……再構築……?」

アリアの声が震える。

「この剣を完全に覚醒させるためには、『調停者』と呼ばれる存在が必要だ。そして、その条件を満たすのが……君だ。」

「調停者……私が?」

「君が魔力を持たないのは、魔族でも人間でもない“中立の存在”だからだ。この剣は、魔族と人間の双方を滅ぼすことも救うこともできる力を持つ。そして、その選択権を持つ者が君なんだ。」


アリアは剣を見つめながら、呆然とした表情で呟いた。

「でも、この剣は私の命を削るんでしょ?それじゃ、どっちを選ぶにしても……。」

イアンが重い口調で答える。

「そうだ。この剣を使い続ければ、君の命は確実に削られる。そして、完全に覚醒させるには、君の魂そのものが必要になると書かれている。」

「魂……全部?」

アリアの手が震えたが、すぐにそれを抑え、顔を上げた。

「それでも……私はこの剣を使うよ。だって、イアンも街のみんなも守りたいから!」

その言葉に、イアンは一瞬だけ目を伏せた後、静かに答えた。

「君のその決意が、この剣の力を支えているんだろう。だが、私は君を犠牲にさせるわけにはいかない。」

「イアン……?」

「君が選ぶ未来を実現するために、私は全力で支える。剣が君の命を削るなら、私の力を注ぎ込むことでその負担を軽減できるかもしれない。」

イアンの言葉に、アリアは目を丸くした後、微笑んだ。

「そっか、イアンがいてくれるなら、きっと大丈夫だね!」

そのとき、塔全体が微かに揺れ始めた。

「何……また何か来るの!?」
アリアが剣を構える。

「これは……外からの魔力だ。誰かが塔を襲撃している!」
イアンが険しい表情で周囲を見渡す。

突然、塔の入り口付近から爆発音が響き、激しい魔力の波動が押し寄せてきた。

「まさか……またローブの男?」

「いや、もっと強力な魔力だ。奴の背後にいる黒幕が動き出した可能性が高い。」

「ってことは、今すぐここを出たほうがいいよね!」
アリアが即座に台座の書を抱え、イアンを促す。

二人は急いで来た道を引き返しながら、塔の内部を襲う揺れに耐えつつ進んだ。

途中、いくつかの小さな魔物が現れたが、アリアが剣を振るい、瞬く間に斬り倒していく。

「イアン、出口までどれくらい?」

「あと少しだ。だが、敵がすでに外で待ち伏せている可能性もある。」

「だったら、突っ切るしかないじゃん!」
アリアが笑みを浮かべながら剣を握りしめる。

二人が塔の出口にたどり着くと、そこには漆黒のローブをまとった新たな存在が立っていた。その身からは先ほどの騎士とは比較にならないほどの威圧感が漂っている。

「ようやく出てきたか。『調停者』よ。そして、魔族の裏切り者よ。」

その声は低く、しかしどこか冷静さを感じさせるものだった。

「こいつ……ただのローブの男とは違う……!」
アリアが剣を構えながら呟く。

「お前は誰だ!?」
イアンが問い詰める。

「私は『執行者』。調停の書と剣を回収し、この世界に真の秩序をもたらすために派遣された存在だ。」

執行者と名乗る男が杖を掲げ、二人に向けて攻撃を仕掛けてきた。
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