魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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13章 賢者の塔

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塔の外に現れた執行者は、静かに二人を見下ろしていた。その黒いローブの下から覗く瞳は、冷徹な輝きを放っている。

「調停者、そして魔族の裏切り者。お前たちは選ばれし刃と調停の書を持つ資格がない。」

執行者の言葉は平坦ながらも圧倒的な威圧感を帯びていた。アリアは剣を握りしめ、一歩前に出る。

「資格があるかどうかなんて関係ない!私はこの剣を使ってみんなを守る。それだけだ!」

執行者はアリアの決意を嘲笑うように微かに首を傾けた。

「愚かだ。剣を使えば、貴様自身が滅びることになる。それを承知の上でなお進むと言うのか?」

「滅びるなんて分かってる!でも、それでも守りたいものがあるんだよ!」

その言葉に執行者は興味を示すように杖を軽く動かし、闇の波動を周囲に放った。

「ならば、その決意とやらがどれほどのものか、試させてもらおう。」

執行者が杖を掲げると、空間全体が暗黒の魔力に覆われた。その中から無数の黒い刃が現れ、アリアとイアンを狙って飛んでくる。

「避けて!」
アリアが叫びながら飛び退く。

イアンは冷静に魔法陣を展開し、氷の壁を生み出して刃を防ぐ。

「奴の攻撃は魔力そのものだ。この壁も長くは持たない。」
イアンが淡々と分析する。

「だったら、早く決めるしかないね!」

アリアが剣を構え、執行者に向かって突進する。彼女の剣が青白い光を放ちながら敵の防御を突破しようとするが、執行者は軽く杖を振り、その攻撃を受け流した。

「その程度か。」
執行者が冷酷に言い放つ。

執行者の魔力は凄まじく、アリアの剣の一撃さえも簡単に受け流されてしまう。さらに、イアンが放つ氷魔法も全て闇の波動にかき消される。

「どうする、イアン?これじゃ……!」

「奴の防御は完璧だ。しかし、あれだけの力を維持するには相応の魔力を消耗しているはずだ。どこかに隙がある。」

イアンが冷静に状況を分析するが、執行者はさらに攻撃を強める。周囲の闇が巨大な槍となり、二人を押しつぶそうと迫ってくる。

「避けきれない!」
アリアが叫ぶと同時に、イアンが間に立ち、再び氷の壁を生成した。

「君は前に進め。私が防ぐ!」

「でも、イアン!」

「私を信じろ!」

イアンの言葉に、アリアは剣を握り直し、執行者に向かって再び突進する。

執行者との距離を詰めたアリアは、「選ばれし刃」を振り上げ、その力を全開に解放した。その瞬間、剣はさらに強い光を放ち、周囲の闇をかき消し始める。

「この光……!」
執行者が初めて表情を僅かに動かした。

「私を選んだ剣なら、きっと勝てるはず!」

アリアが全力で剣を振り下ろすと、その一撃が執行者の杖を弾き飛ばし、執行者との距離を詰めたアリアは、「選ばれし刃」を振り上げ、その力を全開に解放した。その瞬間、剣はさらに強い光を放ち、周囲の闇をかき消し始める。

アリアが全力で剣を振り下ろすと、その一撃が執行者の杖を弾き飛ばし、防御を打ち破った。

「なるほど、剣の力は確かに脅威だ。しかし、それを扱い切れるかどうかは別の話だ。」執行者は距離を取り、再び闇の魔力を膨れ上がらせる。

アリアは剣を握り直し、息を整える。だが、強い疲労が彼女の体を蝕んでいるのを感じた。

「やっぱり、剣を使うと体が重くなる……でも、負けるわけにはいかない!」

イアンが彼女の背後に立ち、短く声をかける。

「私の魔力を注ぎ込む。君が剣を使う負担を少しでも軽くするために。」

「でも、それじゃイアンが危ないんじゃないの?」

アリアが振り返ると、イアンは微かに笑った。

「危険を共有するのが仲間だろう。」

その言葉に、アリアは小さく頷き、前を向いた。

イアンが杖を握り、魔法陣を展開する。

「魔力転送――剣に共鳴せよ!」

彼の魔力が剣に流れ込み、青白い光がさらに眩しい金色へと変化する。

執行者がその変化を見て冷静に呟く。

「剣と魔族の力の融合……。だが、それだけでは私には届かない。」

「届くかどうかは試してみないと分からないでしょ!」

アリアは剣を高く掲げ、執行者に向かって再び突進する。

執行者は闇の刃を無数に生成し、アリアを迎え撃とうとする。その攻撃をイアンの魔法が次々と遮り、アリアの進路を切り開いていく。

「今だ、アリア!」イアンが叫ぶ。

アリアは全力で剣を振り下ろし、執行者の胸部を深く貫いた。剣から放たれる光が執行者の体内で炸裂し、彼の全身を包み込む。

執行者は膝をつき、低い声で呟いた。

「これほどの力……。だが、選択を間違えれば、いずれその力が貴様らを滅ぼすことになる……。」

その言葉を残し、執行者の体は闇の霧となって消えていった。

アリアは剣を地面に突き刺し、肩で息をする。「終わった……?」

イアンが彼女に歩み寄り、静かに言った。「ああ、どうやら終わったようだ。だが、奴の言葉にあった“選択”というのが気になる。」

「選択……?」アリアが剣を見つめながら呟く。

「剣は確かに強力だが、その力をどう使うかが重要だと言いたかったのだろう。」イアンが書物を見つめながら分析する。

アリアは疲労でよろめきながらも、決意を込めて頷いた。「私はこの剣を使って守りたいものを守る。それだけだよ。」

イアンは彼女の言葉に微笑み、支えるように肩に手を置いた。「それなら、私も君を支え続けよう。」

二人は塔を後にし、静かな月明かりの下、次なる旅路へと向かって歩き始めた。
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