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17章 北の遺跡
①
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市場での買い出しを終えたアリアとイアンは、ギルドでの短い休息を経て、剣が示す次の目的地「北の遺跡」を目指して街を出発した。空気は澄み、旅には最適な天気だったが、二人の胸には次なる試練への覚悟が宿っていた。
街を出た二人は、広がる草原を進んでいた。アリアは剣を腰に下げ、軽快な足取りで歩いている。
「北の遺跡ってどんなところなんだろうね。裂け目みたいに魔族の力が残ってるのかな?」
アリアが周囲を見回しながら尋ねると、イアンは地図を広げて淡々と答えた。
「可能性は高い。この辺りの北部地域には、魔族の拠点がいくつか存在していた記録がある。遺跡がその名残である可能性は否定できない。」
「ってことは、また強い魔物が出てくるかもだね。」
「そうなるだろう。準備は怠らないことだ。」
イアンが言うと、アリアは剣の柄をポンと叩いて笑った。
「任せてよ!剣が光ってくれればきっとなんとかなる!」
「……あまり剣に頼りすぎるな。君自身の力も磨いておかないと、いざという時に後悔する。」
その冷静な忠告に、アリアは少しだけ頬を膨らませた。
「イアンってほんと真面目だよね。でも、そういうとこ好きだよ。」
不意打ちの言葉に、イアンの足が一瞬止まる。アリアはそのまま軽快に歩いて行き、気づかないまま話を続けていた。
夕方になり、二人は森の入り口で野営をすることにした。小さな焚き火が暖かい光を放ち、簡単な夕食の準備が進められている。
「今日は……これでいいだろう。」
イアンが調理した野菜のスープと焼いたパンが、二人の前に並べられる。アリアはスープを一口飲み、目を輝かせた。
「おいしい!イアン、料理の腕どんどん上がってない?」
「……君の言う通り、最低限の技術は必要だと理解しただけだ。」
「謙遜しないでよ!これ、ほんとにおいしいよ。」
嬉しそうにスープを飲むアリアを見て、イアンは少しだけ顔を伏せた。その心には、微かな温もりが広がっていた。
夕食を終えた後、二人は焚き火の前で静かに語り合った。森の中はしんと静まり返り、遠くから虫の鳴き声が聞こえる。
「ねえ、イアン。」
「なんだ?」
「さっき市場で言ってた、君の母親のこと……。その、もう少し聞いてもいい?」
アリアの問いに、イアンは一瞬だけ目を伏せた。しかし、やがて静かに口を開く。
「母は……俺を守るために、魔王軍に戻った。それが正しい選択だったと分かっている。だが、幼い俺には理解できなかった。ただ、置き去りにされたという感覚だけが残った。」
その言葉に、アリアはじっと彼を見つめていた。
「それでも、君はこうして立派に育ったじゃない。」
「……立派かどうかは分からない。だが、母が望んだ通り、俺は生き延びた。それだけだ。」
イアンの声には静かな痛みが滲んでいた。
アリアは少し考え込み、やがてイアンに向き直る。
「イアン、私はね、君のことすごいと思うよ。」
「……どういう意味だ?」
「だって、どんな過去があっても、君は自分の力でここまで生き抜いてきたんだもん。しかも私を助けてくれるくらい強くて優しい。」
アリアは力強く言葉を続けた。
「だから、これからも一緒にいようよ。私が君を支えるし、君も私を支えてくれたらいい。」
その言葉に、イアンは一瞬だけ驚いた表情を見せたが、やがて目を閉じて小さく頷いた。
「……ありがとう、アリア。君がそう言ってくれるなら、俺も少しは前を向ける気がする。」
アリアはその言葉に嬉しそうに微笑み、焚き火の炎を見つめた。
街を出た二人は、広がる草原を進んでいた。アリアは剣を腰に下げ、軽快な足取りで歩いている。
「北の遺跡ってどんなところなんだろうね。裂け目みたいに魔族の力が残ってるのかな?」
アリアが周囲を見回しながら尋ねると、イアンは地図を広げて淡々と答えた。
「可能性は高い。この辺りの北部地域には、魔族の拠点がいくつか存在していた記録がある。遺跡がその名残である可能性は否定できない。」
「ってことは、また強い魔物が出てくるかもだね。」
「そうなるだろう。準備は怠らないことだ。」
イアンが言うと、アリアは剣の柄をポンと叩いて笑った。
「任せてよ!剣が光ってくれればきっとなんとかなる!」
「……あまり剣に頼りすぎるな。君自身の力も磨いておかないと、いざという時に後悔する。」
その冷静な忠告に、アリアは少しだけ頬を膨らませた。
「イアンってほんと真面目だよね。でも、そういうとこ好きだよ。」
不意打ちの言葉に、イアンの足が一瞬止まる。アリアはそのまま軽快に歩いて行き、気づかないまま話を続けていた。
夕方になり、二人は森の入り口で野営をすることにした。小さな焚き火が暖かい光を放ち、簡単な夕食の準備が進められている。
「今日は……これでいいだろう。」
イアンが調理した野菜のスープと焼いたパンが、二人の前に並べられる。アリアはスープを一口飲み、目を輝かせた。
「おいしい!イアン、料理の腕どんどん上がってない?」
「……君の言う通り、最低限の技術は必要だと理解しただけだ。」
「謙遜しないでよ!これ、ほんとにおいしいよ。」
嬉しそうにスープを飲むアリアを見て、イアンは少しだけ顔を伏せた。その心には、微かな温もりが広がっていた。
夕食を終えた後、二人は焚き火の前で静かに語り合った。森の中はしんと静まり返り、遠くから虫の鳴き声が聞こえる。
「ねえ、イアン。」
「なんだ?」
「さっき市場で言ってた、君の母親のこと……。その、もう少し聞いてもいい?」
アリアの問いに、イアンは一瞬だけ目を伏せた。しかし、やがて静かに口を開く。
「母は……俺を守るために、魔王軍に戻った。それが正しい選択だったと分かっている。だが、幼い俺には理解できなかった。ただ、置き去りにされたという感覚だけが残った。」
その言葉に、アリアはじっと彼を見つめていた。
「それでも、君はこうして立派に育ったじゃない。」
「……立派かどうかは分からない。だが、母が望んだ通り、俺は生き延びた。それだけだ。」
イアンの声には静かな痛みが滲んでいた。
アリアは少し考え込み、やがてイアンに向き直る。
「イアン、私はね、君のことすごいと思うよ。」
「……どういう意味だ?」
「だって、どんな過去があっても、君は自分の力でここまで生き抜いてきたんだもん。しかも私を助けてくれるくらい強くて優しい。」
アリアは力強く言葉を続けた。
「だから、これからも一緒にいようよ。私が君を支えるし、君も私を支えてくれたらいい。」
その言葉に、イアンは一瞬だけ驚いた表情を見せたが、やがて目を閉じて小さく頷いた。
「……ありがとう、アリア。君がそう言ってくれるなら、俺も少しは前を向ける気がする。」
アリアはその言葉に嬉しそうに微笑み、焚き火の炎を見つめた。
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