魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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21章 街に起きた異変

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街を襲う魔物の予兆を聞きつけたアリアとイアンは、街の西に広がる湖へと向かっていた。静寂に包まれた湖周辺には不気味な気配が漂い、二人の緊張感を高めていた。

湖に到着した二人は、まず周囲の状況を確認した。澄んだ水面が静かに広がり、風が木々を揺らす音だけが聞こえる。しかし、その静けさがかえって異様だった。

「なんだか、静かすぎない?」

アリアが剣を握りしめながら周囲を見回す。イアンは杖を構え、湖の中心を見据えた。

「ああ。この静けさは自然のものではない。魔物が何かをしている可能性が高い。」

イアンが慎重に湖の周りを調べる中、アリアは水際に近づいた。その瞬間、水面に波紋が広がり、何かが蠢くような音が聞こえた。

「イアン、これ……!」

アリアが剣を構えると同時に、湖の水が突然大きく盛り上がり、巨大な影が姿を現した。それは魚のような体に鋭い牙を持つ異形の魔物だった。

「くるぞ、アリア!」

イアンが冷気の魔法を放つと、魔物の体に一瞬氷が張りついた。しかし、魔物はその氷を砕きながらアリアに向かって突進してきた。

「速い……!」

アリアは素早く横に跳びながら剣を振り下ろしたが、魔物の硬い鱗が攻撃を弾き返す。

「これじゃ、斬れない……!」

「鱗を狙うな。隙間を探せ!」

イアンの指示に、アリアは魔物の動きを見極めながら剣を構え直した。魔物が再び水中に潜ると、その影が湖底を高速で移動しているのが見える。

「どこから来るの……!」

アリアが警戒していると、魔物が水面から飛び出し、巨大な牙を剥き出しにして襲いかかってきた。その瞬間、イアンが冷気の槍を放ち、魔物の動きを止める。

「今だ、アリア!」

「これで終わりだ!」

アリアが剣を振り上げ、魔物の口の中に斬り込むと、剣が青白い光を放ち、魔物の体を貫いた。魔物は断末魔の叫びを上げながら湖に沈み、静寂が戻った。

戦闘が終わり、アリアとイアンは湖の中心に浮かぶ小さな島に目を向けた。そこには何か光るものが見えた。

「……何かあるね。行ってみよう。」

アリアがそう言うと、イアンが頷き、魔法で湖面に足場を作り始めた。二人はその足場を使って島に渡り、小さな石碑と魔法陣を発見した。

「これは……古代魔族の文字だな。」

イアンが石碑を読み解きながら呟いた。石碑にはこう書かれていた。

「鍵の力を持つ者よ、この地でその力を覚醒させよ。」

「鍵……って、この剣のこと?」

アリアが剣を見つめながら言うと、イアンは頷いた。

「間違いない。この場所は、剣を覚醒させるための何かが隠されているかもしれない。」

その時、剣が微かに振動し、青白い光を放ち始めた。

「剣が……反応してる。」

「何かが始まるぞ。気をつけろ。」

イアンが警戒を促すと、突然魔法陣が輝き、周囲の空気が震え始めた。その光景に二人は身構えた。

魔法陣の光が二人を包み込み、視界が白く染まる。気づくと二人は広大な荒野のような場所に立っていた。その中心には、黒い霧に覆われた影が不気味に佇んでいた。

「また霧の魔物……!?」

「いや、これは……試練だ。剣が俺たちをここに連れてきたのだろう。」

イアンがそう言うと、影がゆっくりと動き出し、二人を睨むように赤い目を光らせた。

「どんな試練だって、乗り越えてみせる!」

アリアが剣を構え、イアンも杖を手に影に向かって歩み寄る。
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