魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

24章 平和な日々

②

片手剣に慣れ始めたアリア。しかし、これまでの大剣とは異なり、片手剣には防御面での不安が残る。ギルドの仲間たちの助言で、盾を装備することを考えた彼女は、街の防具屋を訪れることにした。

訓練を終えてギルドホールに戻ると、カルスが待ち構えていた。

「おいアリア、片手剣に慣れてきたみたいだな。そろそろ次の課題だ。」

「課題……？」

首をかしげるアリアに、カルスは得意げに笑って答えた。

「盾だよ、盾。片手剣を使うなら、防御を固めるのがセオリーだろ？」

「うーん……そういうものなの？」

アリアが少し困ったような顔をすると、ギルドの女性メンバーが割って入る。

「カルスの言うことも一理あるわ。片手剣だけじゃ、防御面が心配だもの。アリアみたいな前衛なら盾を持つべきよ。」

「そうか……分かった！ちょっと防具屋さんに行ってみるね！」

アリアはイアンを誘い、防具屋へと向かった。店内には種類豊富な盾が並んでおり、防具屋の主人が声をかけてきた。

「おう、アリアじゃねえか！今日はどうした？」

「片手剣を使うようになったから、それに合う盾を探してるんだけど……。」

主人はアリアの話を聞きながら頷き、いくつかの盾を並べて見せた。

「片手剣に合うなら、この辺がいいだろう。軽量で扱いやすいのがポイントだな。」

アリアはその中の一つを手に取ったが、どれも少ししっくりこない様子だ。イアンがそれを見て、静かに口を開いた。

「アリアには、もう少し特注品が必要かもしれない。戦闘スタイルに合った盾を作るべきだ。」

主人はイアンの言葉に同意し、大きく頷いた。

「そいつは名案だ。お前専用の盾を作るには、特別な素材を使うのがいいだろうな。」

「特別な素材……？」

「例えば、『輝石の欠片』だな。街の近くの丘にある洞窟で採れるんだが、ちょっとした魔物が巣食っててな。お前なら余裕だろ？」

アリアは素材の話を聞き、すぐに決心した。

「分かった！その輝石の欠片を取りに行くよ！」

のんびりした冒険の始まり

翌朝、アリアとイアンは輝石の欠片を求めて街外れの丘へ向かった。平和が訪れた街を出て、久しぶりにのんびりした冒険に心が弾む。

「平和な時にこんな風に素材を集めるなんて、新鮮だね。」

アリアが笑顔で呟くと、イアンも微笑みながら頷いた。

「そうだな。命を懸けた戦いばかりだったから、こういうのも悪くない。」

二人は穏やかな風を感じながら、丘へと歩を進めた。

丘の洞窟に到着すると、そこは自然の輝きに満ちた美しい場所だった。壁に埋め込まれた鉱石が光を反射し、洞窟内を幻想的に照らしている。

「これが輝石の欠片……すごく綺麗だね。」

アリアが壁から少しだけ突き出た輝石を見つけ、慎重に採取を始める。その時、小さな音が洞窟の奥から聞こえた。

「何かいるな……気をつけろ。」

イアンが杖を構えながら周囲を警戒する。すると、小さな魔物が数匹姿を現した。体は丸く、光を吸収するように黒い毛で覆われている。

「こいつら……邪魔しないでよ！」

アリアが片手剣を抜き、素早い動きで魔物を切り裂く。イアンも魔法で援護し、二人は無事に魔物を撃退した。

「ふぅ……これで大丈夫かな？」

「素材の採取を急ごう。また来るかもしれない。」

輝石の欠片を無事に集めた二人は、洞窟を後にして街へ戻る道を歩いていた。アリアが手にした素材を見つめながら呟く。

「こんなに綺麗な石が盾になるなんて、ちょっと楽しみだな。」

「君専用の盾だ。きっと君にぴったりのものができるだろう。」

イアンの言葉に、アリアは嬉しそうに微笑んだ。

「これで、もっと戦いやすくなるね。次の冒険が楽しみだよ。」

イアンは静かに頷きながら、前を見据えた。

「次の冒険では、きっとまた新しい試練が待っている。だけど、俺たちなら大丈夫だ。」

「うん、絶対にね。」