魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

文字の大きさ
130 / 200
25章 王都周辺

しおりを挟む
ルイスが去った後、アリアとイアンは足早に次の目的地を目指した。村で発見した呪具を調べる必要があり、それが反乱勢力の陰謀を解き明かす鍵になる可能性が高かった。

森を抜けた二人は一息つける場所を探し、小さな川辺で休憩を取った。アリアは焚き火の準備をしながら、イアンが呪具を手に取り、詳しく調べているのを眺めていた。

「それ、何かわかりそう?」

「これは……単なる呪具ではないな。おそらく特定の魔物を誘導するために作られたものだ。」

イアンは冷静な表情を浮かべたまま、呪具に触れた指先を動かしている。

「普通の呪具よりも精巧だ。魔力の波長を利用して魔物を特定の場所に呼び寄せる仕組みだと思われる。」

「そんなことができるなんて……でも、誰がこんなものを?」

「反乱勢力に魔法技術に精通した者がいるのは間違いない。それも、相当の知識と経験を持つ人物だ。」

アリアは薪をくべながら、呪具を見つめた。

「つまり、これを使って村を恐怖に陥れ、混乱させてるってことか……本当に許せない。」

「そして、これを放置すればさらなる被害が出る。次の村で同じような痕跡を探さなければならない。」

イアンが呪具を布で包み、荷物にしまうと、アリアは立ち上がった。

「次の村に急ごう。これ以上、誰かが苦しむのは見たくないから。」

翌日、二人は次の村へ向けて歩き続けた。道中、イアンは無言のまま何かを考え込んでいる様子だった。アリアはそれに気づき、そっと声をかけた。

「イアン、どうしたの?いつもみたいに冷静だけど……何か気になることがある?」

イアンは少し間を置いて答えた。

「ルイスの話だ。彼が言った『セリーナ』という名前……妹のことだろう。」

「うん、そうみたいだったね。」

「彼が執着する理由が、少し分かった気がする。だが、それを君に押し付けていることには変わりない。彼がどういう人間であろうと、君を巻き込むことは許されない。」

イアンの言葉には、どこか硬い決意が込められていた。それを聞いて、アリアは彼の横顔を見ながら笑みを浮かべた。

「でもね、イアン。私、ルイスが可哀想だなって思った。何かを失う痛みって、きっと誰にだってあるよね。」

その言葉に、イアンは一瞬驚いたように彼女を見つめた。そして、わずかに苦笑を浮かべる。

「君は本当に不思議だ。誰にでも優しくする……それが君の強さだ。」

「そ、そんなことないよ。ただ、そう思っただけ。」

アリアは少し恥ずかしそうに顔を赤らめたが、その瞳は真剣だった。

数時間後、次の村に到着した二人を待っていたのは、静まり返った不穏な光景だった。家々の扉は閉ざされ、窓には板が打ち付けられている。

「ここも……魔物の被害を受けているのか?」

アリアが呟くと、イアンが村の中央に目を向けた。

「人がいないように見えるが、隠れているだけかもしれない。注意して進もう。」

二人がゆっくりと村を進むと、突然、物陰から小さな声が聞こえた。

「……助けて……。」

その声にアリアが立ち止まる。イアンもすぐに気配を察知し、杖を構えた。

「誰かいるの?」

アリアが声をかけると、壊れかけた小屋の中から一人の少年が出てきた。彼は泥だらけの服を着ており、恐怖に怯えた目で二人を見ていた。

「魔物が……また来るんだ……!」

少年の言葉にアリアの表情が険しくなる。

「魔物が?どこにいるの?」

「分からない……でも、夜になると必ず……!」

少年は言葉を詰まらせ、震えている。アリアはそっと彼の肩に手を置いた。

「大丈夫だよ。私たちがその魔物を倒すから、安心して。」

その言葉に少年は少しだけ安堵の表情を見せたが、まだ完全に恐怖が消えたわけではない。

アリアとイアンは村に拠点を構え、夜が更けるのを待った。月明かりの下、二人はそれぞれの武器を確認しながら話を交わした。

「また呪具が使われている可能性が高い。魔物が現れたら、すぐにその痕跡を探す。」

「了解!でも、まずはその魔物を倒さなきゃね。」

「その通りだ。気を抜くな、アリア。」

イアンの冷静な声に、アリアは力強く頷いた。夜の静寂を破るように、遠くから低い咆哮が聞こえ始める。

「来た……!」

二人は武器を構え、暗闇の中から現れる敵に備えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

処理中です...