魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

文字の大きさ
143 / 200
27章 事件の黒幕

しおりを挟む
砦のさらに奥へ進むと、空気が一層重くなり、微かな振動が足元に伝わってきた。魔力が満ちた空間が三人を包み込み、次の戦いの幕開けを告げていた。

アリアが剣を握り直し、イアンが杖を構える。ルイスは魔力障壁を展開しつつ、前方に視線を向けた。その時、低く響く声が廊下にこだました。

「よくここまで来たな、冒険者たち。」

声の主は、漆黒のローブをまとったリーダーだった。仮面越しに冷たい視線を向けながら、彼はゆっくりと三人に近づいてきた。

「貴様らのような者が、我らの計画を邪魔するとはな……だが、それもここまでだ。」

「計画だって?こんな魔物を操って、一体何を企んでるの?」

アリアが剣を構えたまま問いかけるが、リーダーは嘲笑を浮かべた。

「知らずとも良い。だが、貴様らがここで倒れることで、私の力を示すことができる。それだけで十分だ。」

彼が杖を掲げると、床に描かれた魔法陣が光を放ち、複数の人影が現れた。それは、完全に魔力で作り出された人型の刺客だった。

刺客たちは実体を持ちながら、明らかに魔法の産物であることがわかる。滑らかな動きで剣を構え、三人に向かって一斉に襲いかかってきた。

「これは……!」

イアンが咄嗟に防御の魔法を展開するが、人型の刺客は魔力障壁を簡単に突破してくる。

「こいつら、魔法を吸収してる……!」

イアンの叫びにアリアが即座に動いた。片手剣を振りかざし、最初の刺客に突進する。その剣撃は刺客の胸を貫き、魔力の霧を撒き散らしながら崩れ落ちた。

「やった!」

だが、その瞬間、背後から別の刺客が襲いかかる。アリアが防御態勢を取ろうとしたその時、ルイスがすかさず間に入った。

「任せろ。」

レイピアがきらめくように動き、刺客の手首を切り落とす。その動きは正確無比で、刺客は完全に動きを封じられた。

「なるほど……こいつら、まさに僕の剣術のために作られたような存在だ。」

ルイスは笑みを浮かべながら、次々と刺客を無力化していく。その動きは滑らかで、迷いがなかった。

イアンはその様子を見ながら、小さく頷いた。

(やはり……対人戦特化の彼の剣術が、ここで本領を発揮する。)

刺客がルイスの前で次々と崩れ落ちる一方で、イアンは冷静に戦況を見極めていた。

一方で、リーダー自身も杖を振り上げ、アリアに向けて魔力の波動を放ってきた。アリアは盾を構えて防御するが、その力は強大だった。

「イアン、援護を!」

アリアの叫びに応じて、イアンが炎の魔法を放つ。燃え上がる火柱がリーダーの周囲を包み込み、彼の動きを一瞬だけ封じた。

「この程度の魔法で……私を止められると思うな!」

リーダーが再び魔法陣を操るが、その隙を突いてイアンがさらに魔法を重ねる。

「君の魔法が刺客を強化しているなら、その流れを断ち切る!」

氷と炎を組み合わせた魔法が魔法陣を凍らせ、動きを鈍らせた。その一瞬の隙を逃さず、アリアがリーダーに迫る。

アリアが剣を振り下ろすと、リーダーは咄嗟に杖を盾のように構え、防いだ。その衝撃でリーダーの仮面がずれ、顔の一部が露わになる。

「まだ終わらない……!」

リーダーは杖を振り払い、さらに強力な魔法を発動しようとするが、その時、ルイスが冷静に一歩前に進んだ。

「君の時間はもう終わりだ。」

ルイスのレイピアが光を放ち、刺客の最後の一体を無力化する。その視線は次にリーダーへと向けられていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

処理中です...