魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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27章 事件の黒幕

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魔法陣が崩壊し、砦の広間に満ちていた魔力の光が徐々に消えていった。アリアの剣が深々と魔法陣の中心を貫き、反乱勢力のリーダー、レオニスは杖を支えに膝をついた。

アリアが剣を引き抜き、ルイスがレイピアを肩に乗せながら近づいた。

「終わりだな、バルグレン侯爵。君の計画もここまでだ。」

ルイスの冷淡な声に、レオニスは苦々しい笑みを浮かべた。

「終わりだと?笑わせる……この程度で私を止めたつもりか?」

その言葉と同時に、砦全体が揺れ始めた。壁の隙間から魔力が噴き出し、崩落の危険が迫っている。

レオニスは杖を掲げ、再び魔法陣の残骸から魔力を引き寄せた。

「この砦は我が命と共に滅ぶ。だが、貴様らを道連れにするには十分だろう!」

彼の言葉にアリアが剣を構え直し、ルイスが即座に障壁を展開する。

「アリア、引け!この砦は崩れる!」

イアンが叫び、杖を振って崩落する瓦礫を氷の魔法で支えながら後退を促した。

「でも……あいつを逃がすわけにはいかない!」

アリアが一歩前に出ようとするが、ルイスがその肩を掴んで引き止めた。

「彼を止めるには、今ここで死ぬ覚悟がいる。だが、君が死んでしまえば、守るべき未来も消える。それでいいのか?」

ルイスの言葉にアリアは歯を食いしばり、剣を下ろした。


レオニスは杖を振りかざし、砦の奥に魔力の扉を出現させた。

「貴様らに真の計画を阻止することはできない。いずれまた会おう、冒険者ども!」

彼が扉の中へと消えると同時に、砦全体が大きく崩れ始めた。

「全員、外に出るぞ!」

イアンが叫び、氷と炎の魔法を駆使して崩れ落ちる瓦礫を切り開きながら、三人は一気に出口へと向かった。


ようやく外に飛び出した三人は、遠くから崩れ落ちる砦を見つめていた。瓦礫の音と共に立ち昇る砂埃が、広い空に舞い上がる。

「……逃がしたか。」

アリアが悔しげに呟いた。剣を握りしめたまま、彼女の視線は崩壊した砦に釘付けだった。

「悔やむのは後だ。今は生き延びたことを喜ぶべきだろう。」

ルイスが静かに言葉をかける。彼の顔には余裕が見えるが、その目は何かを計算しているように鋭かった。

「でも、あいつの計画がまだ残ってるなら……」

アリアが言葉を継ごうとしたが、イアンがそっと肩に手を置いた。

「君がいる限り、僕たちはまた立ち向かえる。だから、今は冷静になるんだ。」

イアンの言葉に、アリアは小さく頷き、剣を収めた。


砦から持ち出した魔法陣の断片と、残された呪具の破片を調べるため、三人は一旦街へ戻ることにした。ルイスは砦を背にしながら、わずかに口元を歪めた。

「レオニスが今どこへ向かおうとしているか、検討はつく。だが、君たちにその話をするのは少し先になりそうだ。」

「どういう意味?」

アリアが振り返ると、ルイスは軽く首を振った。

「まだはっきりしていない。ただ……彼の行動には必ず理由がある。逃亡してなお、何かを狙っているはずだ。」

その言葉を聞いて、イアンは僅かに眉をひそめた。

(ルイスが気にしているのは、レオニス個人の動機だけじゃない……彼の過去も含めて、何か知っているに違いない。)
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