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28章 旧バルグレン領の地下遺跡
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遺跡の探索を進める中、深い場所に入りすぎて引き返すのが難しくなった三人は、比較的安全な広間を見つけて野営することにした。天井の裂け目から微かに月明かりが差し込む中、焚き火が遺跡内を暖かく照らしている。
「遺跡の中でキャンプすることになるなんて、思ってもみなかったよ。」
アリアが苦笑しながら盾を枕代わりに横になる。
「こういうことも旅の醍醐味だと思うしかないな。」
イアンが静かに返しながら、焚き火の火加減を調整した。
「ま、確かに。おやすみ、二人とも。明日も頑張ろうね。」
アリアがそう言うとすぐに目を閉じ、眠りについた。
イアンとルイスは焚き火を挟んで座ったまま、周囲の気配を探るように耳を澄ませていた。しばらくの沈黙の後、ルイスがぽつりと呟いた。
「……君のことを、少し羨ましく思うよ。」
イアンは突然の言葉に軽く眉をひそめ、焚き火越しにルイスを見た。
「……どういう意味だ?」
ルイスは火を見つめたまま、飄々とした笑みを浮かべたが、その目にはどこか寂しさが滲んでいる。
「君とアリアのことさ。君は彼女にとって必要不可欠な存在だろう?どんな危険な場所でも、彼女は君を信じている。君も彼女を信じている。それが見ていて分かるんだ。」
「……それが、どう羨ましいというんだ?」
イアンの声にはほんの僅かに警戒が滲んでいた。
「僕には分からないんだよ、そういう信頼の築き方がね。」
ルイスが肩をすくめながら続ける。
「僕は、人を信じたり信じられたりする方法が分からない。それでも、生きるために“繋がり”が必要だってことだけは理解している。君たちの関係は、僕がどう足掻いても作れないものだと思う。」
「……君がそう思っているだけだろう。」
イアンは焚き火の薪をくべながら答えた。
「アリアは君のことを信じている。お前が彼女を守ってきたからだ。それが分からないのなら、ただ見つめ直せばいい。」
「分かっているさ。でも、僕にはそれを実感する感覚が欠けているんだ。」
ルイスは静かにため息をつく。
「おそらく、妹のセリーナが亡くなったときから、何かが欠けてしまったんだろう。あいつが生きていた頃は、少しは普通の人間らしく振る舞えた気がするよ。」
イアンは一瞬黙り込んだ。焚き火のはぜる音が二人の間に静かに響く。
「それでも、お前はセリーナを想っているんだろう?」
ルイスは驚いたように顔を上げた。
「……どうして分かる?」
「人間は、本当に無関心な相手のことをここまで口にしないものだ。」
イアンの声は冷静だが、どこか温かみを帯びていた。
「過去がどうあれ、お前は自分が守りたいと思った人を守り続けるだろう。それでいいんじゃないか?」
「……そうだな。守りたいものがある。それだけは確かだ。」
ルイスが小さく頷き、焚き火に目を戻した。
しばらく沈黙が続いた後、ルイスがふっと笑みを浮かべた。
「君って、案外優しいんだな。僕のことを全く信用していないと思ってたけど。」
「信用しているわけじゃない。ただ……お前がアリアを害するつもりはないと分かっているだけだ。」
イアンの言葉に、ルイスは目を細めて微笑む。
「なるほど、それで十分だ。少なくとも今はね。」
「……休め。明日も忙しくなる。」
イアンが短く言い、焚き火の火を少し弱めると、ルイスは「分かった」とだけ答え、壁にもたれて目を閉じた。
焚き火の静かな光が遺跡の壁を照らし続ける中、イアンは眠る二人を見守りながら、静かに息を吐いた。
「遺跡の中でキャンプすることになるなんて、思ってもみなかったよ。」
アリアが苦笑しながら盾を枕代わりに横になる。
「こういうことも旅の醍醐味だと思うしかないな。」
イアンが静かに返しながら、焚き火の火加減を調整した。
「ま、確かに。おやすみ、二人とも。明日も頑張ろうね。」
アリアがそう言うとすぐに目を閉じ、眠りについた。
イアンとルイスは焚き火を挟んで座ったまま、周囲の気配を探るように耳を澄ませていた。しばらくの沈黙の後、ルイスがぽつりと呟いた。
「……君のことを、少し羨ましく思うよ。」
イアンは突然の言葉に軽く眉をひそめ、焚き火越しにルイスを見た。
「……どういう意味だ?」
ルイスは火を見つめたまま、飄々とした笑みを浮かべたが、その目にはどこか寂しさが滲んでいる。
「君とアリアのことさ。君は彼女にとって必要不可欠な存在だろう?どんな危険な場所でも、彼女は君を信じている。君も彼女を信じている。それが見ていて分かるんだ。」
「……それが、どう羨ましいというんだ?」
イアンの声にはほんの僅かに警戒が滲んでいた。
「僕には分からないんだよ、そういう信頼の築き方がね。」
ルイスが肩をすくめながら続ける。
「僕は、人を信じたり信じられたりする方法が分からない。それでも、生きるために“繋がり”が必要だってことだけは理解している。君たちの関係は、僕がどう足掻いても作れないものだと思う。」
「……君がそう思っているだけだろう。」
イアンは焚き火の薪をくべながら答えた。
「アリアは君のことを信じている。お前が彼女を守ってきたからだ。それが分からないのなら、ただ見つめ直せばいい。」
「分かっているさ。でも、僕にはそれを実感する感覚が欠けているんだ。」
ルイスは静かにため息をつく。
「おそらく、妹のセリーナが亡くなったときから、何かが欠けてしまったんだろう。あいつが生きていた頃は、少しは普通の人間らしく振る舞えた気がするよ。」
イアンは一瞬黙り込んだ。焚き火のはぜる音が二人の間に静かに響く。
「それでも、お前はセリーナを想っているんだろう?」
ルイスは驚いたように顔を上げた。
「……どうして分かる?」
「人間は、本当に無関心な相手のことをここまで口にしないものだ。」
イアンの声は冷静だが、どこか温かみを帯びていた。
「過去がどうあれ、お前は自分が守りたいと思った人を守り続けるだろう。それでいいんじゃないか?」
「……そうだな。守りたいものがある。それだけは確かだ。」
ルイスが小さく頷き、焚き火に目を戻した。
しばらく沈黙が続いた後、ルイスがふっと笑みを浮かべた。
「君って、案外優しいんだな。僕のことを全く信用していないと思ってたけど。」
「信用しているわけじゃない。ただ……お前がアリアを害するつもりはないと分かっているだけだ。」
イアンの言葉に、ルイスは目を細めて微笑む。
「なるほど、それで十分だ。少なくとも今はね。」
「……休め。明日も忙しくなる。」
イアンが短く言い、焚き火の火を少し弱めると、ルイスは「分かった」とだけ答え、壁にもたれて目を閉じた。
焚き火の静かな光が遺跡の壁を照らし続ける中、イアンは眠る二人を見守りながら、静かに息を吐いた。
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