魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊

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33章 光と影の交わる地

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ローデンを出発して三日目。アリアたちは山岳地帯に足を踏み入れていた。標高が上がるにつれ、空気が冷たくなり、険しい岩場が視界を支配している。

「こういうところ、魔物も出やすいんだよね。」

アリアが前方を見据えながら呟いた。その声には緊張感が含まれていた。

「その通りだ。この辺りでは地形を利用した待ち伏せが多い。気を抜くな。」

イアンが冷静に答える。彼の視線は周囲の岩陰や森の端を絶えず警戒していた。

「お前たち二人とも、そんなに緊張するな。もし出てきたら、俺が一撃で片付ける。」

ルイスが軽い調子で言うと、アリアは少し呆れた表情を浮かべた。

「そういう油断が一番危ないんだから……。」

「油断してるわけじゃないさ。ただ、お前たちが心配しすぎるのもどうかと思うだけだ。」

ルイスが笑いながら答えるが、その目はしっかりと前方を見据えていた。

山岳地帯の魔物:岩影の狙撃者

険しい岩場を進んでいる最中、突然遠くから鋭い音が響いた。

「伏せろ!」

イアンの叫びと同時に、三人は地面に身を伏せた。次の瞬間、岩壁に鋭い針のような物体が突き刺さる。

「弓か……いや、魔力で飛ばされた石片だな。」

イアンが分析すると、アリアは剣を抜きながら身を起こした。

「どこから撃ってきたの?」

「左前方、岩の陰だ。」

ルイスが素早く指示を出し、雷の剣を構える。次の瞬間、雷光が岩場に放たれ、隠れていた魔物が姿を現した。

それは四足で移動する犬型の魔物で、背中に複数の骨のような突起を持っていた。それらが弾丸のように飛ばされている。

「嫌なタイプね……!」

アリアが盾を構えながら前に出る。その背後でイアンが素早く魔法を準備する。

「動きを止める。合図をしたら一斉に攻撃しろ。」

イアンが杖を振ると、足元から氷の蔦が伸び、魔物の脚を絡め取った。その瞬間、アリアが前方から突撃し、剣を振り下ろす。

「これで終わりだ!」

彼女の剣が魔物の胸元を貫くと、魔物は断末魔を上げて崩れ落ちた。

「ふぅ……なんとかなったね。」

アリアが息を整えながら言うと、ルイスが肩をすくめて笑った。

「相変わらずいい動きだな。だが、もう少し慎重でもいい。」

「これ以上慎重になったら、動けなくなるよ。」

アリアが軽く言い返すと、イアンが小さく笑みを浮かべた。

「それでも、無茶をするな。次の戦闘では、俺が前に出る。」

「分かったよ。ありがとう、イアン。」


その日の夜、三人は山中で野営をしていた。焚き火が静かに燃え、三人を包む暖かな光と、夜の冷たい空気が対照的だった。

「……山の夜って、静かでいいね。」

アリアが焚き火を見つめながら呟いた。その横で、イアンが短く頷いた。

「こういう静けさは貴重だ。戦闘の緊張を忘れさせてくれる。」

「まあ、明日のための休息ってわけだな。」

ルイスがそう言いながら剣の手入れをしている。三人とも、自然と落ち着いた雰囲気に包まれていた。

その時、アリアがふと口を開いた。

「ねえ、イアン。今日の戦闘で、私の無茶を止めてくれてありがとう。」

「……俺は当然のことをしただけだ。」

イアンは焚き火に視線を落としたまま答える。その声は静かだが、どこか感情が込められているように聞こえた。

「でも、私は助けられてばかりだよ。もっと強くならないと……。」

アリアが真剣な顔で言うと、イアンはそっと彼女に視線を向けた。

「お前が弱いとは思わない。ただ、俺たちがいる以上、全てを一人で背負う必要はない。」

その言葉に、アリアは少し驚いたような顔をしたが、やがて柔らかな笑みを浮かべた。

「……ありがとう。イアンがそう言ってくれると、なんだか安心する。」

その会話を横で聞いていたルイスが、わざとらしく咳払いをした。

「お前たち、あんまりいちゃつくなよ。俺が気まずいだろう。」

「い、いちゃついてないってば!」

アリアが慌てて否定し、イアンはそっと焚き火に目を戻した。その静かな夜、三人は次の冒険に向けて力を蓄えていた。
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