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七斗学院の空は、透き通るような青だった。
少し冷たい春の風が、芝生を撫でながら駆け抜けていく。
今日は特別な日──高等課程恒例の防衛演習が行われる日だ。
「……緊張してる?」
隣のククルが、不安げに俺を見上げた。
柔らかな銀髪が春風に揺れるたび、陽光に照らされて輝いて見える。
「大丈夫だよ。ジムがいるから」
小さく微笑むその表情が、俺の胸を軽く締め付ける。
「ああ。俺が絶対に守る」
自然と手がククルの頭に伸び、いつものように優しく撫でた。
ふわふわとした柔らかな髪が指先に絡み、妙に落ち着く感覚が広がる。
──これが俺たちの日常になって、もう何年になるだろう。
孤児院の小さな食堂で出会ってから、ずっとこうやって並んで歩いてきた。
「クエーサーくん、出番です」
呼び声が響き、俺たちは準備区域へと向かった。
***
演習のルールは単純だ。
《護衛対象(ククル)》を守り抜き、《妨害役(教官側)》の奇襲を防ぐ。
いわば学院版の実戦模擬だ。
──本来ならば、王侯貴族の子弟が護衛対象に立つ。
だが今回は学院側の特別采配で、ククルが聖職者役に選ばれたのだ。
「癒しの神アスクリィエルの系譜を引く混血──神官役としては最適だろう?」
そう説明したのは、黄色の魔導教授──ソフィア先生だった。
「危険はありませんから、安心してね。ジム君も護衛としては非常に優秀だから」
──優秀、という評価をもらえたのは、少し誇らしかった。
***
スタートの合図が鳴り響く。
途端に、空間を満たす魔導障壁が淡く光った。
複数の幻影魔獣が現れ、妨害役の教官たちが次々に包囲網を仕掛けてくる。
「ククル、後ろに!」
俺は素早く前に出て、最初の魔獣を蹴散らした。
鍛え上げた身体は、竜族の血を色濃く継ぐ俺にとって最大の武器だ。
「援護します!」
後方ではククルが魔導陣を展開し、光のバリアで防御支援を繰り返す。
控えめだが正確な魔導操作──繊細さが活きる瞬間だ。
「さすがだな、ジム・クエーサー!」
妨害役の教官までもが、苦笑混じりに呟くほどだった。
──この演習は俺たちの実力を、学院全体に知らしめる絶好の機会だ。
ククルは俺を、俺はククルを信じて動く。
どちらかが欠けても成立しない。
だからこそ、俺たちは強い。
***
こうして、試験は順調に進んでいく。
──だが、最大の難所はこの先に待っていた。
少し冷たい春の風が、芝生を撫でながら駆け抜けていく。
今日は特別な日──高等課程恒例の防衛演習が行われる日だ。
「……緊張してる?」
隣のククルが、不安げに俺を見上げた。
柔らかな銀髪が春風に揺れるたび、陽光に照らされて輝いて見える。
「大丈夫だよ。ジムがいるから」
小さく微笑むその表情が、俺の胸を軽く締め付ける。
「ああ。俺が絶対に守る」
自然と手がククルの頭に伸び、いつものように優しく撫でた。
ふわふわとした柔らかな髪が指先に絡み、妙に落ち着く感覚が広がる。
──これが俺たちの日常になって、もう何年になるだろう。
孤児院の小さな食堂で出会ってから、ずっとこうやって並んで歩いてきた。
「クエーサーくん、出番です」
呼び声が響き、俺たちは準備区域へと向かった。
***
演習のルールは単純だ。
《護衛対象(ククル)》を守り抜き、《妨害役(教官側)》の奇襲を防ぐ。
いわば学院版の実戦模擬だ。
──本来ならば、王侯貴族の子弟が護衛対象に立つ。
だが今回は学院側の特別采配で、ククルが聖職者役に選ばれたのだ。
「癒しの神アスクリィエルの系譜を引く混血──神官役としては最適だろう?」
そう説明したのは、黄色の魔導教授──ソフィア先生だった。
「危険はありませんから、安心してね。ジム君も護衛としては非常に優秀だから」
──優秀、という評価をもらえたのは、少し誇らしかった。
***
スタートの合図が鳴り響く。
途端に、空間を満たす魔導障壁が淡く光った。
複数の幻影魔獣が現れ、妨害役の教官たちが次々に包囲網を仕掛けてくる。
「ククル、後ろに!」
俺は素早く前に出て、最初の魔獣を蹴散らした。
鍛え上げた身体は、竜族の血を色濃く継ぐ俺にとって最大の武器だ。
「援護します!」
後方ではククルが魔導陣を展開し、光のバリアで防御支援を繰り返す。
控えめだが正確な魔導操作──繊細さが活きる瞬間だ。
「さすがだな、ジム・クエーサー!」
妨害役の教官までもが、苦笑混じりに呟くほどだった。
──この演習は俺たちの実力を、学院全体に知らしめる絶好の機会だ。
ククルは俺を、俺はククルを信じて動く。
どちらかが欠けても成立しない。
だからこそ、俺たちは強い。
***
こうして、試験は順調に進んでいく。
──だが、最大の難所はこの先に待っていた。
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