亡命した混血の俺と天使の幼馴染、七斗学院で新しい人生を始めます

藤原遊

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七斗学院の生活にも、俺たちはすっかり慣れてきていた。

朝の鐘に合わせて起床し、授業、実技訓練、神学講義──そして、寮へ戻る穏やかな日々。
かつて孤児院で過ごしていた頃と違い、ここには新しい学びが溢れている。

「ジム、今日の実技、すごかったね」

ククルが隣で、穏やかに微笑んでいる。
小柄な肩には七斗学院生徒の白いマント──これは俺たちがレイド王国枠で入学している証だ。

「いや、まだまだだよ。……でもまあ、訓練でお前が怪我しないで済むなら、それが一番だけどな」

俺は苦笑しながら答えた。

ククルは実技の際、守られる立場になることが多い。
天使の血を引く繊細な身体──学術方面では高い評価を受けているものの、戦闘系統の訓練では無理をさせないよう教官も配慮していた。

「……ジムがいるから、僕は安心して学べるよ」

小さく、けれどはっきりと告げるククルの声に、胸がきゅっと締め付けられる感覚が広がる。

──可愛い。
──儚いくせに、こういうときだけは真っ直ぐだ。

この手を、離したくない。

「俺はずっと傍にいるよ」

思わず自然に言葉が漏れた。
ククルは少しだけ頬を染め、そっと俺の袖を摘まんだ。

「……ありがとう」


実技訓練の後、教室棟の渡り廊下を歩く。

ふと、前方から軽やかな足取りで駆け寄ってくる姿があった。

「ジム! ククル! お疲れ様」

それはウェバルだった。

鮮やかな青のマント──ノイトラール共和国枠の学生である彼は、学院内でもよく顔を合わせる友人のひとりだ。

「訓練、大変そうだったね。でも、今日も無事でよかったよ」

「うん、ありがとう」

ククルが嬉しそうに笑みを浮かべた。

ウェバルは本当に優しい。
彼がノイトラール共和国の養子──つまりかなりの高位の立場だということは知っているが、学院内ではそんな権威を一切振りかざさない。

「そうそう、今度また、図書塔で新しい神話の写本を閲覧できるらしいよ。ククル、興味ある?」

「本当? ぜひ見に行きたいです」

「じゃあ今度、三人で行こう」

ウェバルはそう言って、軽やかに笑った。

……こうして学院での日々は、穏やかに過ぎていく。


──だが、この平穏が長く続くわけではないと、俺はどこかで分かっていた。

どこまでも優しく、儚いククルの手を守るために。
いつかきっと、もっと強くなければならない。
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