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第1部
11章 王都防衛戦
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王都の夜を切り裂くように、森で魔物の集団が目撃されたとの報告が王城に届いた。広間に集まった一行は、オーウェンが広げた地図を囲みながら、その内容に耳を傾けていた。
「規模はこれまでに確認されたものの中で最大級だそうだ。数百単位の魔物が王都を目指している」とオーウェンが杖で地図を指しながら言う。
「やはりただの群れではないな。この動きには明確な意図がある」とライアンが眉をひそめた。
セドリック卿が深く息を吐きながら口を開いた。
「防衛線を築き、城壁の外で奴らを食い止めるしかあるまい。王都に入られたら被害は計り知れない」
「そのための布陣はこちらで考えるが、戦いの指揮はルイスに頼むのが最善だろう」とオーウェンが言うと、他の全員が頷いた。
ミユだけがその発言に少し戸惑い、ルイスを見つめた。
「えっと……ルイス様が?」
ルイスは微かに苦笑しながらも、頷いて答えた。
「僕が指揮を執る。これまでも何度も戦場に立ってきたから、兵士たちも安心して動けるだろう」
その言葉にミユはますます疑問を感じたが、周りがそれを当然のこととして受け入れている様子に口を挟むことができなかった。
「ミユ、君には後方で僕たちの援護をお願いしたい。無理はしないでくれ」とルイスが穏やかに言うと、ミユは小さく頷いた。「はい、分かりました……」
翌朝、王都の城壁前には防衛部隊が整列していた。弓兵隊が城壁上に配置され、ライアン率いる前衛部隊が防衛線を固めている。その中央で指示を飛ばしていたのはルイスだった。彼が声を張り上げるたびに兵士たちは迅速に動き、戦場の緊張感が次第に引き締まっていく。
ミユは後方に配置された部隊の中で、その光景を見つめていた。指揮官らしく振る舞うルイスの姿に、彼女の中で疑問が膨らんでいく。
(どうして、セドリック卿の従者であるはずのルイス様が、こんなにも当然のように皆を指揮しているんだろう……?)
遠くから不気味な咆哮が響き、次第に黒い影が森から姿を現し始めた。大地を揺るがす足音とともに、数え切れないほどの魔物たちが王都を目指して進軍してくる。
「全員、準備を!」
ルイスの鋭い声が城壁全体に響いた。彼の指示に従い、弓兵たちが矢をつがえ、前衛部隊が盾を構えた。
「前進してくるのは主に小型の魔物だ。弓兵は先頭の敵を狙え! 前衛は盾を上げて防御を固めろ!」
ルイスが的確な指示を次々に飛ばし、兵士たちは迷うことなく動いた。
第一波が城壁に到達すると、弓矢が雨のように降り注ぎ、魔物たちの動きを止めた。しかし、それでも全ての敵を止めることはできず、次々と城壁に取り付こうとする魔物たちが押し寄せてきた。
ミユはその光景に息を呑みながら、胸の中で祈るように力を解き放った。彼女の光が兵士たちを包み込み、疲労した兵士たちが次々と体勢を立て直す。
「これが……ミユの力か……」
ライアンが前線で敵を斬り伏せながら呟いた。
「すごいじゃないか、ミユ!」
エリオットが城壁上から叫んだ。
ミユはその声に少しだけ笑みを浮かべたが、すぐに新たな動きに気を取られた。魔物の群れの奥から、一際大きな影が現れたのだ。それは人間ほどの大きさの魔物でありながら、まるで知性を持つように動いていた。
「何だ、あいつは……!」
ライアンが警戒を強める。
その瞬間、魔物の群れがさらに激しく動き始め、王都の防衛線を崩そうと圧力を強めた。ルイスが即座に指示を飛ばす。
「前衛は防衛線を維持しろ! エリオット、城壁上から援護を続けてくれ!」
ミユはその戦いを見つめながら、ルイスの姿がますます気になり始めた。周囲が彼の指示に従うだけでなく、その言葉に皆が信頼を寄せている様子が明らかだった。
やがて、一人の兵士が近くの仲間に低く囁くのが聞こえた。
「さすがだ……ルイス殿下……」
その言葉がミユの耳に届いた瞬間、彼女は目を見開いた。
(……殿下?)
頭の中でその言葉が何度も反響した。彼が王子だという事実に思い至り、彼女の胸に驚きが広がった。
その間も、戦いは激しさを増していた。ルイスは最前線に向かい、剣を振るいながら兵士たちを奮い立たせていた。その姿を見つめるミユの中で、戸惑いと尊敬が交錯していった。
(ルイス様が……王子だったなんて……)
彼女はその事実を完全に飲み込むことはできなかったが、今はただ彼の背中を見守ることしかできなかった。
「規模はこれまでに確認されたものの中で最大級だそうだ。数百単位の魔物が王都を目指している」とオーウェンが杖で地図を指しながら言う。
「やはりただの群れではないな。この動きには明確な意図がある」とライアンが眉をひそめた。
セドリック卿が深く息を吐きながら口を開いた。
「防衛線を築き、城壁の外で奴らを食い止めるしかあるまい。王都に入られたら被害は計り知れない」
「そのための布陣はこちらで考えるが、戦いの指揮はルイスに頼むのが最善だろう」とオーウェンが言うと、他の全員が頷いた。
ミユだけがその発言に少し戸惑い、ルイスを見つめた。
「えっと……ルイス様が?」
ルイスは微かに苦笑しながらも、頷いて答えた。
「僕が指揮を執る。これまでも何度も戦場に立ってきたから、兵士たちも安心して動けるだろう」
その言葉にミユはますます疑問を感じたが、周りがそれを当然のこととして受け入れている様子に口を挟むことができなかった。
「ミユ、君には後方で僕たちの援護をお願いしたい。無理はしないでくれ」とルイスが穏やかに言うと、ミユは小さく頷いた。「はい、分かりました……」
翌朝、王都の城壁前には防衛部隊が整列していた。弓兵隊が城壁上に配置され、ライアン率いる前衛部隊が防衛線を固めている。その中央で指示を飛ばしていたのはルイスだった。彼が声を張り上げるたびに兵士たちは迅速に動き、戦場の緊張感が次第に引き締まっていく。
ミユは後方に配置された部隊の中で、その光景を見つめていた。指揮官らしく振る舞うルイスの姿に、彼女の中で疑問が膨らんでいく。
(どうして、セドリック卿の従者であるはずのルイス様が、こんなにも当然のように皆を指揮しているんだろう……?)
遠くから不気味な咆哮が響き、次第に黒い影が森から姿を現し始めた。大地を揺るがす足音とともに、数え切れないほどの魔物たちが王都を目指して進軍してくる。
「全員、準備を!」
ルイスの鋭い声が城壁全体に響いた。彼の指示に従い、弓兵たちが矢をつがえ、前衛部隊が盾を構えた。
「前進してくるのは主に小型の魔物だ。弓兵は先頭の敵を狙え! 前衛は盾を上げて防御を固めろ!」
ルイスが的確な指示を次々に飛ばし、兵士たちは迷うことなく動いた。
第一波が城壁に到達すると、弓矢が雨のように降り注ぎ、魔物たちの動きを止めた。しかし、それでも全ての敵を止めることはできず、次々と城壁に取り付こうとする魔物たちが押し寄せてきた。
ミユはその光景に息を呑みながら、胸の中で祈るように力を解き放った。彼女の光が兵士たちを包み込み、疲労した兵士たちが次々と体勢を立て直す。
「これが……ミユの力か……」
ライアンが前線で敵を斬り伏せながら呟いた。
「すごいじゃないか、ミユ!」
エリオットが城壁上から叫んだ。
ミユはその声に少しだけ笑みを浮かべたが、すぐに新たな動きに気を取られた。魔物の群れの奥から、一際大きな影が現れたのだ。それは人間ほどの大きさの魔物でありながら、まるで知性を持つように動いていた。
「何だ、あいつは……!」
ライアンが警戒を強める。
その瞬間、魔物の群れがさらに激しく動き始め、王都の防衛線を崩そうと圧力を強めた。ルイスが即座に指示を飛ばす。
「前衛は防衛線を維持しろ! エリオット、城壁上から援護を続けてくれ!」
ミユはその戦いを見つめながら、ルイスの姿がますます気になり始めた。周囲が彼の指示に従うだけでなく、その言葉に皆が信頼を寄せている様子が明らかだった。
やがて、一人の兵士が近くの仲間に低く囁くのが聞こえた。
「さすがだ……ルイス殿下……」
その言葉がミユの耳に届いた瞬間、彼女は目を見開いた。
(……殿下?)
頭の中でその言葉が何度も反響した。彼が王子だという事実に思い至り、彼女の胸に驚きが広がった。
その間も、戦いは激しさを増していた。ルイスは最前線に向かい、剣を振るいながら兵士たちを奮い立たせていた。その姿を見つめるミユの中で、戸惑いと尊敬が交錯していった。
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