【書籍化に伴い近日一部非公開へ移行予定】幼女となった社畜は異世界の救世主となる

藤原遊

文字の大きさ
52 / 74
第3部

10章結晶の力と新たな疑問

しおりを挟む
翌日の昼下がり、魔術研究室ではオーウェンが結晶の欠片を調査する手を止め、深い溜息をついていた。
「この波動……どうやら、単なる魔力では説明がつかない。」

エリオットが棚の隅から古い書物を引っ張り出しながら、興味深そうに尋ねた。「つまり、結晶はただの魔法の遺物じゃないってことか?」

「そう考えるのが妥当だな。」オーウェンは眉をひそめて答えた。「この結晶には、魔法を超えた何か……特別な存在に結びつく力が込められている可能性がある。」

「特別な存在って?」エリオットが身を乗り出した。

オーウェンは少し間を置いてから静かに言った。「この大陸に伝わる“女神の伝説”に関係しているかもしれない。」

その言葉にエリオットの顔が僅かに引き締まる。「女神の伝説って、理想郷とか理屈に合わない楽園の話だろ? それがこの結晶と何の関係があるっていうんだ?」

「それが分かれば苦労はしない。」オーウェンは手元の資料を指差した。「だが、結晶が示す波動は確かに特別だ。おそらく、この欠片自体が“女神たちの遺したもの”である可能性が高い。」

ミユの疑念

その話を聞いていたミユは、不安そうに欠片を見つめた。「もし、この結晶が女神の遺したもので、特別な力を持っているなら……ルイス様に完全に反応しなかったのはなぜなんでしょう?」

オーウェンはその問いに少し沈黙した後、真剣な表情で答えた。「それは、ルイス殿下の魔力が……もしくは、血筋が何らかの影響を受けているからかもしれない。」

「血筋……」ミユの心に再び重い疑念が浮かぶ。彼女が記録室で見つけた事実――先々代の王が養子を迎えたこと。その子孫であるルイスが、もし本当に王家の血を引いていないとすれば……。

ルイスはミユの顔をちらりと見て、彼女が何かを抱え込んでいることに気づいた。「ミユ、君が抱えていることがあるなら、無理に隠さなくてもいい。僕たちは仲間だろう?」

ミユは一瞬言葉を詰まらせたが、かろうじて微笑んだ。「ありがとうございます。でも、もう少し自分で考えてみたいんです。」

ルイスはそれ以上問い詰めず、穏やかな表情で頷いた。「分かった。君が話したくなる時まで待っているよ。」

宮廷の影

その日の夕方、ルイスの執務室には王宮の重鎮たちが集まり、結晶についての議論が交わされていた。
「この結晶が持つ力は、我々の国にとって非常に重要な意味を持つ可能性があります。」重々しい声で語るのは、宮廷魔法顧問の一人だった。

「だが、この結晶を扱うには細心の注意が必要だ。」別の顧問が意見を重ねる。「もしこれが他国の手に渡れば、大陸全体の均衡が崩れるだろう。」

「それならば、結晶の研究をさらに進め、完全に制御する方法を見つけるべきです。」そう提案する者もいた。

会議の様子をじっと見つめていたルイスは、全員が口を閉ざした瞬間、静かに口を開いた。「確かに、この結晶が持つ力は重要だ。しかし、制御を急ぐあまり、無理に研究を進めれば危険を招く可能性もある。慎重に進めるべきだろう。」

その言葉に、場の空気は少し落ち着いたようだった。だが、ルイスの胸には別の不安が渦巻いていた。

ミユの決意

その夜、ミユは自室の机に向かい、記録室で見つけた書物を改めて読み返していた。
「ルイス様がこの事実を知ったら……どう思うだろう。」
彼女は自問しながら、ページを閉じた。

窓の外を見上げると、静かな月明かりが広がっていた。ミユはそっと息を吐き、小さく決意を呟いた。「私が知ったことを、いつかお伝えしなければ……でも、その前に、もっと確かなことを調べないと。」

彼女は記録室に再び向かう決意を胸に、そっと立ち上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

捕まり癒やされし異世界

蝋梅
恋愛
飲んでものまれるな。 飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。 異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。 「これ、売れる」と。 自分の中では砂糖多めなお話です。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

異世界転移して冒険者のイケメンとご飯食べるだけの話

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 社畜系OLの主人公は、ある日終電を逃し、仕方なく徒歩で家に帰ることに。しかし、その際帰路を歩いていたはずが、謎の小道へと出てしまい、そのまま異世界へと迷い込んでしまう。  持ち前の適応力の高さからか、それとも社畜生活で思考能力が低下していたのか、いずれにせよあっという間に異世界生活へと慣れていた。そのうち家に帰れるかも、まあ帰れなかったら帰れなかったで、と楽観視しながらその日暮らしの冒険者生活を楽しむ彼女。  一番の楽しみは、おいしい異世界のご飯とお酒、それからイケメン冒険者仲間の話を聞くことだった。  年下のあざとい系先輩冒険者、頼れる兄貴分なエルフの剣士、口の悪いツンデレ薬師、女好きな元最強冒険者のギルド長、四人と恋愛フラグを立てたり折ったりしながら主人公は今日も異世界でご飯を食べる。 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜

蝋梅
恋愛
 仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。 短編ではありませんが短めです。 別視点あり

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

処理中です...