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第3部
10章結晶の力と新たな疑問
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翌日の昼下がり、魔術研究室ではオーウェンが結晶の欠片を調査する手を止め、深い溜息をついていた。
「この波動……どうやら、単なる魔力では説明がつかない。」
エリオットが棚の隅から古い書物を引っ張り出しながら、興味深そうに尋ねた。「つまり、結晶はただの魔法の遺物じゃないってことか?」
「そう考えるのが妥当だな。」オーウェンは眉をひそめて答えた。「この結晶には、魔法を超えた何か……特別な存在に結びつく力が込められている可能性がある。」
「特別な存在って?」エリオットが身を乗り出した。
オーウェンは少し間を置いてから静かに言った。「この大陸に伝わる“女神の伝説”に関係しているかもしれない。」
その言葉にエリオットの顔が僅かに引き締まる。「女神の伝説って、理想郷とか理屈に合わない楽園の話だろ? それがこの結晶と何の関係があるっていうんだ?」
「それが分かれば苦労はしない。」オーウェンは手元の資料を指差した。「だが、結晶が示す波動は確かに特別だ。おそらく、この欠片自体が“女神たちの遺したもの”である可能性が高い。」
ミユの疑念
その話を聞いていたミユは、不安そうに欠片を見つめた。「もし、この結晶が女神の遺したもので、特別な力を持っているなら……ルイス様に完全に反応しなかったのはなぜなんでしょう?」
オーウェンはその問いに少し沈黙した後、真剣な表情で答えた。「それは、ルイス殿下の魔力が……もしくは、血筋が何らかの影響を受けているからかもしれない。」
「血筋……」ミユの心に再び重い疑念が浮かぶ。彼女が記録室で見つけた事実――先々代の王が養子を迎えたこと。その子孫であるルイスが、もし本当に王家の血を引いていないとすれば……。
ルイスはミユの顔をちらりと見て、彼女が何かを抱え込んでいることに気づいた。「ミユ、君が抱えていることがあるなら、無理に隠さなくてもいい。僕たちは仲間だろう?」
ミユは一瞬言葉を詰まらせたが、かろうじて微笑んだ。「ありがとうございます。でも、もう少し自分で考えてみたいんです。」
ルイスはそれ以上問い詰めず、穏やかな表情で頷いた。「分かった。君が話したくなる時まで待っているよ。」
宮廷の影
その日の夕方、ルイスの執務室には王宮の重鎮たちが集まり、結晶についての議論が交わされていた。
「この結晶が持つ力は、我々の国にとって非常に重要な意味を持つ可能性があります。」重々しい声で語るのは、宮廷魔法顧問の一人だった。
「だが、この結晶を扱うには細心の注意が必要だ。」別の顧問が意見を重ねる。「もしこれが他国の手に渡れば、大陸全体の均衡が崩れるだろう。」
「それならば、結晶の研究をさらに進め、完全に制御する方法を見つけるべきです。」そう提案する者もいた。
会議の様子をじっと見つめていたルイスは、全員が口を閉ざした瞬間、静かに口を開いた。「確かに、この結晶が持つ力は重要だ。しかし、制御を急ぐあまり、無理に研究を進めれば危険を招く可能性もある。慎重に進めるべきだろう。」
その言葉に、場の空気は少し落ち着いたようだった。だが、ルイスの胸には別の不安が渦巻いていた。
ミユの決意
その夜、ミユは自室の机に向かい、記録室で見つけた書物を改めて読み返していた。
「ルイス様がこの事実を知ったら……どう思うだろう。」
彼女は自問しながら、ページを閉じた。
窓の外を見上げると、静かな月明かりが広がっていた。ミユはそっと息を吐き、小さく決意を呟いた。「私が知ったことを、いつかお伝えしなければ……でも、その前に、もっと確かなことを調べないと。」
彼女は記録室に再び向かう決意を胸に、そっと立ち上がった。
「この波動……どうやら、単なる魔力では説明がつかない。」
エリオットが棚の隅から古い書物を引っ張り出しながら、興味深そうに尋ねた。「つまり、結晶はただの魔法の遺物じゃないってことか?」
「そう考えるのが妥当だな。」オーウェンは眉をひそめて答えた。「この結晶には、魔法を超えた何か……特別な存在に結びつく力が込められている可能性がある。」
「特別な存在って?」エリオットが身を乗り出した。
オーウェンは少し間を置いてから静かに言った。「この大陸に伝わる“女神の伝説”に関係しているかもしれない。」
その言葉にエリオットの顔が僅かに引き締まる。「女神の伝説って、理想郷とか理屈に合わない楽園の話だろ? それがこの結晶と何の関係があるっていうんだ?」
「それが分かれば苦労はしない。」オーウェンは手元の資料を指差した。「だが、結晶が示す波動は確かに特別だ。おそらく、この欠片自体が“女神たちの遺したもの”である可能性が高い。」
ミユの疑念
その話を聞いていたミユは、不安そうに欠片を見つめた。「もし、この結晶が女神の遺したもので、特別な力を持っているなら……ルイス様に完全に反応しなかったのはなぜなんでしょう?」
オーウェンはその問いに少し沈黙した後、真剣な表情で答えた。「それは、ルイス殿下の魔力が……もしくは、血筋が何らかの影響を受けているからかもしれない。」
「血筋……」ミユの心に再び重い疑念が浮かぶ。彼女が記録室で見つけた事実――先々代の王が養子を迎えたこと。その子孫であるルイスが、もし本当に王家の血を引いていないとすれば……。
ルイスはミユの顔をちらりと見て、彼女が何かを抱え込んでいることに気づいた。「ミユ、君が抱えていることがあるなら、無理に隠さなくてもいい。僕たちは仲間だろう?」
ミユは一瞬言葉を詰まらせたが、かろうじて微笑んだ。「ありがとうございます。でも、もう少し自分で考えてみたいんです。」
ルイスはそれ以上問い詰めず、穏やかな表情で頷いた。「分かった。君が話したくなる時まで待っているよ。」
宮廷の影
その日の夕方、ルイスの執務室には王宮の重鎮たちが集まり、結晶についての議論が交わされていた。
「この結晶が持つ力は、我々の国にとって非常に重要な意味を持つ可能性があります。」重々しい声で語るのは、宮廷魔法顧問の一人だった。
「だが、この結晶を扱うには細心の注意が必要だ。」別の顧問が意見を重ねる。「もしこれが他国の手に渡れば、大陸全体の均衡が崩れるだろう。」
「それならば、結晶の研究をさらに進め、完全に制御する方法を見つけるべきです。」そう提案する者もいた。
会議の様子をじっと見つめていたルイスは、全員が口を閉ざした瞬間、静かに口を開いた。「確かに、この結晶が持つ力は重要だ。しかし、制御を急ぐあまり、無理に研究を進めれば危険を招く可能性もある。慎重に進めるべきだろう。」
その言葉に、場の空気は少し落ち着いたようだった。だが、ルイスの胸には別の不安が渦巻いていた。
ミユの決意
その夜、ミユは自室の机に向かい、記録室で見つけた書物を改めて読み返していた。
「ルイス様がこの事実を知ったら……どう思うだろう。」
彼女は自問しながら、ページを閉じた。
窓の外を見上げると、静かな月明かりが広がっていた。ミユはそっと息を吐き、小さく決意を呟いた。「私が知ったことを、いつかお伝えしなければ……でも、その前に、もっと確かなことを調べないと。」
彼女は記録室に再び向かう決意を胸に、そっと立ち上がった。
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