21 / 74
第1部
閑話 図書室でのひととき
しおりを挟む
エルフィナスに来て間もない頃、ミユは城内の図書室をお気に入りの場所としていた。幼い見た目の彼女が分厚い本を抱え、真剣な顔で読みふける姿は、周囲の者たちから見てもどこか微笑ましいものだった。
その日も、ミユは静かに本棚を巡り、小さな手で背表紙をなぞりながら物語を探していた。椅子に座ると分厚い本を膝の上に広げ、真剣な表情で読み始めた。
「ミユ、本が大好きなんだね。」
軽快な声が聞こえ、彼女が顔を上げると、エリオットがにこやかな笑みを浮かべて立っていた。
「あっ、エリオットさん……!」
ミユは驚きつつ、慌てて本を閉じた。椅子に座る彼女の小さな姿が、エリオットにはどこか子どもらしく見えた。
「そんなに驚かなくてもいいよ。図書室に来たら君がいるかなって思って。」
彼はゆっくりと椅子を引き、彼女の正面に腰掛けた。
「ところで、どんな本を読んでるんだい?」
ミユは少し照れながら、抱えていた本を小さく持ち上げて見せた。
「童話の本です……」
「童話?」
エリオットは目を丸くし、すぐに優しい笑みを浮かべた。
「へえ、いいね。君が読んでる姿、なんだかそのまま童話の主人公みたいだよ。」
その言葉にミユは顔を赤くし、視線を落とした。
「そ、そんなことはありません……」
「どんな話が好きなんだい?」
彼が身を乗り出して尋ねると、ミユは少し考え込んだあと、小さな声で答えた。
「お姫様が……ドラゴンに拐われて……それを王子様が助けてくれるお話です……」
その答えに、エリオットは少し目を見開いた後、笑い声を上げた。
「定番だけど、いい話だよね。勇敢な王子様と、最後には幸せになれるお姫様。誰もが一度は憧れる物語だ。」
「はい……王子様が最後にお姫様にプロポーズしてくれるところが、一番好きなんです。」
ミユは夢見るような表情で語り、エリオットはその姿に微笑んだ。
「ミユがそのお話を好きなの、なんだか分かる気がするな。きっと君は、そのお姫様みたいになりたいんだろう?」
彼は冗談めかして言ったが、ミユは少し困ったような顔をした。
「えっと……そんなことは……」
彼女は曖昧に言葉を濁し、再び本に視線を落とした。
「でも、いいことだよ。」
エリオットは椅子の背もたれに体を預けながら言った。
「お姫様も、お姫様を助ける王子様も、童話の中ではみんな強い気持ちを持っている。ミユもきっと、そんな強さを持ってると思う。」
その言葉にミユは顔を上げ、小さな声で「本当に……そう思いますか?」と尋ねた。
「もちろんさ。」
エリオットは迷いなく答えた。
「君がそういう話を好きだってことは、それだけ優しい心を持ってるってことだと思うよ。」
彼の言葉に、ミユは少しだけ顔を赤らめながら、はにかんだ笑みを浮かべた。
「ありがとうございます……」
エリオットはそんな彼女の様子を見て微笑むと、軽く立ち上がった。
「また面白い童話が見つかったら、僕にも教えてくれよ。」
「はい、分かりました!」
ミユが元気よく頷く姿を背に、エリオットは図書室を後にした。
彼女が再び本に目を向けると、先ほどまでの会話が頭をよぎり、自然と笑みが浮かんだ。彼女の小さな手の中で、分厚い本のページがそっとめくられていった。
その日も、ミユは静かに本棚を巡り、小さな手で背表紙をなぞりながら物語を探していた。椅子に座ると分厚い本を膝の上に広げ、真剣な表情で読み始めた。
「ミユ、本が大好きなんだね。」
軽快な声が聞こえ、彼女が顔を上げると、エリオットがにこやかな笑みを浮かべて立っていた。
「あっ、エリオットさん……!」
ミユは驚きつつ、慌てて本を閉じた。椅子に座る彼女の小さな姿が、エリオットにはどこか子どもらしく見えた。
「そんなに驚かなくてもいいよ。図書室に来たら君がいるかなって思って。」
彼はゆっくりと椅子を引き、彼女の正面に腰掛けた。
「ところで、どんな本を読んでるんだい?」
ミユは少し照れながら、抱えていた本を小さく持ち上げて見せた。
「童話の本です……」
「童話?」
エリオットは目を丸くし、すぐに優しい笑みを浮かべた。
「へえ、いいね。君が読んでる姿、なんだかそのまま童話の主人公みたいだよ。」
その言葉にミユは顔を赤くし、視線を落とした。
「そ、そんなことはありません……」
「どんな話が好きなんだい?」
彼が身を乗り出して尋ねると、ミユは少し考え込んだあと、小さな声で答えた。
「お姫様が……ドラゴンに拐われて……それを王子様が助けてくれるお話です……」
その答えに、エリオットは少し目を見開いた後、笑い声を上げた。
「定番だけど、いい話だよね。勇敢な王子様と、最後には幸せになれるお姫様。誰もが一度は憧れる物語だ。」
「はい……王子様が最後にお姫様にプロポーズしてくれるところが、一番好きなんです。」
ミユは夢見るような表情で語り、エリオットはその姿に微笑んだ。
「ミユがそのお話を好きなの、なんだか分かる気がするな。きっと君は、そのお姫様みたいになりたいんだろう?」
彼は冗談めかして言ったが、ミユは少し困ったような顔をした。
「えっと……そんなことは……」
彼女は曖昧に言葉を濁し、再び本に視線を落とした。
「でも、いいことだよ。」
エリオットは椅子の背もたれに体を預けながら言った。
「お姫様も、お姫様を助ける王子様も、童話の中ではみんな強い気持ちを持っている。ミユもきっと、そんな強さを持ってると思う。」
その言葉にミユは顔を上げ、小さな声で「本当に……そう思いますか?」と尋ねた。
「もちろんさ。」
エリオットは迷いなく答えた。
「君がそういう話を好きだってことは、それだけ優しい心を持ってるってことだと思うよ。」
彼の言葉に、ミユは少しだけ顔を赤らめながら、はにかんだ笑みを浮かべた。
「ありがとうございます……」
エリオットはそんな彼女の様子を見て微笑むと、軽く立ち上がった。
「また面白い童話が見つかったら、僕にも教えてくれよ。」
「はい、分かりました!」
ミユが元気よく頷く姿を背に、エリオットは図書室を後にした。
彼女が再び本に目を向けると、先ほどまでの会話が頭をよぎり、自然と笑みが浮かんだ。彼女の小さな手の中で、分厚い本のページがそっとめくられていった。
11
あなたにおすすめの小説
捕まり癒やされし異世界
蝋梅
恋愛
飲んでものまれるな。
飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。
異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。
「これ、売れる」と。
自分の中では砂糖多めなお話です。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
異世界転移して冒険者のイケメンとご飯食べるだけの話
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
社畜系OLの主人公は、ある日終電を逃し、仕方なく徒歩で家に帰ることに。しかし、その際帰路を歩いていたはずが、謎の小道へと出てしまい、そのまま異世界へと迷い込んでしまう。
持ち前の適応力の高さからか、それとも社畜生活で思考能力が低下していたのか、いずれにせよあっという間に異世界生活へと慣れていた。そのうち家に帰れるかも、まあ帰れなかったら帰れなかったで、と楽観視しながらその日暮らしの冒険者生活を楽しむ彼女。
一番の楽しみは、おいしい異世界のご飯とお酒、それからイケメン冒険者仲間の話を聞くことだった。
年下のあざとい系先輩冒険者、頼れる兄貴分なエルフの剣士、口の悪いツンデレ薬師、女好きな元最強冒険者のギルド長、四人と恋愛フラグを立てたり折ったりしながら主人公は今日も異世界でご飯を食べる。
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
蝋梅
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…
宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。
いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。
しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。
だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。
不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。
差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、
彼女は“自分のための人生”を選び初める。
これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる