悪役令嬢は修道院を目指しますーなのに、過剰な溺愛が止まりません

藤原遊

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5章 過去の陰謀

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アランからの情報をもとに、私は再び社交界へ足を踏み入れることを決めた。オルフ公爵の密会についての手がかりを掴むためには、貴族たちの噂話を利用するのが一番の近道だった。

「リリアナ様、準備はよろしいですか?」

エリーナが私の隣で微笑みながら声をかけてくる。彼女の笑顔には不安も滲んでいるが、それ以上に私を支えようという意志が感じられた。

「ええ、行きましょう。」

夜会の会場は煌びやかで、貴族たちが思い思いに談笑しながらグラスを傾けていた。私とエリーナが入ると、いくつかの視線がこちらに向けられる。久々に社交界に戻った私に対する興味と、エリーナという平民の少女が伴う珍しさが混ざり合っているのが分かった。

「リリアナ様、お久しぶりですね。」

声をかけてきたのは、私の遠い親戚にあたるマルセリス侯爵夫人だった。彼女はいつも情報通で知られている人物だ。

「お久しぶりです、マルセリス様。」

軽く挨拶を交わした後、私は自然な流れで話題を切り出した。

「最近、オルフ公爵の噂を耳にしました。少し気になることがありまして。」

「オルフ公爵?ああ、彼は相変わらず何かと忙しいようですね。裏で何をしているのか、表向きの事業からは見えませんが……」

「何か具体的な話をご存じですか?」

彼女は少しだけ目を細め、私の顔をじっと見つめた。

「何かを探しているのですか、リリアナ様?」

「少し、気になることがありまして。」

「そうですか……。では、一つだけお伝えします。彼が最近訪れた場所として『ラドクリフ邸』の名前が上がっています。」

「ラドクリフ邸……」

その名前に聞き覚えはあった。ラドクリフ男爵家は、表向きは没落した貴族の一つだが、密かに何らかの活動を続けているという噂があった。

「詳しいことは分かりませんが、彼がそこを頻繁に訪れるようになってから、妙な話を聞くようになりました。」

「妙な話?」

「ええ。集会が開かれているとか、何かしらの取引が行われているとか。」

その言葉に、私は小さく頷いた。

「ありがとうございます、マルセリス様。」

その夜、エリーナと共に屋敷へ戻った私は、再び計画を練り始めた。

「リリアナ様、ラドクリフ邸に行くのですか?」

「ええ、おそらくそこが集会の場所でしょう。まずは偵察して、様子を探る必要があります。」

エリーナは少し考え込んだ後、真剣な目で私を見つめた。

「私も行きます。リリアナ様一人では危険です!」

「エリーナ……ありがとう。でも、無理はしないでね。」

「はい!」

エリーナの力強い返事に、私は少しだけ微笑んだ。そして翌日、私はエリーナと共に行動を開始することに決めた。

ラドクリフ邸に向かったのは夜更けだった。屋敷はひっそりとしていたが、時折出入りする人影が見える。その中には、見覚えのある貴族たちの姿もあった。

「ここが、集会の場所……?」

エリーナが小声で呟く。その目は不安と緊張で揺れていた。

「間違いないわ。この屋敷の中で、何かが行われている。」

私はしばらく様子を見た後、エリーナに振り返った。

「エリーナ、ここで待っていてくれる?」

「リリアナ様、それは……!」

「大丈夫。わたくしが何か掴んだらすぐに戻るわ。」

エリーナは一瞬迷ったが、やがて頷いた。

「分かりました。でも、気をつけてください。」

私は彼女に微笑みかけると、屋敷の裏手に回り込み、中に入る方法を探し始めた。

屋敷の中は暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。物音を立てないよう慎重に歩きながら、私は奥の部屋から漏れる小さな声を聞き取った。

「……これが次の取引の詳細だ。公爵の指示通り、問題なく進める。」

「魔石の分配については……」

魔石――アランの言葉が頭をよぎる。この屋敷で、オルフ公爵が密かに取引を進めていることは間違いない。

しかし、その時だった。

「誰だ!」

鋭い声が響き、私は咄嗟に柱の陰に身を隠した。足音がこちらに向かってくる。

(見つかった……!?)

胸が高鳴るのを感じながら、私は身を潜めたまま、次の行動を考えた。
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