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部屋の中には、薬草を煮詰めた香りが漂っていた。
床に敷いた寝台の上には、あの少年。
熱はある。けれど、命にかかわるほどではない。
噛まれたような傷も、深くはなかった。
私は静かに、包帯を巻く。
肌は異様に白く、細くしなやかで、まるで硝子細工のようだった。
人間にしては骨が軽い気がするが、そういう体質もあるのだろう。
膝の上に広げた薬草は、自分で採ってきたものだ。
回復魔法が使えない私には、これくらいしか手段がない。
けれど、充分だ。私はそう思っている。
……と。
寝台の上で、微かに指が動いた。
「……目、覚ました?」
問いかけながら、包帯を巻く手を止める。
ゆっくりと、まぶたが持ち上がった。
その下に現れた瞳は、思った通り、紅――深い赤色だった。
ぞっとするほど整った顔立ち。
一瞬、こちらが戸惑いそうになるほどに、整いすぎている。
「水、飲める?」
差し出すと、こくんと喉が動いた。
大丈夫そうだ。
「……なんで……」
掠れた声が、喉の奥から漏れる。
その言葉に、私は手を止めて首を傾げた。
「ああ、なんで手当してるのかって意味?」
違うかもしれない。けれど、彼は何も言い直さない。
だから、私は自分の答えを続けた。
「見捨てるのも後味悪いし、あのままじゃ死んでたよ。
でもごめんね、癒しの魔法は使えないんだ。
魔力、まるっきりない体質でさ。だから薬草でなんとかしてる」
そう言って、再び作業に戻る。
私の指が彼の腕に触れた瞬間、ぴくりと体が揺れた。
「……大丈夫?」
「……………」
返事はない。ただ、じっとこちらを見ている。
目の奥に、わずかな戸惑いのようなものが揺れていた。
何か思うところがあるのかもしれないけれど、私にはそれが何なのかはわからない。
おそらく、今はまだ聞いても答えてくれないだろう。
「名前、ある?」
「……リュカ」
「そっか。よろしくね、リュカ」
私はただ、それだけを言った。
特別な意味も、気遣いもない。ただの受け答え。
それでも彼は、わずかに視線を逸らした。
それが何を意味しているのか、私にはわからない。
けれど、触れた皮膚が思ったよりも熱を持っていたことだけは、確かだった。
床に敷いた寝台の上には、あの少年。
熱はある。けれど、命にかかわるほどではない。
噛まれたような傷も、深くはなかった。
私は静かに、包帯を巻く。
肌は異様に白く、細くしなやかで、まるで硝子細工のようだった。
人間にしては骨が軽い気がするが、そういう体質もあるのだろう。
膝の上に広げた薬草は、自分で採ってきたものだ。
回復魔法が使えない私には、これくらいしか手段がない。
けれど、充分だ。私はそう思っている。
……と。
寝台の上で、微かに指が動いた。
「……目、覚ました?」
問いかけながら、包帯を巻く手を止める。
ゆっくりと、まぶたが持ち上がった。
その下に現れた瞳は、思った通り、紅――深い赤色だった。
ぞっとするほど整った顔立ち。
一瞬、こちらが戸惑いそうになるほどに、整いすぎている。
「水、飲める?」
差し出すと、こくんと喉が動いた。
大丈夫そうだ。
「……なんで……」
掠れた声が、喉の奥から漏れる。
その言葉に、私は手を止めて首を傾げた。
「ああ、なんで手当してるのかって意味?」
違うかもしれない。けれど、彼は何も言い直さない。
だから、私は自分の答えを続けた。
「見捨てるのも後味悪いし、あのままじゃ死んでたよ。
でもごめんね、癒しの魔法は使えないんだ。
魔力、まるっきりない体質でさ。だから薬草でなんとかしてる」
そう言って、再び作業に戻る。
私の指が彼の腕に触れた瞬間、ぴくりと体が揺れた。
「……大丈夫?」
「……………」
返事はない。ただ、じっとこちらを見ている。
目の奥に、わずかな戸惑いのようなものが揺れていた。
何か思うところがあるのかもしれないけれど、私にはそれが何なのかはわからない。
おそらく、今はまだ聞いても答えてくれないだろう。
「名前、ある?」
「……リュカ」
「そっか。よろしくね、リュカ」
私はただ、それだけを言った。
特別な意味も、気遣いもない。ただの受け答え。
それでも彼は、わずかに視線を逸らした。
それが何を意味しているのか、私にはわからない。
けれど、触れた皮膚が思ったよりも熱を持っていたことだけは、確かだった。
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