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王都に秋の風が吹き始めた。
枯れ葉が音もなく石畳に舞い、庭園の花々はそっと色を落としていく。
それはまるで、ひとつの時代が終わろうとしているかのようだった。
リリーナは教会の慈善活動の一環として、秋祭りに向けた寄付物資の選定に携わっていた。
その背後では、カミラとエドガーが密かに証拠の整理と貴族たちへの圧力を強めている。
すべては、秋の議会で決着をつけるため。
敵の資金源は把握し、残るは人心の動向だけ。
リリーナは己の体調の波を見ながら、穏やかに、けれど的確に指示を飛ばしていく。
かつての「病弱で慈愛に満ちた王女」は変わらない。
けれどその瞳には、冷ややかな火が宿っていた。
「姉上」
その声に振り返ると、そこにいたのはユリアンだった。
十五歳になった少年は、もう“子ども”の顔ではなかった。
背丈も声も、幼い頃とは違う。
けれど、姉を見る目だけは変わっていない。
――むしろ、以前よりも強く、深く。
「祭りの準備、大変そうですね。……姉上、あまり無理はなさらないでください」
「ええ、大丈夫。いつもあなたが心配してくれるから、私はそれだけで元気になるわ」
そう微笑むと、ユリアンの目にかすかな揺らぎが走った。
それは、少年のそれではない。
「……僕は、姉上がどこか遠くへ行ってしまいそうで、怖いんです」
リリーナは、その言葉に一瞬だけ動きを止めた。
そして――そっと視線を伏せる。
「どこにも行かないわ。あなたのそばにいる。それは、ずっと変わらない」
けれど、その優しい約束に、ユリアンは目を細めた。
「……ずっと、ですか?」
その声音は、幼い弟のそれではなかった。
兄・ヴァルセリオスが見せた一抹の疑念――
「ユリアンは、姉に家族以上の感情を抱いているのではないか」
それが、今や確信へと変わり始めていた。
リリーナもまた、それに気づきかけている。
けれど、それを否定するように、彼女はただ微笑みを返す。
「ええ。ずっと、あなたの味方よ」
その言葉が、どれほどユリアンの心を縛るのかを知りながら。
けれどそれでも、そう言わねばならなかった。
彼の未来を守るために。
そして、自分自身が、ユリアンの傍から離れられないことを、もう知っていた。
秋の庭園に、遠く鐘の音が響く。
議会は間もなく始まる。
すべてが決まるその前に、ひとつの執着が、密やかに芽吹きはじめていた。
枯れ葉が音もなく石畳に舞い、庭園の花々はそっと色を落としていく。
それはまるで、ひとつの時代が終わろうとしているかのようだった。
リリーナは教会の慈善活動の一環として、秋祭りに向けた寄付物資の選定に携わっていた。
その背後では、カミラとエドガーが密かに証拠の整理と貴族たちへの圧力を強めている。
すべては、秋の議会で決着をつけるため。
敵の資金源は把握し、残るは人心の動向だけ。
リリーナは己の体調の波を見ながら、穏やかに、けれど的確に指示を飛ばしていく。
かつての「病弱で慈愛に満ちた王女」は変わらない。
けれどその瞳には、冷ややかな火が宿っていた。
「姉上」
その声に振り返ると、そこにいたのはユリアンだった。
十五歳になった少年は、もう“子ども”の顔ではなかった。
背丈も声も、幼い頃とは違う。
けれど、姉を見る目だけは変わっていない。
――むしろ、以前よりも強く、深く。
「祭りの準備、大変そうですね。……姉上、あまり無理はなさらないでください」
「ええ、大丈夫。いつもあなたが心配してくれるから、私はそれだけで元気になるわ」
そう微笑むと、ユリアンの目にかすかな揺らぎが走った。
それは、少年のそれではない。
「……僕は、姉上がどこか遠くへ行ってしまいそうで、怖いんです」
リリーナは、その言葉に一瞬だけ動きを止めた。
そして――そっと視線を伏せる。
「どこにも行かないわ。あなたのそばにいる。それは、ずっと変わらない」
けれど、その優しい約束に、ユリアンは目を細めた。
「……ずっと、ですか?」
その声音は、幼い弟のそれではなかった。
兄・ヴァルセリオスが見せた一抹の疑念――
「ユリアンは、姉に家族以上の感情を抱いているのではないか」
それが、今や確信へと変わり始めていた。
リリーナもまた、それに気づきかけている。
けれど、それを否定するように、彼女はただ微笑みを返す。
「ええ。ずっと、あなたの味方よ」
その言葉が、どれほどユリアンの心を縛るのかを知りながら。
けれどそれでも、そう言わねばならなかった。
彼の未来を守るために。
そして、自分自身が、ユリアンの傍から離れられないことを、もう知っていた。
秋の庭園に、遠く鐘の音が響く。
議会は間もなく始まる。
すべてが決まるその前に、ひとつの執着が、密やかに芽吹きはじめていた。
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