処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません

藤原遊

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第1章 悪役令嬢の自覚

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私は悪役令嬢だ。

――そう気づいたのは、物心がついたときにはもう当たり前のように胸の中にあった。

いずれ断罪され、最悪は処刑される。
それがこの物語の筋書きであり、私の定め。

「アメリア様、お支度は整いました」

控えめに告げる侍女の声。
呼び方も態度も、決して粗末ではない。けれど――ほんの少しの冷たさ、見えない壁のようなものを、私は感じ取っていた。

同じ侍女が弟のエドワードを世話するときは、声に柔らかさが混じる。笑みさえ浮かべる。
私の前では、それは決して出ない。
決して口にしない。けれど、沈んだ空気の差ははっきりしていた。

(……まあ、仕方ないわよね)

私は黒髪青眼。
金髪碧眼だらけの侯爵家の中でただ一人、色の違う存在。母の瞳の色だと説明はつくけれど、弟が両親に瓜二つなせいで余計に浮いてしまう。

「侯爵夫人と、その愛人の子だそうよ」
「ほら、エドワード様より年上だもの。侯爵家の汚点だわ」

そういう噂を、私は何度も耳にしてきた。
彼女たちは決して私の前で言わない。けれど“態度”は雄弁だ。

(……ああ、だから原作のアメリアはグレたのね)

妙に納得した。
きっと耐えきれずに歪み、ヒロインを虐げる「悪役令嬢」となったのだろう。

でも私は知っている。転生者として、この世界の“先”を。
私は世界を滅ぼすきっかけになる存在。だからこそ、少しでも静かに、役目を果たして消えていくしかない。

それなのに――胸の奥で疼く。

(いっそ、私がいなくなれば、弟も両親ももっと幸せになれるのに)

そう思うたび、笑ってごまかすしかなかった。


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※本作は「グラシア辺境伯シリーズ」の一作です。
 同一世界観で描かれた他作品も公開しています。
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