101号室の鍵

藤原遊

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廃墟ホテル

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鬼が部屋の中に足を踏み入れると、床の模様が再び明るく光を放った。それはまるで生きているかのように動き出し、中心の台座を中心に光の線が広がっていく。全員が息を呑み、後ずさるように壁際に張り付いた。

「なんだよ、これ……!」
隼人が震える声で叫ぶ。

「分からないけど……この部屋、奴を封じ込めるためのものかもしれない。」
陽介が模様の動きを見ながら言う。彼の目には恐怖と期待が交錯していた。

鬼は一瞬動きを止めた。白い目が部屋の中央、台座の方をじっと見つめている。その目は何かを警戒しているようにも、興味を持っているようにも見えた。だが、次の瞬間、その長い腕を伸ばし、台座に触れようと動き出した。

「止めろ!」
陽介が叫び、咄嗟に鉄パイプを振りかざした。だが、鬼の動きは速く、腕は簡単にパイプを弾き飛ばす。その衝撃で陽介は後方に倒れ込んだ。

「触らせちゃ駄目だ!あれが何かの鍵になってる!」
真理が叫ぶ。

「じゃあどうするんだよ!」
隼人が怯えた声を上げる。

その時、模様の光が一瞬にして強まった。部屋全体が眩しいほどの光に包まれ、鬼の体がその光に触れるたびに黒い影が崩れ落ちるように溶けていく。

「効いてる……!」
奈緒が驚きの声を上げた。

鬼は一瞬動きを止めたものの、再び体をゆっくりと動かし始めた。光が効いているとはいえ、その威力は鬼を完全に止めるには足りないようだった。

「くそ……光をもっと強くする方法はないのか!」
陽介が叫び、台座に目をやる。

その時、台座に刻まれた文字が再び浮かび上がり、真理がそれを読み取ろうとした。
「これ……『白き刃、真に闇を裂く』……?」

「刃?武器ってことか?」
大樹が焦りながら尋ねる。

「多分……でもどこにあるのよ!そんなもの!」
奈緒が叫ぶ。

台座の模様がさらに激しく光り始めた。その光が部屋全体を駆け巡り、やがて部屋の隅に置かれていた古びた箱を照らすように集まっていった。

「そこだ!」
陽介が叫び、全員が箱に駆け寄る。鍵のかかった古い木箱だったが、大樹が力任せに蹴りつけると、蓋が音を立てて外れた。

中には、一振りの刀が収められていた。刀身は鈍く光り、長い間放置されていたにもかかわらず、錆ひとつない。

「これが……白き刃……?」
真理が呆然と呟く。

「とにかく使えってことだろ!」
陽介が刀を取り上げ、鬼の方を向いた。

鬼はすでに台座のすぐそばにまで迫っていた。白い目が彼らを一瞥すると、再び長い腕を台座に向けて伸ばす。

「お前の好きにはさせない!」
陽介が刀を構え、一気に鬼に向かって斬りかかった。

刀が鬼の腕に触れた瞬間、凄まじい光が弾けた。鬼の腕が光の中で裂け、黒い煙のように消えていく。

「効いてる!それなら行ける!」
大樹が叫ぶ。

陽介はさらに一歩踏み込み、鬼の体を目指してもう一太刀を振り下ろした。光がさらに強まり、鬼は後退するように動いた。だが、鬼の動きが止まることはなかった。腕を再生させるように、再び長く伸ばしながら陽介に向かって振り下ろす。

「危ない!」
奈緒が叫び、陽介が間一髪で身をかわす。鬼の腕が床に叩きつけられると、模様が揺れるように明滅した。

「このままじゃ終わらない……!」
陽介が息を切らしながら刀を構え直した。

「台座を守ればいいんじゃない!?あれがあいつを弱らせてるんでしょ!」
真理が焦りながら叫ぶ。

「なるほどな……守るんじゃなくて、もっと力を引き出すんだ。」
陽介が再び刀を握り直した。

鬼と光る模様、そして白き刃――三つの要素が絡み合い、部屋全体がまるで生きているように鼓動を打っていた。
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