【完結】悪役令嬢アナスタシアは破滅を嗤う

藤原遊

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第一部 聖女セラフィーナと幸福の罠

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 破滅って、美しいと思う。

 いや、もちろんそんなの、綺麗事だってわかってる。だけど、負けが確定してる人間が最後に掴める美学って、そんなもんじゃない?

 私は、悪役令嬢アナスタシア・アーベントローゼ。
 この乙女ゲームの世界では、何度も何度も破滅する役回りだ。
 高慢で、意地悪で、嫌われて、最後は罵倒されて消えていく。そういう運命が最初から決まってる女。

 この物語は、もともとゲームだった。
 前の世界で、私はそのゲームのプレイヤーだった。ストーリーはすべて知っている。ヒロインが誰を選んでも、私は最終的に破滅する。
 王太子ルートなら婚約破棄と断罪。
 宰相の息子ルートなら陰謀に嵌められて処刑。
 騎士団長ルートなら権力争いの駒にされて毒殺。
 ……挙げだしたらキリがない。

 でも、私はこの悪役令嬢に、どこか惹かれていた。
 前の世界では平凡で、目立たず、誰からも期待されず、何も起こらない日々をただ消化していた。
 だけど、アナスタシアは違った。誰よりも鮮やかに、盛大に、転げ落ちていった。
 むしろ清々しいくらいに。

 だから、目が覚めたとき、自分がアナスタシアになっていたのを知っても、驚きより先に苦笑が出た。
 「そうきたか」と。

 一度きりの人生のやり直し。
 筋書きは知ってる。破滅は避けられない。でも、それならせめて――
 綺麗に散ってやろうじゃない。

 筋書き通りに、上等な悪役を演じて。
 そして、予定通りに破滅を迎えよう。
 それが私なりの覚悟だった。

 ……なのに。

 どうして誰も、私を破滅させてくれないの?
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