【完結】悪役令嬢アナスタシアは破滅を嗤う

藤原遊

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第二部 自称ヒロインのミレイナと破滅未遂

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 そしてついに――その日は訪れた。

「本日こそ、悪役令嬢の罪を暴いてみせますわ!」

 宣言高らかに登場したのは、もちろんミレイナ・ベルグレイヴ嬢。

 その姿には、これまでの連敗にも懲りず、むしろ奇妙な執念が漲っていた。

***

 王宮の小広間には、主要な貴族たちが集まっていた。
 王太子ユリウス、セラフィーナ、カイ、レオン、シグルド、ユリオ、アベル――皆がその場にいた。
 もちろん、私も。

 そして彼女は、最後の断罪計画を口にした。

「アナスタシア様は、陰で貴族たちに圧力をかけ、私を孤立させようとしておいでですの! それこそが悪役令嬢の常套手段!」

 ……なるほど。
 今度は「裏からの権力工作による嫌がらせ」という筋書きで来たらしい。

 だが――

「では、具体的な証拠は?」

 カイが冷静に一言投げる。

「証人でも?」

 ユリオが笑いながら乗る。

「具体的な被害状況は?」

 シグルドも淡々と問い詰める。

「証拠もないまま断罪を進めるのは、不公正です」

 アベルまで静かに止めを刺してくる。

 ……うん。やっぱり詰めが甘いのよ、あなた。

***

 苦し紛れにミレイナは叫んだ。

「視線が! ずっと私を睨んでおられましたわ!」

 そこか。
 またそこなのね。

 私はもう、虚無の表情を保ちながら内心で額を抱えた。

***

 そのとき、セラフィーナがふわりと立ち上がった。

「ミレイナ様、誤解ですわ。アナスタシア様はそんなことをなさいません」

 穏やかな笑顔で、でもしっかりとミレイナを正面からたしなめる。

「それに……アナスタシア様は私のお友達ですもの。もし悩みがあれば、いつでも相談してくれて良いのですからね!」

 そう言って、優しく私の手を握ってくるセラフィーナ。

 ――いや、セラフィーナ様……
 あなたは知らないでしょうが、私が今一番相談したいのは、むしろ破滅が遠のいていく絶望そのものなのですけど。

***

 そして――

「アナスタシア」

 ユリウスが静かに立ち上がり、私の隣へと歩み寄る。

「これ以上、君にこんな心ない疑いを向けさせはしない」

 そう言って、迷いなく私の肩を抱き寄せた。

「僕が、君を守る」

 ああ――

 これが、私の世界の様式美。
 破滅は遠のき、幸福の檻はまた少し分厚くなった。

 私は微笑みを浮かべながら、内心では静かにため息をついた。

 ――誰か、破滅という名の救済を。
 ……まあ、もう諦めかけているけれど。
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