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波乱
微かな光
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かれこれしばらくの間、サーシャは手元の布を眺めていた。
一見すればごくありふれた白の布地だ。しかしよく見ると、金糸のような微かな光が不均一に混じっている。
これは先日学園に納品した敷布の、検品前の製品に混じっていたものだ。
ミカエラが起こした紛失騒ぎのせいで、商会の検品担当は大いに予定が狂ってしまった。よその部門から回してもらうはずの人員も集まらない。
その結果、普段は作業に加わらないサーシャまで検品に駆り出されることになった。
『時間がなかった』『予定が狂った』──そんな言い訳は許されない。時間が迫るなかでも、汚れやほつれ、異物混入を見落とさないように、皆で目を凝らした。
その敷布を見つけた時、サーシャは最初そういう生地なのかと思った。
純白の中に見え隠れする輝きは、ほんの一瞬目をかすめ、すぐに見失ってしまう程度の繊細な光だった。
「すみません。これって通しても大丈夫ですか?」
サーシャが声を上げると、ベテランの検品担当者がやってきて「ああ、これね」と言う。
「時々あるんですよ。見た目は綺麗なんですがね。手触りがえらく悪いのでハネてください」
確かに触れるとその部分だけゴワつきを感じる。
敷布としては明らかに不向きだ。
その後は幸いにも順調に点検が進み、同様のものがもう一枚見つかった他は全て納品に至った。
無事に検品を終えてほっと緩む空気のなか、サーシャが訊ねる。
「ハネられた敷布はどうするんですか?」
「悪い部分は除けて、使えそうなところだけ小売りに回しますよ。元が最高級品ですからね、端切れを欲しがる人の方が多いくらいです」
「じゃあ切り取った部分は? 綺麗だから使い道もあるんじゃないですか?」
サーシャの疑問に、検品担当者は首をかしげながら答える。
「といっても、せいぜい手のひらほどの大きさにしかなりませんからねえ。もっと大きければ、それかたくさんあれば利用価値もあるのでしょうが、ごくたまに少し見つかるだけですしね。ずっと以前から廃棄していたと思いますよ」
その端切れをもらったサーシャは、商会の他の者に見せてまわった。
しかし誰もがその存在を知らず、あるいは知っていても取るに足らないものとして、気にも留めていないようだった。
「あら、その布ね。私も何かに使えないか考えたことがあったけど、そんなに小さいとね。かといってその生地って作ろうと思って作れるものじゃないみたいだし、もうずいぶん前に諦めちゃったわ」
シンディは懐かしそうに言って、何枚かの光る端切れを出してきてくれた。
──こんなに綺麗なのに。誰の目にも止まらず捨てられてしまうなんて悲しいわ。
控えめな光をまとうその端切れは儚げで、それでいて確かな美しさが存在感を放ち、サーシャの心を捕らえて離さなかった。
一見すればごくありふれた白の布地だ。しかしよく見ると、金糸のような微かな光が不均一に混じっている。
これは先日学園に納品した敷布の、検品前の製品に混じっていたものだ。
ミカエラが起こした紛失騒ぎのせいで、商会の検品担当は大いに予定が狂ってしまった。よその部門から回してもらうはずの人員も集まらない。
その結果、普段は作業に加わらないサーシャまで検品に駆り出されることになった。
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その敷布を見つけた時、サーシャは最初そういう生地なのかと思った。
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「すみません。これって通しても大丈夫ですか?」
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確かに触れるとその部分だけゴワつきを感じる。
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その後は幸いにも順調に点検が進み、同様のものがもう一枚見つかった他は全て納品に至った。
無事に検品を終えてほっと緩む空気のなか、サーシャが訊ねる。
「ハネられた敷布はどうするんですか?」
「悪い部分は除けて、使えそうなところだけ小売りに回しますよ。元が最高級品ですからね、端切れを欲しがる人の方が多いくらいです」
「じゃあ切り取った部分は? 綺麗だから使い道もあるんじゃないですか?」
サーシャの疑問に、検品担当者は首をかしげながら答える。
「といっても、せいぜい手のひらほどの大きさにしかなりませんからねえ。もっと大きければ、それかたくさんあれば利用価値もあるのでしょうが、ごくたまに少し見つかるだけですしね。ずっと以前から廃棄していたと思いますよ」
その端切れをもらったサーシャは、商会の他の者に見せてまわった。
しかし誰もがその存在を知らず、あるいは知っていても取るに足らないものとして、気にも留めていないようだった。
「あら、その布ね。私も何かに使えないか考えたことがあったけど、そんなに小さいとね。かといってその生地って作ろうと思って作れるものじゃないみたいだし、もうずいぶん前に諦めちゃったわ」
シンディは懐かしそうに言って、何枚かの光る端切れを出してきてくれた。
──こんなに綺麗なのに。誰の目にも止まらず捨てられてしまうなんて悲しいわ。
控えめな光をまとうその端切れは儚げで、それでいて確かな美しさが存在感を放ち、サーシャの心を捕らえて離さなかった。
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