サリシャの光 〜憧れの先へ〜

ねるねわかば

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波乱

リシャ

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「お母さん! これ見て!」

 商会に歓喜の声が響いた。
 シンディに駆け寄るサーシャの手には、一枚の布が握られている。

「これ! 光る布! できたの!!」



 ニックとの会話中に頭をよぎった光景。そこから、サーシャは香り草のことを思い出した。

──リシャ……機織場の洗濯場にもあったわ。

 リシャという名のその香り草は、汚れ落としの役割よりも香り付けとして使われることが多いのだ。
 納品前の敷布からも、微かにこの香りを感じた。


 サーシャは工房に飛び込むと、驚くネネとルルに構わず洗濯の準備を始めた。

 桶に水を張り、裏庭から摘んできたリシャを白布とともに放り込む。よく揉み、水気を切り、熱ゴテを当てる。

 瞬間、光が現れた。
 光の道は熱ゴテの後を走り、きらきらとまたたく。
 それはサーシャの喜びを、高揚を、希望を、この上なく掻き立てた。


 サーシャは夢中になってその作業を続けた。指先は赤くなり、夕暮れになっても手は止まらなかった。

 すると同じ布の中でも、きらめきが強い部分とそうでもない部分があることに気づく。
 さらに何度か試した結果、リシャが直接当たっていた場所ほど熱変が強く出ることや、乾燥したリシャでは何も起こらないことがわかった。


 サーシャの報告を聞いた母が機織場に問い合わせたところ、普段は乾燥させた香り草を使っているが、足りないときは近くに生えているリシャを使うこともあるそうだ。


 光る布を作ることができる。
 その方法を見つけたサーシャに、母もネネもルルも、自分のことのように喜んだ。



 当然すぐにスタンリーにも報告をおこなうと、父も手放しで褒めてくれた。

「これはお披露目会をせねばな。準備を始めよう。サーシャはまず新素材の名前を考えてくれ」

 スタンリーの決定に、商会は慌ただしく動き始める。
 まずお披露目会の舞台が決定した。半年後に行われる商業組合の展示会だ。
 スタンリーとシンディは商会の招待客を吟味している。番頭は帳簿を睨めつけ、ドレス工房のお針子たちは新素材を使った衣裳作りに張り切っている。



 サーシャは課せられた役目に頭を悩ませていた。

 きっとこの生地は、これからの商会を支える大きな力になる。そんな予感があった。
 だからこそ、人々の耳になじみ、また口に上りやすい名前を考えたい。ひねりがなくて、素直な──

『サーシャ!』

 ふと、ニックの声が聞こえた気がした。
 弾むようにサーシャを呼ぶ声と明るい表情。口にするだけで、誰かが笑顔になるような、そんな名前が浮かぶ。



 サーシャはこの生地を『サリシャ』と名付けた。
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