サリシャの光 〜憧れの先へ〜

ねるねわかば

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満ちる

偽物

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 サーシャが外出から戻ると、縫製室を物珍しそうに覗き込む男性がいた。

「何かご用でしょうか?」

 問いかける声に振り向いたのは、サーシャがよく見知った顔だった。

「ロランツおじさん!」



「そういえばロランツさんは王宮勤めでしたね。今はどちらに?」

「少し前に異動になってね。今は内務部にいるよ」

 王女宮の縫製室を訪れたのは、ローラの夫であるロランツ・ケイブだった。
 ローラと同じく、サーシャを子どもの頃から知っている人物だ。名前のとおりの似た者夫婦──彼らを知る人はみなそう評している。
 さすがに勤め先で『おじさん』はまずいのではとサーシャが言うと、ロランツは心底残念そうな顔をして、「じゃあ名前で」と言ったのだった。


「奥さんから話は聞いているよ。君がとても頑張ってるって。『サーシャちゃんに負けないようにまだまだ色んな子見つけてこなきゃ!』って張り切っているよ」

「お手柔らかにお願いしたいです。ローラさんにこれ以上張り切られると、ここのお針子さんをもっと増やしてもらわないといけなくなっちゃう」

 ロランツは声を上げて笑ってから、ふと表情を戻して少しトーンを落とした。

「今日ここに来たのはね、君にはちょっと気分が良くないかも知れない話を聞いたからなんだ」

 事の起こりは、ロランツの知り合いの王宮侍女からの訴えだった。
 その侍女は、評判のお仕着せを貸与されて喜んで着用したものの、他の人が着ているものほど綺麗に見えなかったという。

「その子は自分の体型に合わないのかもと悩んだようだがね。まわりではふくよかな人もやせてる人もみな綺麗に着こなしていて、自分のお仕着せが偽物なんじゃないかって思ったそうだ」

 王宮から貸与されるお仕着せが偽物などと、そんなことがあるのだろうか。
 サーシャはとりあえずその侍女に会ってみることにした。


 ロランツから伝えられた場所に行くと、お仕着せを着た侍女が二人、不安そうな様子で立っていた。
 サーシャは彼女たちを見て驚く。
 一人の侍女が着ているものが、ドレープの高さや数が足りておらず、明らかに貧相に見えたからだ。

「これ、服飾室から貸し出されたものですか?」

 サーシャの問いかけに、件の侍女はどこか言いにくそうに答えた。

「実は、自分の順番が来るのが待ちきれなくて、縫製室に聞きに行ったの。あ、もちろん早く寄越せなんて言うつもりはなかったのよ? そしたら、ちょうどそこにいたお針子が、今出来上がったところだって言って渡してくれたのよ」

 彼女は、自分が少しばかりズルをしてしまったと思っているようだった。だから大っぴらに交換を言い出せなかったのかもしれない。

「おそらくですが、このまま順番を待っていれば、正規のお仕着せは近いうちに貸与されると思いますよ。あなたが着ているそれは、確かに他のものと違います」

 後日、サーシャは彼女から『偽物』を受け取り、その足ですぐさまカイに相談するのだった。
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