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リゼ1
幕間.アルフレート
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リゼを乗せた馬車が見えなくなってしまった。
八つ違いの妹は、長子のあとしばらく子宝に恵まれなかった家族にとって待望の第二子だった。
両親や自分から溺愛と言えるほどに可愛がられた幼少期を過ごし、素直で活発な性格は誰からも好かれた。
大人と接することの多い境遇で育ったせいか、他人との距離を察することに長けている。
リゼは上手く隠しているつもりのようだが、負けず嫌いで気の強い一面もあって、そこもまた彼女が人を惹き付ける所以なのかもしれない。
領の子どもたちに混じって遊び、かけっこも木登りも石磨きも、同年代の中では負け無しのお転婆だった頃がつい最近のことのように思い出される。
アルフレートが父と一緒に領内を巡回しに行くと、自分も兄と同じように一人で馬に乗るのだと厩番に頼み込んで教わり、ポニーではあるがすぐに乗れるようになった時はずいぶん驚かされたものだ。
九年前に父が街道工事の事故で帰らぬ人となった時、妹は十歳だった。
これから女学校に行かせるかそれとも家庭教師を雇おうかと、家族みながリゼの将来に希望を膨らませている最中のことだった。
事故の死傷者への見舞金や工事再開に向けての準備などで、元より少ない蓄えは底をつき、リゼの勉学どころではなくなってしまった。
それでも母や私の妻となった幼馴染みから知る限りのマナーを教わり、執務室で部下たちのやり方を観察して計算や補佐を学んできたリゼが、ついには王宮から請われるまでになったのだ。
リゼの努力が認められて、これほど嬉しいことはない。
母は父の四年後に、洪水後のぬかるみで転倒した馬に巻き込まれて亡くなった。
やるせなさに飲まれそうになったが、妻とリゼがいたから前を向いてやってこられた。
私はリゼからたくさん幸せをもらった。だからこれからはリゼ自身が幸せになる方法を見つけてほしい。
馬車に乗り込む際、ギルベルトの前でリゼが可憐にはにかむところを見た。いつも屈託なく笑う妹の、初めて見る表情だった。本人も自覚すらしていない淡い憧れかもしれない。
ギルベルトは確かに良い青年だが、身分も価値観もあまりにも違いすぎる。彼には彼に、リゼにはリゼに、それぞれ似合いの人がいることだろう。
王都にはこことは比べ物にならないくらい多くの人がいる。今後様々な人と知り合って、リゼ自身を見てくれる人や、損得勘定なくリゼを想ってくれる人に出会ってほしい。
アルフレートは心の底からそう願った。
八つ違いの妹は、長子のあとしばらく子宝に恵まれなかった家族にとって待望の第二子だった。
両親や自分から溺愛と言えるほどに可愛がられた幼少期を過ごし、素直で活発な性格は誰からも好かれた。
大人と接することの多い境遇で育ったせいか、他人との距離を察することに長けている。
リゼは上手く隠しているつもりのようだが、負けず嫌いで気の強い一面もあって、そこもまた彼女が人を惹き付ける所以なのかもしれない。
領の子どもたちに混じって遊び、かけっこも木登りも石磨きも、同年代の中では負け無しのお転婆だった頃がつい最近のことのように思い出される。
アルフレートが父と一緒に領内を巡回しに行くと、自分も兄と同じように一人で馬に乗るのだと厩番に頼み込んで教わり、ポニーではあるがすぐに乗れるようになった時はずいぶん驚かされたものだ。
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これから女学校に行かせるかそれとも家庭教師を雇おうかと、家族みながリゼの将来に希望を膨らませている最中のことだった。
事故の死傷者への見舞金や工事再開に向けての準備などで、元より少ない蓄えは底をつき、リゼの勉学どころではなくなってしまった。
それでも母や私の妻となった幼馴染みから知る限りのマナーを教わり、執務室で部下たちのやり方を観察して計算や補佐を学んできたリゼが、ついには王宮から請われるまでになったのだ。
リゼの努力が認められて、これほど嬉しいことはない。
母は父の四年後に、洪水後のぬかるみで転倒した馬に巻き込まれて亡くなった。
やるせなさに飲まれそうになったが、妻とリゼがいたから前を向いてやってこられた。
私はリゼからたくさん幸せをもらった。だからこれからはリゼ自身が幸せになる方法を見つけてほしい。
馬車に乗り込む際、ギルベルトの前でリゼが可憐にはにかむところを見た。いつも屈託なく笑う妹の、初めて見る表情だった。本人も自覚すらしていない淡い憧れかもしれない。
ギルベルトは確かに良い青年だが、身分も価値観もあまりにも違いすぎる。彼には彼に、リゼにはリゼに、それぞれ似合いの人がいることだろう。
王都にはこことは比べ物にならないくらい多くの人がいる。今後様々な人と知り合って、リゼ自身を見てくれる人や、損得勘定なくリゼを想ってくれる人に出会ってほしい。
アルフレートは心の底からそう願った。
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