異世界転生した世界は男尊女卑。

馳 影輝

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第2話 女神よ、危険予知スキルはグッジョブ。

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電車は満員で俗に言う満員電車を体験している。
前世では電車にも乗った事が無かったので、新鮮ではあるものの、満員の人混みは暑苦しい。
それに女というのは鼻が効く様だ。
男性の体臭はすごく苦手。
私の側にかなり体臭のきつい男がいる様だ。
その時。
心がまたゾワっとした。
兄が部屋に入ってくる時も感じたあのゾワっと感。

すると、誰かが制服のスカートから剥き出しの太ももを触り始めた。

「うっ。」
こそばゆいと言うか気持ち悪いと言うか。
そうか、あのゾワっと感はスキルの危険予知が反応しているんだ。

私は触っている誰かの手をグッと掴んで。
「ちょっと!
やめなさいよ。」
人混みの中で手をグッと持ち上げた。

その手は中年の男性の手だった。

「ちょっと。
何勝手に触ってんのよ。
変態!」
電車が駅に到着したので、そのまま手を引っ張って駅のホームに降りた。
何人かの乗客がその中年男性を取り囲んで確保してくれた。
「おい!
痴漢したのか!」
騒ぎに駅員が駆け寄ってくる。

「どうしました?」

「このおじさんが私の身体を触って、痴漢してきました。」
中年男性は真っ青になり駅員たちに連れて行かれた。

「大丈夫かい?」
数人の乗客の男性や女性が心配して声をかけてくれた。
みんな心配そうな顔をして慰め?てくれてる。

「ええ、大丈夫です。
ありがとうございました。」
私は駅員に連絡先や状況を聞かれた。
後日警察から話を聞かれるかもと言われて、再び電車に乗って学校に向かった。

痴漢初体験。
この世界にも痴漢居るのか。
確かに痴漢に遭いやすそうな格好ではあるが、実際に遭遇すると気持ち悪いものだ。

最寄り駅に到着して降りて地上に出た。
電車に乗っている時は気がつかなかったが、同じ高校の制服を着た学生が沢山歩いている。

学校に到着。
駅から歩いて10分くらいだろうか。

「高校生か~、青春だなぁ~。」
前世の高校生活を思い出してしまった。

校門には先生が立っている。

「おはようございます。」
挨拶をして下駄箱に向かった。
私は1年生だから、右側の列だったな。
名前が書かれている靴箱の蓋を見つけた。
どう言う訳か、学校の記憶が少し欠けてる。
あまり良い記憶が無いのかもしれない。

「え?
し、詩織ちゃん?」
私が下駄箱に手をかける寸前に後ろから名前を呼ばれた。
ああ、見覚えがある。
友達の柿沼香奈美だ。

「ん?
どうしたの?」
よく見ると香奈美は泣いている。
どう言う事だろうか?

「だって、詩織ちゃん。
………。」
やはり記憶が欠けてるには理由があるようだ。
香奈美の反応からすると私は久々に学校に来た可能性もある。
だけど、父も母も不登校な私に対する態度では無かった。
学校には来ていたのか。
どうしてもここ最近の記憶が思い出せない。

下駄箱を開けると。
下駄箱の中からゴミが沢山こぼれ落ちた。
なるほど!
これは恐らくいじめられてたな。

「ねえ?
下駄箱ってゴミ箱だっけ?」
ふふふ、面白くなって来たじゃ無いの。
この私に喧嘩を売るなんて、スキル全開して犯人を引き摺り出してやる。

ゴミはちゃんと全部袋に入れて肩から担いで教室に向かった。

教室のドアを開けると、その部屋にいた全員が私の事をびっくりした顔で見つめて来た。
ちょっと勢いよくドアを開けすぎて大きな音を出してしまったからか。

そして、教壇の上にゴミ袋をどかっと乗せた。

「ちょっと。
この中に私の下駄箱をゴミ箱と間違えたバカが居ると思うんだけど、誰?」
凄んで大きな声で話すと生徒達の顔色がスッと変わったのを感じた。

ちぇ!
全員かよ。
恐らく全員グルだ。
面白い!
確か器用ってスキルはどんな道具や武器でも達人の様に使えるんだったよね。

「ハハハ、お前の下駄箱ゴミ箱だったのか?」
目の前の生徒の中に如何にもヤンチャしてますって言う感じの男子が居る。

私はチョークを右手で掴むと。
そうだよ。
チョークって先生が悪い事をした生徒に向けて投げる武器だよね。
なら、達人レベルのチョーク投げを喰らわせてやるよ。
そう思って右手でチョークをその男子に投げつけた。
チョークはもの凄い速度で芸術的な先生のチョーク投げの様に男子の額に命中した。
命中したチョークは粉々に粉砕しつつ、男子は後ろにのけぞって倒れ込んだ。

あ!
死んだか?
と思うほど気持ち良く命中した。

周りの生徒達は顔面蒼白で私の事を見ている。

そして、自分の席にバックを置いて机の中を見てみた。
予想通り教科書やノートは落書きと切り裂かれている。
ふふふ、ここまで予想通りだと楽しくなって来たわ。

「ちょっと。
誰かしら。
私の教科書とノートをこんなにしたのは?」
可愛い顔の筈の私は恐らく怖い顔をしている。

そして、生徒達は俯いた。
机の中には定規もある。
おっと、定規だと思ったら、これは小学生が剣にして遊ぶアイテムでは無いか。
そう想って定規も手にすると後ろの席の机を剣で斬るように振り下ろした。
バキン!
定規も折れたが、机も天板が割れた。
手を少し怪我して血が滴り落ちる。

「誰?」
パッと生徒達に目を向けると、やっぱり全員ドン引きしてる。
そりゃそうだよね。
定規で天板割って血を流してるのを見ればビビるよね。

「詩織ちゃん。
血が…。」
後ろから香奈美ちゃんが駆け寄って来た。

そして、保健室に連れられて包帯を巻かれ、保健士の先生にいろいろ聞かれて、担任の先生に呼ばれ、怒られてしまった。

教室に戻るとクラスメイト達の私を見る目が変わっている事に気がつく。

「し、詩織ちゃんの教科書や下駄箱にゴミを入れたのは、男子の富谷くんと長谷川くん、それに脅されて加わった3人で、先生に連れて行かれたよ。」

「そうなんだ。
良かった!」
満面の笑みを見せる事で女の子達を安心させた。

それからは今日の様な出来事は起こらなくなった。
教科書も弁償させたし、虐めていた男子達は私のたっての希望で下着だけの姿にして廊下で正座させ、もうイジメはしませんと言うプレートを首から下げさせた。
私って結構執念深いんだよね。
前世の自分を棚に上げて居るけれど。
まあ、それはそれ。

可愛い容姿と乙女スキル全開で皆から愛される女の子を実演して居る。

転生してわかった事をまとめて見た。
男尊女卑と言うワードが当てはまる人達が存在する。
私に対する関係性で私は抵抗が出来なくなる男性が存在する。
先ずは、父親。
これは遺伝的に作用して居る様に思う。
先生。
これも立場上、上であるからと分析する。
先輩の男子生徒。
これも強くは無いが抵抗力が削がれるのは、立場上上なのだろう。
同級生に関しては特に抵抗を感じない。
つまり、自分にとって目上の男性には逆らえないと言う自然の摂理が存在する様だ。
面倒だが、それを上手くスキルを使いつつやっていくしか無い。
あと、面識の無い男性に関しては何も感じない。
それが年上であってもだ。

午前の授業が終わり昼休みになった。
正直この学校で私に対するイジメや関係性で何かしらの揉め事があったか否かは記憶がハッキリしない。
だが、しかし!
女神が温情で与えてくれた危険予知スキルがある。
ゾワっとした時は要注意。
それだけは助かる。
昼ご飯は食堂で食べる。
朝の一件以来、クラスの女子は私にベッタリだ。
強い女は同性からモテる。
そう言う事らしい。

「詩織ちゃん。
何食べる?」

「そうね。
チキンカレーにしようかな。」

「わかった。
私取ってくるから座ってて。」
と言い、クラスの女子の一人中津秋菜が走って取りに行ってくれた。

待てよ。
これはもしかするとクラスの女子は私の舎弟に出来るんじゃないか?
いやいや。
それはダメだ。
女子は私の良き理解者。
ここは良い所を見せて心からの支配を…。

「あ、秋菜ちゃん。
良いよ。
一緒に並ぼう。」
私は秋菜を追いかけて肩を叩いて話しかけた。
そして、2人でと言うより、みんなで並んで楽しく会話をしつつ食事を受け取った。

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