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第14話 3人目のデート3日目

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慎吾くんと今日はデートの約束をしている。
約束では、カラオケに行きたいらしい。
目的のカラオケ店で待ち合わせする事にした。
カラオケなので、どんな服が良いのか迷っている。
迷いに迷ってルーズシルエットのシャツに膝丈のデニムスカート、お気に入りのスニーカーをチョイスした。

カラオケ店に入ると慎吾くんはまだ来ていなかった。
暫くスマホを見つつしていると。

「ごめん、遅くなった!」

慌てて慎吾くんが店に入ってきた。

「ふふふ、大丈夫?」

「ごめんごめん!
家を出る時にウチの母ちゃんが棚を動かすのを手伝ってくれって頼まれて。
ゴタゴタしてたら遅くなっちまった。」
息を切らせている。
余程慌てて走ってきたのだろう。

「良いよ。
そんなに待ってないし。
お手伝いご苦労様でした。」

「良かった~、かなり待たせたかと思ったから慌てたよ。」

一生懸命間に合わそうと頑張ってくれたんだ。
ちょっと可愛いと思ってしまった。

カラオケ店のカウンターで部屋を選んで早速部屋に入ると飲み物を注文した。
カラオケ代は2人で割り勘にした。

「さあ、歌おうぜ!」

「うん。」

「そう言えば聞いたぜ。
オーディション受けるんだって?」

「そんなの。
来週なんだけどね。」

「そうか~。
応援してるぜ。」
何とも気持ちのいい雰囲気を持った男の子だ。

「ありがとう。」
それから入れ替わり曲を入れて歌いまくった。
来週のオーディションに向けて練習も出来てとても良かった。

一通り1時間ほど歌って休憩を入れた。
その間に食べ物と飲み物の補充をした。

「楢崎さ、ほんと歌うまいよな。
凄いよ。」

「ありがとう。
慎吾くんも上手よ。」

「いや~、俺はそうでも無いよ。」
ピザやポテトを食べながら、パスタも注文して食べたのでお腹も一杯になってきた。

「あのさ、楢崎に謝ろうと思ってる事があってさ。
入学した頃に虐められてただろう。
俺さ、富谷、長谷川とかと仲良くてさ。
彼奴を止められなかった事を後悔してて。
ビーチバレーの時、楢崎は本当に明るくなって別人のようになったけど、傷ついているだろうなぁ~って思うと心が苦しくてさ。
謝って許される事では無いけど。
2人に代わって謝りたい。」
ずっと気にしていたのだろう。
深々と頭を下げてくれている。

「良いよ。
富谷くんと長谷川くんにも謝ってもらったし。
今では2人ともちょっと仲良く話せてるし。
慎吾くんも気にしないで。」

「わかった。
あの2人も謝ったんだな。
良かった~、楢崎が心に深い傷を負ってたらどんな風に責任を取れば良いのかわからなくて。」

「大袈裟よ。
私は自分で解決したから。
気にしないで。
それより、今日は歌いましょ。」

その後も1時間歌い続けて、合計3時間歌い込んだ。
カラオケ店を出ると。

「あのさ。
スポーツセンターマトヤリに行かないか?」

「うん。
良いよ。」
スポーツセンターマトヤリとは複合のスポーツが楽しめる施設で若者に人気のスポットだ。

駅から地下鉄で移動して、その間も慎吾くんは友達の事や家族の事を話したり、私の話をいろいろ聞いてくれた。

「さあ、次はスポーツを楽しもうぜ。」

「うん。」
この施設はスポーツウェアーをレンタルできる。
私はスカートなので、ウェアーをレンタルした。
慎吾くんもレンタルした様で、2人ともレンタルのスポーツウェアーを身につけた。

「楢崎はスポーツ苦手だろう?」

「え?
そんな事ないよ。
球技が苦手なだけよ。」

「じゃあ、バランスゲームとか身体を使った奴なら大丈夫か?」

「そうだね。
良いよ!」

施設にあるアトラクションはアスレチックやバランスゲーム、アーチェリー、ボーリング、的当て、バスケやサッカーのストラックアウトなどもある。
一通り得意とか苦手とか関係なくチャレンジした。

「あ~、身体動かすのは楽しいね。」

「そうだろう。」
流石にバスケは慎吾くんの得意分野だけあってゴールポストに面白いほど入る。
見ていてカッコいいと思った。

「流石だね。
カッコいいよ。」

「楢崎も練習したら入るよ。」
という事で、慎吾くんの手解きを受けてチャレンジしてみる。

ボールの持ち方や腕の使い方、腰や足の使い方まで丁寧に指導された。

教えられた通りにボールを投げた。
「きゃぁ!」
ボールがゴールポストの枠に当たり凄い勢いで私に向かって飛んできた。
それを察知して慎吾くんがボールを掴んでくれたが、びっくりして恥ずかしい声を上げてしまった。

「ごめん。
ありがとう。」
恥ずかしい~、変なところにボールは当てるし、飛んできて変な声を出すし。

「力を抜いてフワッと上げるイメージで投げてみて。」

「フワッとね。」
肩の力を抜いてフワッとボールを飛ばすと見事にゴールポストに吸い込まれた。

「やった~!」

「凄いじゃないか!」
2人で入った瞬間ハイタッチを交わした。

それからも苦手な球技を織り交ぜて楽しく過ごした。
慎吾くんは気さくに笑う人で笑顔が可愛い。
イケメンという部類の人ではないが、屈託のない笑顔が印象的だ。
兎に角何をやらしてもそつなく上手にこなす。
私とは運動神経の出来が違う様だ。

「あ~、遊んだね。
楽しかった~。」

「楽しかったな。」
時間になり2人とも更衣室に入って、シャワールームがあるので汗を流して着替えた。
髪をドライヤーで乾かすと外に出たら、慎吾くんが既に待っていた。

「ごめん、遅くなっちゃった。」

「良いよ。
飯でも食べようぜ。」

この施設には飲食店もテナントとして入っている。
私の希望でラーメン屋に入った。

「今日は誘ってくれてありがとう。」

「俺こそ、付き合ってくれてありがとうな。」

「楽しかった~。」

「それは良かったよ。
誘った甲斐がある。」

「身体を動かすのは良いね。」

「そうだな。
スッキリするよな。」

「運動神経の無さは改めて自覚したけど、こういうのはありだなぁ~。」

「楢崎は運動神経は無いよな!
でも、女の子はそれ位が可愛いよ。」
テーブルに注文したラーメンが運ばれて来た。

「何よそれ~、私だって頑張ればボールくらい操れる様になるんだから。」

「そうだな。
いつかはそうなるよ。」

「あ~、馬鹿にしたなぁ~。」

ラーメンを食べながら慎吾くんは私の話をいろいろ聞いていた。
自分の話もしていたが、どちらかというと聞き上手な人だ。
私の話に頷いて、たまに笑顔あり、私を笑顔にしてくれる。

慎吾くんは家の近くまで送ってくれた。
こうして3人の男子達とのデートは終わった。
楽しい3日間を過ごす事ができた。

直接的に告白されたのは真斗くんだけで堀越くんも私の事を想ってくれているのを話してくれた。
慎吾くんはどちらかと言うと友達感覚に近いかも。

家に帰って部屋に入ってのんびりしていると、スマホに電話がかかって来た。
電話の主は、真斗くんだ。

「はい。
どうしたの?」

「ああ、今日慎吾と出かけたの?」

「うん。
カラオケ行って、マトヤリにも行ったよ。」

「そうなんだ。
ちょっと外に出てこないか?」

真斗くんは私の家の近くのコンビニに来ているらしく。
着替えてもいなかったので、そのままコンビニに行く事にした。

コンビニの前で真斗くんは立って待っていた。

「お待たせ。」

「来てくれてありがとう。」

「うん。
良いよ。
別に何もして無かったし。」

「これ。」
手に持っていた袋から真斗くんはアイスを手渡してくれた。

「え?
良いの?」

「ああ、暑いし。
アイスが良いかなぁって思って、さっき買ったんだ。」
照れ臭そうにアイスを差し出す姿は可愛いと感じられる仕草だった。

近くに公園があるのでそこまで移動した。

ベンチに座ってアイスを頬張る。

「急に電話が来てびっくりしたよ。」

「ちょっと話がしたと思ったから。」

「そうなんだ。」
アイスはバニラアイス。
まあ無難な物をチョイスしたな。
真斗くんはチョコアイス。
2人並んで夜のベンチで棒アイスを齧っている。

「サッカー部の奴に聞いたよ。
来週オーディション受けるんだって?」

「うん。
そうなの。
応援してよ。」

「ああ、するさ。
受かるよ。
楢崎は可愛いしな。」

「歌のオーディションなのよ。
可愛さは重視されるかな?」
優しく真斗くんは微笑んでいる。
私もそんな真斗くんの笑顔に釣られて笑って見せる。

暫くたわいも無い話をして笑ったりしながら時間だけが過ぎる。

「あ~、もう帰らないと。
お父さんが門限煩いから。」

「そうなんだ。
大丈夫か?」

「うん。
大丈夫。」
立ち上がると名残惜しそうに真斗くんは私を見つめている。

「じゃあね。」
手を振って歩き始めた。
その際も笑顔を見せて手を振って見せた。

真斗くんも手を振っていて、それを見つつ背を向けて歩き始めた時、私は背中から誰かに抱きしめられた。
背の高いその人は真斗くんだった。

「楢崎。
好きだ。」

あ~、ちょっと困ったぞ。
どうするべきなんだろう。
こんな時は。
私の返答次第で状況は大きく変化する。

「真斗くん。
ありがとう。
でも、今すぐに真斗くんの気持ちには応えられないよ。」

「ごめん。」
私は背中から真斗くんの腕に身体を包まれている。

暫くその状態が続いて、真斗くんは冷静に落ち着く事が出来て私を家の近くまで送ってくれた。
凄く嬉しいのだが、私の気持ちがそこまで盛り上がっていない。
何れそう言う事が受け入れられる時が来るのかもしれないが、今では無い気がする。
真斗くんは手を振って笑顔で帰っていった。
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