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第一部 地球編

5 コンプレックス (レッドマジシャン目線)

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「違うまだ殺そうと動いていなかった。あなた人の脳に侵入できる能力ね」

 私の言葉を聞いて姉弟が笑った

「厄介な能力だな、弟さんはどんな能力かな?『解』」

 トリックスターはそう言うと花鳥月露かちょうげつろを取り出した

「やめとけ姉さんには勝てないぞ」

 トリックスターがなぜか武器を地面に落とした

「どうしたの?」

 姉弟の姉の方が私を見ている。姉と目が合ってしまった。体が金縛りにあったかのように動かなくなった

「一人だけ洗脳するんだったら、操れるけど。三人一気に能力を使うとなると動きを止めるので精一杯。さぁ最後は僕よ」

 姉がビーストソウルの方を見る

「支配してみろよ」

 次の瞬間、悶絶する声が聞こえた

「頭、頭が割れる。何なのこの感情、痛い!痛い!」

「姉さん大丈夫?能力解いて先逃げて。僕が足止めして追いかけるから」

 そう言うのが聞こえたと思ったら、体が動けるようになった。姉が走っている後ろ姿が見え、目の前には弟しかいない

「ごめんなさい、ビーストソウル。助かったわ」

「同じく」

「やっぱり、俺がリーダーの方がいいんじゃない?」

「作戦会議は終わったか?」
 
 弟がそう言ったら、私達三人の体から黒いモヤのようなものが出始めた。モヤは数秒後、それぞれの目の前で本人そっくりの姿となった。弟はモヤが出たとわかると、姉と同じ方向に走って逃げた

「待ちなさい!」
 
 弟の後を追おうとしたが、私は私の影のような者に蹴り飛ばされた

「オ・・マエハ・・・ヨ・ワイ」

 お前は弱い。そう言った?

「残念ね。私強いわよ。『トリックスターの能力』」

 私は一番よく使う武器紅陽こうようを取り出して影に斬りかかった。そうしたら影も同じ武器を取り出して応戦してきた。そこから激しい剣術の戦いになった

「私の剣術見切れるんだ。さすが私」

「オ・マエハ・・・ヨワ・・イ」

 他の二人を見ると二人とも影と戦っていた。トリックスターは瞬間移動バトルを繰り広げ、ビーストソウルはお互いの体に噛みついたり、引っ掻いたりしていた

「『トリックスターの能力』」

 私は武器をしまって、体術勝負にしようと思った。相手に触れればカーナさんの能力を使おう。影は武器をしまわず、私に突いてきた。私は横腹を刺されたが影に触れた

「『カーナの能力』」

 影にカーナさんの覚醒前の能力を使い相手を即死させようとしたが、効かなかった

「まぁ効かないわよね。肉体無さそうだもんね。ていうか私!普通に痛いんだけど!」

 横腹を再生した。このままじゃあの二人に逃げられる。ふとトリックスターの方を見た

「レッ・・ト・・・ウセ・イ」

 劣等生。そう影は言ってる?

「あーもう劣等生、劣等生うるさいよ。そうだよ劣等生だよ。いつも二人には勝てない、自分の才能に自信が無い。二人の背中しか見ることのできない劣等生。僕のコンプレックスだ。けどな、いつか二人の横に並べるように努力して見せるよ!その時まで僕の中で一緒に頑張ってくれないか?」

 トリックスターがそう言うと、影がトリックスターの中に戻っていった

「ビーストソウル!今の見てた?」

「あぁ。俺たちもそうしよう」

「トリックスター追って!」

 姉弟の行った方にトリックスターが走っていった

「オマ・・エハ・ヨ・ワ・・イ」

「そうね私は完璧じゃない。ビジョンで二人の死体が私の目の前に出てきてから」

「は?何て?」

「二人を見るのは辛くなる。強くなって未来を変えたい。もっと二人を守れるまで強くなってみせる。だから、一緒に強くなってください」

 私の影が体に吸収された

「最後はあなたよ」

「二人の死体について詳しく聞くからな」

「言うと思った。さぁやって」

「なぁ影よ。さっきから、お前は誰だと言っているが、俺自身もわからない。能力を使えば使うほど、自我を失っている。いずれ自分自身が分からなくなりそうだ。もっと強い精神を持って、必ず克服してみせるからさ」

 ビーストソウルの影も消えていった

「後でじっくり話がある」

「分かってるわ。トリックスターには私のビジョンの件話さないで。二人で話しましょ」

「俺の件は二人に聞いてほしい」

「分かってる。さぁ、追いましょ。コンピューター!トリックスターに連絡」

「トリックスターに繋ぎました」

「トリックスター。二人は?」

「俺の前方に見える。もうすぐブラスターの射程距離」

「ビーストソウル、トリックスターの匂いを追って飛んで!」

「もう、そうしてる」

「二人ともお願いね」

 1分後連絡が来た

「二人ともブラスターで殺したよ」

「最後はこちらに気づかず背中を撃たれて死んだよ。再生しようとしてたけど、連射して殺した。採血はしてきたよ」

「お疲れ。戻りましょか」



 ミラノ支部に帰ってきた。私達は向かい合って座ってる

「トリックスター。ビーストソウルから話したいことがあるって」

「俺の能力は動物への変身能力だけど、変身するたび自我を失っていくような気がするんだ。今はまだ精神力で何とかしてるけど、数年後には自我を完全に失うかもしれない。もし俺が自我を失って暴走したら二人が僕を殺してくれ」
 
「僕と俺。一人称が混合してるぞ。ていうか殺したりはしないさ」

「私達があなたを正気に戻してあげる」 

「まぁ。一つの案として頭にいれといてくれ」

「トリックスター。本部に戻ってマスターウェザーに報告してくれる?」

「了解。『チェンジ』」

 トリックスターが消え、トリックスターがいた場所にボールが現れた

「さてと。私のビジョンの話だけど、最初は一週間後くらいの未来を見ただけだったんだ」

「そうだよな。そんな何年後かも分からない未来を見たやつはいないだろ」

「ビジョンを見てたら断片的だけど、あなたがトリックスターと私の目の前で死んでいて。トリックスターは私の膝の上で死んでいるのが見えたの」

「だからあの日、僕らを叩き起こして、僕らに泣きながら抱きついたのか」

「えぇ。家族を失うと思ったから。ていうかあなた、暴走したら殺して。って何?私のビジョン通りになっちゃうかもしれないじゃない!」

「両方とも悲しい運命かもな」



 数日後、ビーストソウルと共に本部に帰ってきた。本部に着いたらトリックスターが待っていた

「お疲れ。いや~俺の能力で人を連れていけると便利なんだけどな。誰かに触られてると空間移動できないなんて悪いな」

「ずるい能力だな」

「ホントよ。自分だけ楽して移動できるなんて」

「頼まれていたマスターウェザーへの報告はしといたよ」

「なんか言ってた?」

「ビーストソウルを心配してたけど、それ以上に君のことを気にしてたよ」

 何で私?見透かされてた?

「へーそう」

「あと、サンストーンが昨日から任務行ってるけど、ビーストソウルに謝っといてほしいって」

「は?何で?」

「伝言はコンピューターに残しといたって」

 そんな話をしてると、後ろから人の気配を感じて振り向いた。振り向くとそこにスノーメロディーがいた

「三人とも初任務お疲れさま。イタリア土産なんか買ってきてくれた?」

「いや~」

 その言葉を聞いてスノーメロディーが笑う

「冗談よ。それより誰か私と技の稽古しない?できれば全員来てほしいんだけど」

「私はいいけど」

 二人の方を見る。トリックスターが頷く

「いや、俺は眠いからパスで」

「私があなたをボコって目覚めさせてあげようか?」

「分かったよ、行きます。行きますよ」



 訓練場Ⅴで稽古することになった。スノーメロディーは目を輝かせて話してる

「稽古というよりはどちらかというと技の伝授なんだけど。能力による身体能力の上昇は訓練で教わったでしょ。あれと同じ原理の応用技なんだけど、力を一点に集めて相手を突く技なんだ。オールロードと私で考案した技」

「威力はどれくらい?」

「能力をどれくらいのせるかによるけど、人の腹に風穴は空けることはできるよ」

「スゲ~」

「技名は一人では『fフォルテ』」

「一人では?」



 「劣等感は、自分以外の誰にも作り出すことはできない」

 エレノア・ルーズベルト  
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