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第一部 地球編

10 結成〈CA〉

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 A.C.T アクトに最大の試練が訪れた。殺るべき相手は元同僚。お互いの手の内は知っている。今は、信念無き者は真っ先に死ぬ



 遡ること数週間前。A.C.T アクト内で組織に残る者と出ていく者に分かれるという、内部分裂が起こってから数日たった。国連が行った会見により、世界各国で能力者は隔離するべきだとか、殺すべきだとかのデモが起こっていた。マスターウェザーは上の組織に、組織を辞めた者は何も言わずに出ていったと言い。監督責任や能力者が野放しになっていることを咎められた。残った者は24時間監視されて、兵士隊が何人か側で見張ることになった。どこにいてもついてくる兵士隊は、最初に

「この前のG7では戦士隊に助けてもらって、感謝してるし、これからは仲良くしていきたいが、任務なので許してくれ。だが俺達が見張るのはあくまで建前だ、俺らは君らを見失う事があり、所在が分からなくなるときがある」

 とウィンクして言ってきた。内心みんな嬉しかった。数日後、レッドマジシャンはスノーメロディーから任務を代わってほしいと言われた

「レッドマジシャン。悪いんだけど、ウィーンに行かないといけなくて、国連本部の警護に行ってくれない?」

「別にいいけど。ウィーンって音楽鑑賞に?」

 スノーメロディーは何も言わずニッコリ笑って、去っていった



 レッドマジシャンは警護の任務に、サンストーンを連れていった。何でサンストーンが連れていかれたかというと、暇なときは斬り合う事ができると考えたからだ。レッドマジシャンとサンストーンは組織内でも仲が良い。歳こそ離れてるが、同じ日本人で、戦闘好きの共通点(サンストーンは何を思って戦闘が好きなのか知らないが、レッドマジシャンは自分が最強になれば皆を守れると考えていたので、己を高めたかった)と、例え悪人だろうと異星人であろうと生命の命を奪う事が嫌いな所等、とても似ている所が多かったからだ。レッドマジシャンがサンストーンを誘ったとき

「私が国連嫌ってることを知っていて、誘ってるのか?」

「そうなんだけど。組み手やってほしいからさ」 

「私の記憶が正しければ、前に私達がやったとき、本部が壊れるからと、ウェザーが止めに入って怒られたよな?」

「二人とも罰として、無人島に1ヶ月島流しにされたわね」

「無人島で、お前はいいよないろんな能力使えて。俺なんか能力使う度に、辺りを灰にするだけだからな」

「で来てくれるの?」

 サンストーンが頷いた



 レッドマジシャン達がニューヨークに渡って二週間がたった。その頃、マスターウェザーに、ある通知がきた。どうやら世界各国の国家や防衛機関に宣戦布告してきた常識知らずの馬鹿がいるらしい。そう思ってマスターウェザーは宣戦布告の内容を見たので驚いた

「前略。世界を動かしてると思い込んでいる者達。私達は秘密裏の組織・・・失礼しました。昔は秘密裏だったA.C.T アクトの戦士だった者達です。A.C.T アクトを脱隊してから、私達は悩みました。何でこんな事になったのか?誰のせいか?と。そして話し合った結果、世界のトップに君臨する者達のせいだという結論が出ました。命を張って、誰かの為に戦ったことの無い者達が、人を駒のようにこき使う。そして自分達の不利益な事は切り捨てる。私達は尽くしてきた者達と守ってきた者達から裏切られた。私達の方が上手く世界を治められる。強き者こそ世界のトップに立つべきだ。私達からの逆襲の意を込めて、『CA』を結成し、ここに宣戦布告する。」

 この内容を読んだ、マスターウェザーは、薄笑いして

「まずいな」

 と一言。まるで何かを楽しんでるような、期待してるような表情だった



 レッドマジシャンとサンストーンの所に、CAの連絡が入ったのはすぐのことだった
 
「話した通り二人とも、国連本部は間違いなく狙われる。厳重に注意してくれ」

 マスターウェザーから通信でそう言われた

「何人で襲撃されるのか分からないのに、厳重に注意か。間違いなく死ぬな」

「サンストーン。同じこと考えてたわ」

「俺が死んだら、二本の愛刀はお前が使っていいぞ」

「面白い冗談ね。こっちの戦法や弱点全て把握されてるのだから、あなたが死んだら私も死ぬことになるのよ」

「戦闘スタイル変えないとな」

「私は、フォームを無限に持ってるから」

「私は、刀と能力を組み合わせた防御力は低いが攻めに強いフォームを得意としてるが。私は君の戦闘スタイル一つしか知らないぞ」

「戦う相手によって変えてるのよ。あなたは、型が教科書通りのような見事な戦闘だけど、綺麗すぎるのよ。だから私は、体操選手やダンサー等の動きを組み合わせた、アクロバティックな動きであなたを翻弄させた戦いをしてるわ」

「他のフォームは?」

「例えば相手の動きが速いと、防御を優先とし、相手に隙ができるまで耐え忍び、正確なカウンター攻撃をしたり。あとは、どんな武器を持ってるかや、持ち方で相手に有効な攻撃をしてるわ」

「君は地球の集大成だな」



 マスターウェザーから報告のあった次の日、いつも通り警護にあたっていると、ビーストソウルとスノーメロディーが現れた

「メロディー、用事は終わったの?」

「えぇ。隊長から、警護の応援に行ってくれと言われたから、任務サボって寝てたビーストソウル連れて来たわ」

「トリックスターは?」

「彼はEU本部の警護に行ってる」



 次の日の昼だった、奴らが襲撃したのは。タイミングが分かっていたかのように。いつも通り、レッドマジシャンが表を巡回しているとガントン、テュール、バルドル、オールロードが目の前に現れた

「みんな来たわ!」

 通信で急いでそう言った

「やぁ、レッドマジシャン。まだこんな組織にいたのか?君は俺たちと一緒に世界の頂点に立つべき人間だろ。一緒に来ないか?」

「ガントン。いつからあなたはキャビンアテンダントに転職したの?頑張って航空業界のトップ目指してね」

「CAはカウンターアタックの略だ!」

「あら?A.C.T アクト辞めた割には、A.C.T アクトでのコスチュームを着てるじゃない?」

 ガントンは左目に対象との距離を測るスコープを着けていて。テュールは漆黒の特殊なローブ、バルドルは口元を白色のマスクで隠しており、オールロードはA.C.T アクトの隊服だった。そして、どのコスチュームにもA.C.T アクトのエンブレムが描かれてあった

「アルレットが作ったコスチュームはとても良くできていてな。使わないともったいないだろ?」

 そんな事をレッドマジシャン達が喋ってると、鳥の鳴き声と共に鷹が上から急降下してきて、地面衝突前にビーストソウルに変わった

「まだ戦い始まってないよね?」

「おぉビーストソウル。お前会議の時は寝てたからな、一緒に来ないか?」

「やだね。A.C.T アクトのベッド気にってんだ。お前らあのベッドの眠り心地を考えずに出てったのか?」

 話がずれてる。サンストーンとスノーメロディーもすぐに来た。A.C.T アクトとCAの四人ずつが対峙した

「何の話だっけ」

「コスチュームとベッドがどうたらこうたら・・・」

 コスチュームとベッド?サンストーンとスノーメロディーは自分のコスチュームを触る。サンストーンは袴を、スノーメロディーは首に巻いた白のマフラーを触りながら、白のPコート、スカート、ブーツをじろじろ見てた。訳が分からないで二人は、結局

「どういうこと?」

「メロディー。気にしなくて大丈夫だ。それより四人ともここを通してくれないか?」

「悪いがそうはいかない。力は己の為に使うのではなく人の為に使う。マスターにそう教わったろ!」

「人の為に力を使うのはいいが、こっちだって対等のものがないと」

「オールロード。戻ってきてよ」

 スノーメロディーが目から涙が溢れそうになりながら言った

「どいてくれ!頼む」

 スノーメロディーが首を横に振る

「決裂だな」

 ガントンがそういうと、テュールは体が少しでかくなり、オールロードはブラスターを抜いた。それに応えるように

「『トリックスターの能力』」

 レッドマジシャンは細い剣を二本取り出し、逆手持ちで構えた。サンストーンも帝釈天を腰から抜いて構えた

「サンストーン?阿修羅王はどうした?リストラか?」

「んなわけないだろ!『ラーの憤怒』」

 サンストーンが燃える

「俺はガントン、レッドマジシャンはテュール、ビーストソウルはオールロード、スノーメロディーはバルドルを相手しろ。できるなら殺すなよ」

「私、オールロードでもいい?」

「大丈夫なのか?」

「えぇ」

「勝てると思ってるのか?」

 八人が真剣な顔になった。空気が重い、気迫が凄い

「勝負!」
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