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第一部 地球編

28 分岐点

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「よし!彼女一人でいる。今なら行けるぞ」

 食堂で一人で食事してるスノーメロディーを見てビーストソウルがトリックスターに言った

「なんて声かければいい?」

「何でもいい。一緒に食べてもいい?とか。ただし、怒らせることは言うなよ」

「怒らせるような事言わなくても、僕は元々嫌われてる」

 トリックスターが深呼吸して、料理の乗ったトレーを持って近づいた。食堂はG7事件の国連会見のあと、兵士隊の人数が少なくなったので、席が少し空いている

「やぁメロディー。ここ座っても」

 満面の笑みで喋りかけてきたトリックスターを睨んでから、手でどうぞとスノーメロディーはした

「ありがとう」

 トリックスターが座った瞬間に、スノーメロディーはトレーを持って立ち上がり、離れた席に座った。その光景をビーストソウルは遠くで頭を抱えながら見てたら、後ろから声をかけられた

「ビーストソウル?何してるの?」

「やぁレッドマジシャン。トリックスターがスノーメロディーをお食事デートに誘ったけど、見事に振られたね」

「何であの二人って仲が悪いんだっけ?オールロードの事抜きで」

「根本的な原因は分からないけど、僕が思うに二人とも似ているんだよ」

「似ている?だったら仲良く」

「逆だよ。似すぎていて、噛み合わないんだよ」

「なるほど。パズルに例えると一人一人違った凹凸があり、それが上手くはまると仲良くなれるけど、同じ形ははまらないのね」

「そうだ。本当はこの世でお互いを一番理解し合える存在なんだけどね」

「そこに。オールロードの件が入ってしまったのか・・・。彼は私が、彼女はあなたが話を聞いてあげて、そしてそろそろ仲良くしてもらわないと。こっちが疲れる」



 レッドマジシャンがトリックスターの座ってる席に腰かけた

「トレーの上が生ワサビと鮫皮おろしって食事する気ないじゃない」

「食うか?」

「いいえ。あなたが心配で来たのよ。ソーンさんのカウンセリング通ってるんでしょ?」

「ソーンさんがカウンセラーって違和感があるが、もう精神がおかしくなりそうでね。プロにアドバイスもらわないと」

「そうね。悩み事は友達や家族よりプロに相談した方がいいから。結局、友達や親に相談したところで、素人だから、いい対処ができなくて余計に苦しめるだけ。ところでスノーメロディーとはどうなの?」

「オールロードの事は口ではあなたに責任は無いと言ってくれてるが・・・。どう接していいか距離感が分からん」

「まだ心が追いついてないのね。私達も受け入れることが難しいのに」

「ねぇ!話があるんだ」

「奇遇ね。私もあったのよ」



 ビーストソウルがスノーメロディーに話しかけた

「ねぇ!座ってもいい?」

 スノーメロディーは嬉しそうに頷いた。ビーストソウルが腰をかける

「白髪馴染んできたろ?」

「髪の毛の事はごめんなさい。それ以外のことも・・・」

「いいや。君の苦しみの方が辛いだろ?」

「あのさ!私、この組織から一旦距離を置こうかなと思ってるんだけど」

「どうして?」

「もうここには居られない気がして。マスターは承諾してくれた。一緒に来ない?」

 ビーストソウルの頭に薬の事が過る

「えっ!駆け落ちするってこと?予定空いてるかな?・・・真剣に答えると、少し考える時間が欲しい」



 CAの連中が隊長室に集まっていた

「マスター。CAはもうこの組織には残れません。世話をかけることもできません」

 ガントンが代表して話してる。A.C.T アクトとCAの戦いにより、隠蔽班改め修繕班の人達にはものすごい迷惑をかけていた

「上は君らを消せと言ってきました。野放しにするのは危険だと」

「それは彼らにとってはそうでしょう。だが、勝負には負けたし、もうこの組織と揉めたくはありませんよ。だからもう、襲撃することなんかありません。この世が彼らのせいで朽ちていかない限り」
 
「そうさせないようにA.C.T アクトがあります」

A.C.T アクトが怠けると俺らが出てくることになるかもしれませんから」

「そんな日が来たら、是非とも君達の手で、この組織を滅ぼしてください。私達はそれを受け入れますから」

「これからも自警団としてCAはそれぞれ活動していこうかと考えてます。正義のヒーローがA.C.T アクトなら、影のヒーローとして」

「正義を履き違えることがないよう」

「何が正義かは分かりませんが、あなたから学んだことを実行していきます」

「そうですか。成長しましたね。ここに来た頃とは大違いです。離れていようが、みんな私の可愛い子供たちなのを忘れないでください」

「いろいろ迷惑かけました。これから各々が世界中に散って護っていきたいと思います」

「愛と幸運が全員にあるよう」

「あなたにも」




「えっ!旅に出るの?」

 ビーストソウルが大きな声を出した。それを目の前でうるさそうにレッドマジシャンとトリックスターが聞いてる

「そう言ってるじゃない!」

「横に同じく」

「一緒に?」

「僕は一緒にって誘ったけど、彼女はテュールと隠居生活を送りながら、自分と向き合いたいんだって。それに冤罪の事で組織に不信感しかなくなったって」

「マスターウェザーは許したの?」

「エイリアンの事件も最近起きないし良いって」

「この組織に対する事も、世界に対する不信感も、みんなそれぞれあるだろ?」

「そうね。みんなと居れば救い合えるかもしれない。けどその拠り所が、私を強くする一方、弱くしてるんだと思う。だから、確認してきたいの。あなた達といる方が私は強いって」

「まじか。君らも消えて、メロディーも居なくなるのはキツいな」

「あいつがどうして居なくなるの?」

「彼女も旅に出るそうだ。ここの組織に愛想でも尽きたんじゃない?それより、みんな居なくなると誰と馬鹿やってればいいんだよ!」

「あなたには愛しのサンストーンがいるじゃない?」

 ビーストソウルは目を見開いた。訓練生の時から、少しトラウマがあるらしい

「でもカーナさんの邪魔はしないでよ。地球一の鈍感と奥手の二人なんだから」

「サンストーンの話はどうでもいいけど、二人は何処へ?」

「決まってないわ」

「同じく。けど帰ってきた頃には君らより強くなって帰ってくるから」

「いつ旅立つの?」

「明日」

 二人同時に答えた。その日の夜はビーストソウルの部屋で壁にもたれ掛かって、三人で眠った。昔、電車で寝ていたように。ビーストソウルは寝ている時に暴走するのが怖くて眠れていなかったが、この日はぐっすりと眠れた。二人の側にいるのを安心したかのように


 
 トリックスターが朝早く目を覚ますと、レッドマジシャンは消えていた。ビーストソウルは爆睡してる。起こさないように立ち上がると、タンクの部屋を訪れた

「トリックスター。もう旅立つのか?」

「えぇ。世界中を旅をしながら手帳の謎でも解いてきますよ。もちろん宇宙船も探しながら。あなたは?」

「ガントンが旅立つ前に暗号を教えてくれてな。今度はサンストーンに詰め寄るつもりだ」

「師匠が教えたんだ・・・」

「気になるか?」

「はい。けど知るのは帰ってからでいいや。今、聞いてしまうと残りたくなってしまうから」

「そうか。地球は任せておけよ。俺達がシドニーで逃がしたエイリアンも始末しとく」

「あれは僕の獲物だ。因縁がある」



 トリックスターはタンクの部屋を出て隊長室に向かった。コスチュームと通信機は持っていく事と、別れの挨拶をするために。その後潜水艇乗り場に向かったトリックスターは、潜水艇の所でスノーメロディーと出会った

「出ていくのか?」

「あなたもでしょ?」

 トリックスターは手ぶらなのに対して、スノーメロディーは結構な荷物の上に、楽器を何個か持っていた

「それ持っていくのか?」

「お金に困ったら演奏でもして稼ごうと思って」

「金には僕ら、困らないだろ?」

 A.C.T アクトは給料が出る。全員一生遊んで暮らしたところでお釣りがくるほどの財産を世界中の銀行に入れてあった。ただ全員金持ちになったところで、死んでることになってる上に、金では買えない価値のあることに時間を費やしてるため、消費をせずに貯まっていく日々の人が多い

「毎日、三ツ星ホテルのスイートルームに泊まれるほどね」

「荷物多すぎない?」

「あなたが私の荷物をストックする代わりに、一緒に行かない?ビーストソウルには断られたし」

 スノーメロディーはトリックスターへの嫌がらせで言ったが

「それも、いいかもしれない」

 スノーメロディーには予想外の答えが返ってきた

「じゃあ部屋にある楽器。もう少し持っていこうかな?」

「あぁ」

「一緒に行くんだったら、何か演奏できるようにしてもらうからね」

「分かった」

 トリックスターに、やっぱり一緒に行きたくない。と思わせたかったが、真逆の反応をトリックスターはした。トリックスターはこの時、何を考えていたかというと。スノーメロディーの指にカーナさんがしてた指輪がしてあった為、話を聞きたいと思ってた。その後、本当に楽器を数個取りに戻り、また潜水艇乗り場に行くとビーストソウルがいた

「別れの挨拶は無しか?トリックスター」

「眠ってるのを起こしたくなかったんだよ」

「レッドマジシャンはどうした?」

「僕らが寝ている間に行っちゃた」

「そうか・・・。本当は行かないで欲しい」
 
「僕も離れたくない」

 二人が近づいていきハグをした

「近況報告の連絡は寄越せよ」

「暇ならな。お前が俺達無しでどこまで馬鹿やれるか、楽しみだよ」

 二人が離れる。そしてビーストソウルはスノーメロディーに近づいた

「こいつは悪いやつではないから。二人とも互いと自分を受け入れられたら、一番仲良くなれるさ」

「一番仲良くは無理よ」

「どうして?」

「あなたを越えることは無いもの」

 そう言ったスノーメロディーはビーストソウルの頬にキスをした

「じゃあね」

 二人が揃って言って、潜水艇に乗り込んだ。そして、二人の地獄の旅が始まった
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