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第一部 地球編

34 宇宙船

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「『ラーの憤怒』」 
 
 サンストーンの体が燃え、辺りが明るくなった。地図はあったが、どこに向かえばいいか分からないのを心配してたみんなだったが、レッドマジシャンとビーストソウルの脳内ではどこに向かえばいいか分かっていた

「みんな不必要に扉を開けたり、物に触れたりしないでね」

 宇宙船の廊下を歩きながら、レッドマジシャンがみんなに言った。廊下にはバラバラに粉砕された黒い球体のような物が何個もあった

「レッド。あれがそうか?」

「あなたもそう思った?ビーストソウル」

 黒い球体を見つめながら二人は話してる。それを他の七人が理解できずに聞いていた

「サンストーン。地図を貸して」

 円盤に浮かび上がってるホログラムの地図をレッドマジシャンに手渡した。ホログラムの地図を拡大したり回転させながら、ビーストソウルと話してる

「コントロール室は恐らくここよね?」

「あぁ。だが、ここの部屋は何だ?広すぎる」

「すぐ近くね。覗いてみる?」

 レッドマジシャンとビーストソウルが先頭に立って、歩き始めた。とあるドアの前で止まり、ドアを開こうとするが、びくともしない

「押してもダメ。引いてもダメ。スライドもダメか」

「動力源が無いと動かないんでしょう」

「壊すか。タンクさんお願いします」

「さっき壊せなかったろ?」

「あれは、宇宙船の外の壁でしょ。宇宙空間を移動してきてるのだから、丈夫で当たり前。逆にあそこまで凹ませられる方が凄いと思いますよ」

「そうか。『チャージ』」

 鉄球に破壊エネルギーを込めて、撃った。ドアは大破し、中に入れるようになった

「おい!サンストーン。もっと明るくしろよ」

 中が暗かったので、ビーストソウルがサンストーンに言った

「先輩で、師である人に命令。お前を鍛えて、上手くいかなかったのは、乗り物の操縦技術と人を敬う心だけだ」

「どうでもいいから早くしてくんない?」

 今度はレッドマジシャンがサンストーンに言ってる 

「お前らを救うんじゃなかった」

 サンストーンが渋々中に入り、部屋の中に火の玉を飛ばした。部屋が明るくなると、そこに無数の大きなカプセルがあった。しかも何階建てにもなってあった

「このカプセルは寝床と手帳に書いてあったわ」

「眠り心地いいのかな。A.C.T アクトのベッドより」

 レッドマジシャンとビーストソウルは普通に話してるが、他のメンバーは愕然としてた

「この人数が乗ってきたの?」

「五千はあるんじゃないか?レッドマジシャン、ビーストソウル、どうして普通に話してられるんだよ」 

「そんなに驚く事じゃないわ。A.C.T アクトが設立してから倒して来たエイリアンよりは断然多いけど、設立前にマスターウェザーが一掃作戦があったって言ってたじゃない」

「トリックスター、お前の言う通り五千人乗ってきてるぞ。反対側にドアがある。そこを出るとトンネルのような構造だな。コントロール室に直結してるようだ」

 ビーストソウルが地図を見ながら、ルートを考えてた。ビーストソウルの考えたルート通り、カプセルが置いてある部屋の反対側のドアを開けると、空洞になっていた。空洞内を歩いていると、やがて操作盤が付いた大きな板のような物が何個か床にあった

「これは何?」

「手帳によると、宇宙船内を移動する、乗り物のようね」

 九人が空洞の中をひたすら進んでいく。途中、廊下に落ちていた黒い球体のような物がゴロゴロ落ちていた。やがて地図を見ていたレッドマジシャンが駅のホームのような所で止まった

「ここを上がればコントロール室よ」

 九人がコントロール室に行くと、今は砂しか見えていないが、大きなガラスが正面にあり、ガラスの反対側に恐らく司令官が座るであろう操作盤が付いた椅子があった。その他にもA.C.T アクトの指令室と同様の形で、ガラスと司令官との椅子の間に複数席があった。だが、司令官以外の席には椅子しかなく操作盤やデスクは置かれていなかった

「指輪」

 レッドマジシャンがボソッと一言言うと、トリックスターが手渡した。レッドマジシャンは司令官の席に座ると、指輪を嵌め込める形をした部分に指輪を嵌めた 

「みんな、戦闘態勢取って!」

 ビーストソウルが嵌めた瞬間叫んだ。嵌められた指輪の宝石が強く光だし、宇宙船内が明るくなった。レッドマジシャン以外のみんなは、それぞれの戦闘フォームに構えた。しかし、何も起こらない

「危険なことは何も起きないぞ。ビックリさせんな」

 トリックスターの言葉の後、ガラスの前に若い青年が現れた

「誰だ?」

 サンストーンがそういった。青年は一通りいるメンバーを眺めた後

「マスターウェザーはいませんか。私は、この船の船長だった者です」

 男は英語で喋りだした

「ということはエイリアンだな」

「よし!殺そう!」

 サンストーンとテュールが飛びかかったが、男の体をすり抜けた  

「私は映像です。もう、死んでいます」

 ホログラムにしては、実体にしか見えないほどリアルで鮮明だった

「どうして会話できるの?」
 
 カーナが疑問を投げ掛けた

「記憶ですよ。私達全員、記憶として会話ができるようになっています」

 そう言うと、男の隣に三人のホログラムが浮かび上がった。レッドマジシャン、ビーストソウル、トリックスターが初任務で倒した姉弟と、最近ワシントン記念塔で殺した男だった。三人とも倒された時より、だいぶ若かった

「父さん。姉さん。こうして会うのは何年ぶりだ?」

「父さん?血縁者だったのか。だから、おっさんとどこかで会ったと思ったのか。雰囲気が似てたから」 

 三人は、九人の方を向いた

「地球人の人達?初めまして」 

 姉貴の方がレッドマジシャンの方に近付いた。殺されたというのに平然と

「同い年くらいに見える」

 レッドマジシャンがそう言った

「歳?私は96歳よ」

 そう答えた瞬間。三人が消えた

「もういいでしょう」

 最初に出てきた男が消したらしい
 
「私は、この船で一番権限を持った人物でした。それは今でも。彼女は96歳だと言いましたが、それはこの船に最後に乗ってた時の記憶です」

「だよね。本人と会ったときは、さっきの姿より10歳は老けて見えたもん」 

「マスターウェザーはどこですか?」

「どうして君が知ってるんだ?」

「前に、ここで会いましたから。自分の本体がどうして帰って来ないのかと尋ねると、何があったか教えてくれましたよ。私達が大量虐殺にあったと」

「マスターウェザーが私達をここに導いた」

「死んでしまったのですか?」

「いや。僕達にここの秘密を教えてくれた」

「あなた達は、どうしてこの星に来たの?」

 スノーメロディーが尋ねると、男は彼女の目の前に歩いてきた

「君達は、質問ばかりしますね。マスターウェザーとは違います。あの人は僕にも沢山質問させてくれましたよ。自己紹介ぐらいしてください」 

「悪かったわ。バリオン」

「どうして僕の名前を知ってるのですか」

「マスターウェザーが教えてくれたの。私はレッドマジシャン」

「能力はなんですか?」

「能力?どうして持ってると思うの?」

「マスターウェザーが、地球に能力を使えるようになった者がいると言いました。ここに来るような人達は能力を持ってるはず」

「なるほど。能力はコピー能力。動きを完璧に模倣する。覚醒したら、他者の能力もコピー出来るようになった。ただし、コピーした能力は覚醒前のだけど」

「覚醒?覚醒とは何ですか?マスターウェザーは教えてくれませんでした」

「能力を得てから、ある程度経つと能力が強化されるの」

「私達の種族にはありませんでした」

 バリオンのホログラムと喋ってるレッドマジシャンをビーストソウルが小突いた

「手帳に書かれた通りだな」

「えぇ。バリオンは好奇心が強く、物分かりがいい」

「僕の好奇心は強いですか?」

「あなたの能力は何なの?」

「私の一族は、寿命の前借りをすることで一時的な強さを得られます」

「一族?血統で似たような能力を持てるの?そうか、あの家族はみんなマインド能力。あなた達の星はどんな星なの?」

 そう聞くとホログラムのバリオンは悲しい顔をした

「私達の星は、いずれ滅びます。もう滅びたかもしれません。技術の発展に伴い、人口も増えていきました。やがて食料や資源は無くなってしまい。星として誰も生きられなくなります。なので、私達は地球という星に来て、取引を持ちかけました。地球より進んだ技術を提供するかわりに水や金属等の資源と移住できる土地が欲しいと」

 バリオンは喋ってるが、レッドマジシャンとビーストソウル以外はそれどころじゃなかった。宇宙船内で、何かが動いてるのを感じてたから。それも、数が分からないほど無数に

「この星は、この取引に応じました。ただ、私達の技術がどれくらいかテストすることになりました。そこで武器の技術を少し、提供してあげました。もちろん、急に高度な技術を提供するといけないので。少し、改良したくらいですが」

「もしかして、その時世界大戦中?」

「そうです。世界はさらに高度な技術。武器を求めました。そこで我々は核の技術を改良してみることにしました。すると、世界は喜んだのも束の間、私達の技術が危険だと、虐殺しを始めました」 
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