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第一部 地球編

45 覚悟

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「ハンドジェットが死んだか。クソっ!」

 エドガーが机を叩いた
 
「センス。能力は回復したか?」

「少しですが」

「数を見てくれ」

「了解。味方は残り、三十万人。敵は十万人も残ってません」

「二十万と五万か。そろそろ、相手も重力に慣れてくる頃か。あいつを出すぞ!」

「サンストーンですね」

「第七軍団で、対空砲の警護につかせてるが、戦場の真ん中に一人で躍り出てもらう。他のところは、ヘドロを第三軍団、ソーンを第五軍団の救援に向かわせろ」



 サンストーンが、兵士達を誰も連れずに、単独で宇宙船に向かってる。やがてエイリアンの小隊と対峙した。サンストーンが敵を見つけると、二本の刀を抜いた

「下駄じゃないから、上手く動けるか?」

 氷の地面のために、特殊な靴を全員履かされた。これを履けば、通常の地面のように動くことができるが、サンストーンにとっては違和感しかなかった

「まぁ仕方ない。『ラーの憤怒』」

 サンストーンの体が燃えた。それと、同時に地面が熱で溶け始めてる。エイリアン達の方にサンストーンが走り始めた。ダッシュで動くことにより、溶ける氷を最小限にしてる

「『イグニッション』」

 日本刀の帝釈天と阿修羅王が燃えた。エイリアン達は一斉に攻撃を仕掛けた。腹を叩いて、氷に亀裂が入るほどの爆音で攻撃したり。髪の毛を伸ばして、自在に操り拘束してこようとしたり。透明化になったりと。全員でサンストーンを殺しにかかった。しかし、どの攻撃もサンストーンの半径一メートルに入ったら熱でダメになった。サンストーンは困惑してるエイリアン達に飛びかかった

「我流の剣技を、お見せしよう」

 サンストーンは目の前の一人の胴を二本の刀で斬った。クロスに傷が入る

「『気炎流星群』」

 サンストーンが空に炎の塊を撃った。それが、無数に分裂して炎の雨として降り注いだ



 その頃、レッドマジシャン達が本部に帰ってきた。本部に着くとすぐにエドガーの元に転がり込んだ

「エドガー。大変だ!作戦が盗聴されてた!」

「何!?どうやって?」

「分からない。能力と技術、両方かも」

「そうか。ところで大将の首はとったんだよな?」

「九人リーダーがいたの。一人は殺し。一人は、弱体化させてきた」

「九人?」

「そう」

「センス!各軍団の一人にそれぞれ繋いでこのこと伝えろ」

 エドガーが三人を抱きしめた

「お前ら。よく生きてたな!よくやった。さすが、天才三人だ!」

 その時、本部の警護についてる兵士達が騒がしくなった

「大将!本部前にエイリアン!」

「どうやってここに!お前ら向かえ!」

 三人に指示を出した。しかし、部屋から出ようとしたら、地面が波打ち、そこからエイリアンが出てきた

「ふぅー。着いた」

「地面の中を泳いできたのか」

「お前が、エドガーだな?」

 エドガーの方を見たが、三人がエドガーの前に立った

「残念。殺させないよ」

「相手は一人。余裕だな」

「じゃあ応援を呼ぼう」

 エイリアンは指を鳴らした。すると、空間が裂けた。裂けた空間の中からエイリアン達が何人も出てくる

「あれは、能力じゃない!?技術で空間移動できるの!?」

「一人は余裕とか言うなよ。言わなければ、応援呼ばれなかったじゃん。『解』」

 トリックスターはブラスターや、刀を取り出し、二人とケイナンとセンスに渡した

「悪かったって。エドガー!逃げて!」

 ビーストソウルが叫んだが、エドガーはセンスとケイナンを部屋の外に突き飛ばした

「いいや。こっちを守れ!」

 エドガーが空間の裂け目に、手榴弾を投げ込んだ

「班長達を連れて、ここから逃げろ!」

 兵士達も、部屋に入ってきて、部屋内はお互いの攻撃で、安全な所はない。兵士達に、三人は部屋の外に無理矢理出された。部屋から、戦士達が全員出ると、エドガーが部屋の扉を封鎖した

「おい!何してる!班長を連れ出すぞ!」

 ケイナンが三人に叫んだ。手分けして、班長達の所に向かった。レッドマジシャンはアルレット。ビーストソウルはウィリー。トリックスターはボトムズだ。ケイナンとセンスはチョウに。レッドマジシャンがアルレットの所に向かうと

「レッドマジシャン。ここから逃げなさい!」

「あなたを避難させろ。とエドガーが」

「私は戦場では何の役にも立てません」

「いいえ。十分役に立ってる。あなたがいないと、兵は氷の上をスムーズに移動できず。ブラスターが量産できず。ブラスターを改良した対空砲もできなかった。それに、トラクタービームも」

「私が、いなくても、誰かがやってましたよ。あなたやビーストソウル。新機軸開発班のみんなが」

「逃げるの!」

「足手まといになるのは嫌です。死ぬときくらい、エイリアンと戦って、死にたい!」

 アルレットはレッドマジシャンを押し退け、エドガーの部屋から出てきたエイリアン達に向かって、ブラスターを撃ちながら突撃した。レッドマジシャンはその覚悟が決まった表情を見て、止められなかった。トリックスターがボトムズの所に向かったが、彼は

「ウィリーと医療従事者を全力で守るんだ!」

「あなたは?」

「私達は、修繕班だ。修繕するものが無い以上価値がない。ウィリーの所に急いで行くんだ!後から追いかける」

 トリックスターは医班の護衛に向かった。結局、外に出れたのは戦士達と医班の人達だった

「ボトムズが来ない」

「彼は、死んださ。エイリアンと相討ちで。チョウも同じだ。コンピューターが使えない以上価値が無いと言い、突撃した」

「センスさん。エドガーは?」

 センスは、エドガーの存在を感知した

「まだ生きてる。今、エイリアンを一人、倒したところだ」

「私達と繋げる?」

「あぁ。繋いだ」

 戦士達とエドガーが脳内で会話を始めた

「エドガー。医班は退避し、私達も外に出た。時間稼ぎは十分よ。逃げて!」

「いいや。いろんな事から逃げてきた俺が、唯一誇れるのは、エイリアンからは逃げたことが無いことだ」
 
「エドガーさんは、凄いよ。能力を持ってない老人なのに、まだ死んでないなんて」

「お前ら、本部から急いで離れろ。そろそろ、限界だ。致命傷を受けた。息子のガンドルドに伝えてくれ。マスターウェザーに俺が仕えたように、お前も誰か主人を持てと。・・・お前ら勝てよ!」

 本部の外に出てる人達が目撃したのは、本部が爆発して崩壊していくところだった。エドガーが緊急時の為に仕掛けておいた、爆弾を起爆させたのだ



 サンストーンは、敵を圧倒していった。だが、敵味方両方の死体が散乱してるところを歩いているときだった。突然死体が動き始めた

「ゾンビかよ。気持ち悪いな」

 サンストーンが死体を斬るが、死んでいるので、効いていない

「どこに、死体を操ってる奴がいる?」

 サンストーンが無数の死体達と格闘していると、センスから脳内に通信が入った

「戦士隊全員聞こえるか?能力がもうないから手短に言う。本部がやられた。指揮系統と大将は失ったが、負けてはいない。全員死ぬまで、戦いは負けてない!」

 サンストーンが死体の山を、斬っていくが、一向に数が減らない。すると、マスターウェザーが空から救援に来た

「サンストーン。能力者をやらないと終わんねぇぞ!」

「分かってますが、私はあなたみたいに空を飛べないんですよ。知ってました?」

 サンストーンが、燃えてる死体に噛みつかれたり、引っ掛かれたりしてる

「ゾンビ映画のように感染すんなよ!」

「わざわざどうも。あなたが、能力者倒してください」

 マスターウェザーは飛んでいった。数分後、死体がその場で倒れ始めた。マスターウェザーが戻ってくると、サンストーンに伝えた

「第四軍団がエイリアンから退いている。本部がやられてる時に、退却することになったから、伝達が遅れた。あそこが、退くということは、誰か戦士が殺されたか、敵わないほど強い敵がいるかもしれん。そっちを援護しろ」



 その頃、ゴースとディスガイズは敵の内部に潜入してた。ディスガイズは敵の一人に変装し、ゴースは敵の武器や戦闘服の中に入り込んでた。内側から潰す作戦を、戦争が起こると準備を始めた頃に言われた。なので、どこの軍団にも入らず、戦争のどさくさに紛れ、敵陣に入った

「なぁ。地球人は恐ろしいな」

 エイリアンに変装したディスガイズが、エイリアンの一人に喋りかけた

「意外と強い奴らだ」

「地球人の中には戦闘を楽しんでる奴もいるらしい」

「地球人は狂ってるな」

 その時、エイリアン達の戦闘服の中をゴースが飛び回ってる

「おい!あいつ誰だ!」

 ディスガイズがゴースを指差した

「あんな奴いたか?」

「地球人だ!」

 ゴースが、エイリアンの服に入り込んだ所を、ディスガイズがブラスターで撃った。しかし、撃つと同時に、ゴースは違う奴の戦闘服に入り込んだ。撃つことにより、ゴースに自分がディスガイズだと知らせたのだ

「おい!味方に撃つな!」

 だが、遅かった。ディスガイズの一発で、エイリアンの中隊は内乱を起こした。ゴースを殺そうと、必死になってみんなが攻撃したが、味方に攻撃が当たり、殺し合いが始まったのだ。たった二人で、エイリアンの中隊を半壊したが、二人とも、内乱に巻き込まれ死んでいった



 ゴースとディスガイズが直接倒した敵の数は一人もいないが、中隊を機能させなくした。戦士隊の全員は口を揃えて言うだろう

「敵の懐に入り込むことは、この二人にしかできない」
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