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第二部 エリミア編

93 兄弟ゲンカ

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「さてと、リッゾル君。私の戯れ言に付き合ってくれないか?」

「は?ガルクとシュリオンのところには行かないのか?!」

「行くさ。その前に、聞いて欲しいことがある」

 アイリンは辺りを見回して、リッゾルの耳元に顔を近づけた

「本当に戯れ言な。裏で事件を操ってる奴がいる」

 アイリンの言葉にリッゾルは驚いた

「えっ・・・」

「そして、だいたい予想できてる」

「誰ですか?」

「相当、イカれてるから、ゆっくり話していこうか・・・」



 その頃、シュリオンとガルクは互いに一歩も動かずにいた

「ガルク。これも幻かもしれないぞ!」

「幻ね・・・。質問だが、殴られていないのに、刺されたりしてないのに、痛みを感じたりするのか?」

「さぁ?」

「まぁ、幻だとしても。その時は全て壊すまで。俺様を力でねじ伏せれるフィオルはいない。貴様の策が裏目に出たな。真面目なフィオルなら、止めれただろうに!」

「まるで、俺じゃお前に勝てないみたいな言い方だな」

「もうすぐ、アイリンとリッゾルが来る。二人とも、貴様とは相性が悪いはずだ」

「じゃあ、その前に終わられようか」

 先に動いたのはシュリオンだった。ガルクの五感を支配した。ガルクの視界は真っ暗。聴覚には、ガルクの側に居た人達の声。嗅覚は、鼻が曲がりそうなほどのキツイ臭い。触覚は、とてつもない激痛。味覚は、殴られたかの時みたいに血の味。シュリオンは自分の戦闘空間を作り出した

「いいね~!だが、お前の居場所は分かる。全身の激痛も幻だと思えば問題ない」

 ガルクもガルクで強かった。自分の五感を支配してる相手の居場所が見えないはずなのに、殴りかかった。シュリオンもすかさず応戦した

「痛いな~」

「くそっ!」

 二人とも、自分が持てる最大の体術の技術で戦った。そして、互いに打撃が当たった

「俺は殴れてるのか?」

 ガルクは拳や脚に衝撃が伝わるのが分かるが、これも幻なのではないかと思ってしまった

「カスリもしてないね」

 シュリオンは嘘を言った。何発かまともに食らっていた

「はぁー。わざわざどうも。当たってるな。感覚はおかしくない」

「話聞いてたか?」

「いつから弟に嘘を言うように?」
 
「嘘?いつ言った?」

「分かるんだよ。嘘をつくとき、ネガティブな気持ちに微妙に変化が出る」

 シュリオンは悔しかった。自分の能力の方が相性が良いと思ってたのに、ガルクが天敵になっていたから

「じゃあ、これならどうだ?」

 シュリオンはガルクから全ての術を解いた

「これは現実か?幻か?」
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