上 下
154 / 160
第二部 エリミア編

94 シュリオンの弱点

しおりを挟む

「普通に考えれば、シュリオンが幻術を解く必要性がない。だが、シュリオンの事だ、普通の方法は使わないだろう・・・。くそっ!どっちだ!」

 ガルクには、シュリオンから幻術を解かれたことにより、余計に混乱していた。そして、見分けがつかなくなってしまった

「ガルク。どうした?」

 シュリオンは、剣や槍等に自在に形を変えることができる、半固形物のペネットを取り出した。シュリオンが強くそれを握ると、ペネットは剣になった

「・・・シュリオン。一つ気づいた事がある。これが、幻術でも現実でも、お前に攻撃すれば、問題はない。もし、仮に目の前にいるお前と認識してる奴が、お前じゃなくても、被害はないことがわかった」

 ガルクは空間を切り裂いた。そして、口笛を吹いた。すると、切り裂いた空間からアクトがやって来た

「気づいたことその二。お前が、幻術を人間の種族以外に使ってる所を見たことがない」

「なるほど・・・。確かに、人生において使った事がないな」

「そして、一つの幻術を複数人には共有できるが。一人一人に別の幻術を見せることは出来ないよな!二対一でこちらが優勢だ。アクト、あいつを倒すぞ」

 ガルクはアクトに命令した。それを聞いたアクトは鳴いた

「私は王だ!何人で来ようが負けない!」

 シュリオンは剣になってるペネットを構えながら、ガルクに向かって走った

「楽しいな~!俺様は楽しい!」

 ガルクもガルクで、真っ正面からシュリオンに対抗した。シュリオンがガルクに剣を振るが、ガルクはゆっくりとそれを避けた。しかし、すぐにシュリオンは幻術を使って、ガルクの目の前から姿を消した。ガルクは辺りを見回して、アクトが消えていることが分かった。振り返ると、何人ものシュリオンが一斉に斬りかかっていた

「全員分身。避ける必要がない。シュリオンの姿は見えないが、居場所は分かる」

 しかし、ガルクには一つの不安要素があった。アクトの姿が見えないため、連携が取れないことだ。アクトは無垢な生き物なため、邪心を感じ取る事が出来ない。なので、見えないためアクトと衝突したり、攻撃してしまわないか心配だった

「死ね!」

 シュリオンの分身達が、ガルクの背中に剣を突き刺した

「ヴァッ!」

 背中にものすごい激痛が走ってる感覚で、体を見ると血が溢れている

「シュリオン。幻術で血なんかわざわざ出さなくてもいいぞ!能力の無駄使いだ」

 その頃、シュリオンは空を翔んでるアクトの攻撃をかわすのに必死だった
しおりを挟む

処理中です...