突然の花嫁宣告を受け溺愛されました

やらぎはら響

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 のこのこ着いてきたけど大丈夫だったのだろうか。
 いや、大丈夫じゃないかもしれない。
 二日後の正午。
 尚里はアルバナハル王国の王族専用ジェットに乗って遠い目をしていた。
 おかしい。
 ルキアージュに一緒にアルバナハルに行くと行ったらあれよあれよと言う間に、パスポートが一日で作られ着の身の着のままに黒崎に会いに行った後で空港へ連れて行かれて今に至る。
 尚里の中では旅費を自分で貯めてからと思っていた。
 思っていたのだけれど。

「身ひとつでいらしてください」

 ルキアージュにとてもいい笑顔をされ、その言葉通りになっている。
 王族じゃないのでこんなものに乗れないと言ったけれど、聞く耳なしだった。

「尚里、気分が悪いですか?」

 心配そうに顔を覗き込んできたルキアージュに、遠い目したまま尚里はぎこちなく首を振った。
 飛行機に乗るのも海外に行くのも初めてなのに、もういっぱいいっぱいなのだ。
 ようやく入国して空港を出た頃にはほっと息を吐いたけれど、そのあとリムジンに乗せられてこれまた身を固くしていた。
 隣に座ったルキアージュがなにくれとなく世話を焼くので、だんだんこの綺麗な顔を見ているとリラックスするようになってきているくらい緊張した旅路だった。
リムジンからは町中を走っていないせいもあるのだろう。
綺麗なコンクリートの道を挟むように、南国の花独特の鮮やかな色やヤシの実が目を楽しませる。
日本とは違って暖かな風と眩しい太陽がそこにはあった。
最初に飛行機から見て感動した海はエメラルドグリーンから沖に向かってコバルトブルーになっていて、とても透明度が高い。
海を右手にしばらく眺めていると。

「尚里、あれが王城です」
「え!」

 言われた言葉と視界に入った建物の両方に驚いて、尚里は声を上げた。
 リムジンの向かう先には頑強な城塞と真っ白に輝く壮麗な建物が見えてきた。
 城というだけあって、横にも縦にも大きく、尖塔もある建物が強い太陽光を弾いている。

「ホ、テルに泊るんだよね?」

 向かう先が城と聞いて尚里はおそるおそる口を開いた。
 頼むから違うと言ってほしい。

「いいえ、滞在はあの王城ですよ」

 やっぱりかーっと内心悲鳴を上げてしまう。

(あれに泊るのか!)

 てっきりホテルだと思っていた。
 もしくはルキアージュの家に泊るのだと。

「でか……」
「王族が住んでいる区画と政治や軍事を担う区画が王城の敷地内にあるので、大きく見えるだけですよ。軍の寮などもありますし」
「へえ」

 だったら大きいのも頷ける。
 だんだんと近づくにつれて大きくなっていく王城に圧倒されていたけれど、尚里のとまどいなど気にもせずリムジンは大きな城門を通り抜けて更に中へと入って行く。
 そして滑らかにだだっ広いポーチに車が止まった。
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