突然の花嫁宣告を受け溺愛されました

やらぎはら響

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「どうしました?」
「いや、あんな出迎えられると思ってなかったから吃驚して」

 ふかふかの絨毯と、等間隔で精密な彫の施された台が並ぶ廊下に落ち付くわけはないけれど、一応落ち着いたと言えば。

「ピルケットには必要最低限の人数で済ませるように言っておいたんですが」

 きょとんとした顔に、本気かと思う。

「一応聞くけど、普段は?」
「さあ?三、四十人ほどでしょうか」

 倒れそうである。
 とりあえず台の上に飾られている白と淡い水色の花を視界に入れて、無理矢理和んだ。

「客間に案内しますね、一応王宮に部屋を持って住んでいるんですが、普段は軍の部屋で寝泊まりしていたので尚里を迎える場所がなくて」

 失敗しましたと少し唇を尖らせたルキアージュに、そうなんだと頷きながら。

「お世話になる身だしどこでもいいんだけど、それこそホテルとか」
「そんなわけにはいきません。王宮の敷地内に邸宅を建てるので」
「ちょっと待った!」

 今思い切り聞き捨てならないセリフが零れた。

「建てるって、家を?」
「はい、尚里を不特定多数のいる王宮に滞在させるのは嫌なので」
「待った待った!」

 慌てて尚里はルキアージュの右腕を両手で掴んだ。
 ふっとルキアージュの目元がほころぶけれど、そんなことを気にしている場合ではない。

「家建てるってどういうことだよ、俺まだ花嫁になるなんて言ってないぞ」
「はい、わかってます。ただ、いつでもアルバナハルに遊びに来てもらいたいんです。その時の滞在先ですよ」

 尚里は規格外のルキアージュの提案に、くらくらと眩暈がしそうだった。
 旅行で滞在する数日のために家を建てるなんて、聞いたことがない。

「建てなくていい!ていうか建てるなよ、頼むから」

 尚里が真剣に訴えても、ルキアージュは口元に笑みを浮かべている。
 これは絶対に建てる気じゃないかと恐ろしくなった。

「こちらですよ」

 ついとルキアージュに右手を取られた。
 ここ数日慣れてしまったけれど、エスコートは普通男から女にするものではなかろうかと疑問が過ぎった。
 着いた先は白い両開きの扉だった。
 後ろからついてきていたフルメルスタが前にまわって扉を開ける。
 おそるおそる足を室内に入れると。

「ふわ、あ」

 目の前に広がったのは、来るときにも見たエメラルドグリーンの海が前面に見える大きな窓だった。
 ぽかんと口を開けていると、そっとルキアージュに背を押される。
 室内はブラウンの絨毯に、白い大理石の丸いテーブルと椅子。
 壁には絵画や花が飾られていて、涼し気な印象をいだかせた。

「お待ちしておりました、尚里様」

 室内には小柄な少年が二人いた。
 二人とも深々と頭を下げているけれど、やはり褐色に赤い髪だ。

「紹介します、こちらがアーリンでこちらがリーヤです」

 ルキアージュに名前を口にされて、それぞれが顔を上げた。
 二十歳前くらいだろうか、二人とも顔が同じだったので双子なのだろう。

「アーリン・スレッドです。尚里様の身の周りをお世話させていただきます」

 口を開いたのは髪の毛先が跳ねていて、どこかおっとりとした雰囲気の少年だった。

「リーヤ・スレッドです。尚里様の護衛をさせていただきます」

 同じく顔を上げた少年は毛先がまっすぐで、アーリンよりも眉が太い。
 違いはそれくらいでまったく似た外見の二人だった。

「身の回りとか護衛とかって、この子たち僕より年下なんじゃ……」
「ええ、二人とも十九歳です」

 おそるおそる口を開くと、ルキアージュは何てことないように二人の年齢を口にした。

「年下の子に面倒なんて見させられないよ、まして護衛なんて!」

 十九など子供ではないかと思ったけれど。

「二人とも成人してますし、最近まで一人前に神殿と軍で働いていた人材ですから心配しなくて大丈夫ですよ。尚里と年が近くて信頼できる人物を選んだのですが、気に入りませんか?」
「いや、気に入らないわけじゃなくて……」

 アーリンとリーヤが眉を下げたのを慌てて手を振って否定した。
その尚里の言葉に、二人がほっと息を吐く。

「ああ、日本は二十歳が成人と少し遅かったですね。アルバナハルでは二人は立派な成人ですよ」
「……ならいいけど」

 そこまで言われれば郷に入っては郷に従えだろう。
 外国なのだから日本と色々と大きく違いもあるといものだと、尚里は無理矢理に納得したのだった。

「とりあえず汗を流してください、疲れたでしょう」

 ルキアージュのはからいに、尚里は大人しく頷いた。
 最短時間でアルバナハルへと来たので、慣れない環境も相まってくたくただった。

「こちらへどうぞ、尚里様」

 一歩前へ出たアーリンに。

「暁尚里です、しばらくお世話になるからよろしくね」

にこりと笑みを浮かべて、次いでリーヤにも目線を向けた。

「誠心誠意お仕えさせていただきます」

 二人は声を揃えて、もう一度頭を下げた
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