突然の花嫁宣告を受け溺愛されました

やらぎはら響

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 パチリと目覚めはまどろみもなく、爽快に目が覚めた。
 昨日は早く寝たからかもしれない。
 上体を起こし、ぐーっと伸びをしていると控えめなノックの音が扉からした。
 そして返事をする前に扉が開く。
 そこには昨日紹介されたアーリンがいた。
 起き上がっている尚里に気付くと、ぺこりと頭を下げる。

「起きていらっしゃいましたか、おはようございます、尚里様」
「おはよう」

ベッドから立ち上がると、アーリンが室内に入ってくる。

「こちらお着換えになります」

 アーリンが差し出した服を受け取りありがとうと言えば、いいえとにこにこと返された。

「お着換えが済んだら朝食になさいますね」

 至れり尽くせりだなあと思いながら頷けば、アーリンは一礼して部屋を出て行った。
 とりあえず渡された白い綿のシャツと薄い緑のハーフパンツにサンダルを身に着けて、尚里は部屋を出た。
 洗面所で顔を洗い終えると、アーリンがやってきて白いテラスへと案内された。

「おはようございます、尚里」

 テーブルで尚里を待っていたらしいルキアージュが、わざわざ立ち上がって尚里を出迎える。

「おはよう」
「昨日は食事をしなかったから空腹でしょう」

 テーブルに促され椅子に座る。
 淡いブルーのテーブルクロスの上にはオレンジジュースとエッグベネディクトが乗っていた。
 くうと思わず腹が鳴った。
 慌てて腹を押さえると、ルキアージュがくすくすと笑い手の平をどうぞとひらめかせた。
 お言葉に甘えてグラスを取り一口飲む。

「うわっ美味しい」

 思わず声が出てしまった。
 市販のジュースにはない濃厚な果汁の甘みが口いっぱいに広がったのだ。

「今日収穫されたばかりの果実をしぼったものです」
「へえ」

 それは美味いはずだと、ごくごくとグラスを空にしてしまう。
 すかさずアーリンが流れるようにジュースをつぎ足した。
 思わずガっついたことに恥ずかしくなる。
 部屋には給仕をするアーリン、部屋の隅にフルメルスタとリーヤが控えている。
 恐ろしい事に日本にいるときからルキアージュといるときは、どんな時もフルメルスタが控えていたので他人に見られながらの食事に慣れつつある。
 カトラリーを取りエッグベネディクトにそっとナイフを入れると、ポーチドエッグがふるりと揺れて黄身をあふれさせた。
 その光景は食欲をとてもそそる。
 尚里の底辺貧乏人の食事事情を思えば、あまり舌が肥えてしまうのは帰国したときに困るのだけれど、残すとルキアージュが心配してくる。
 どうやら尚里の食事事情を黒崎から聞いたらしいのだ。

「美味しい……」
「たくさん食べてください。尚里は痩せすぎです」

 それはそうだろう。
 必要最低限の栄養しか取っていなかったのだから。
 今はこの言葉に甘えようと、尚里はこくりと頷いて食事を進めた。
 ちなみにルキアージュも同じものを食べたのだけれど、所作が恐ろしく綺麗で自分のマナーは大丈夫かと心配になった。
 気にするなと言われたけれど、極力丁寧な食事を心がけた尚里だ。
 じっくり味わって食事が終わると、アーリンの淹れた紅茶を飲む。

「はあ、美味しかった」

 満足気に呟くと、紅茶を一口飲んだルキアージュがくすりと笑う。
 ルキアージュはカップをソーサーに戻すと。

「今日は海と市街地へ行きます」
「海も?」

 ルキアージュの言葉にぱっと尚里の顔が明るくなる。

「いいの?」
「勿論です。尚里にアルバナハルを見てもらうのが目的ですから」
 真摯な物言いに、嬉しくなる。
「尚里がよければ出発しようと思いますが」
「行く!」

 思わず子供のように身を乗り出すと、口元に笑みを浮かべたルキアージュも身を乗り出した。
 そして尚里の右耳にギリギリ触れないくらいに唇を寄せる。

「可愛い」
「ふわっ」

 思わずバッと身を引いて右耳を押さえると、くつくつと喉の奥で笑うルキアージュ。
 思わず睨みつけたけれど。

「車を回してきます」

 どこ吹く風でフルメルスタをつれてテラスから室内へと入って行った。

「尚里様、準備いたしましょう」
「準備?」

 アーリンに促され立ち上がったはいいけれど、この服ではいけないのだろうかと首を傾げた。

「日焼け止めをお塗りします」
「え、大丈夫だよ。帽子ある?それ貸してもらえれば充分だから」

 尚里の言い分に、しかしとアーリンが眉を下げた。
 見ればリーヤもうんうんと頷いている。

「女の子じゃないんだから、少し焼けるくらい平気だって」

 尚里の言い分に、ではとアーリンが渡したのは広いつば広の麦わら帽子だった。

「……これ女の子が被るやつなんじゃ」
「いいえ、一般的なもので男も被るものです」

 これだけは絶対、と言うアーリンにそれならと尚里は麦わら帽子を被った。
 確かにつばが広くて強い太陽光を遮ってくれそうだ。
 リーヤの先導でアーリンとポーチの車止めまで来ると、意外なことに白の一般車だった。
フルメルスタが車のドアを開けるので、二人に向き直りいってきますと声をかける。
すると双子は一瞬きょとんとしたあと嬉しそうに、いってらっしゃいませと頭を下げた。
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