突然の花嫁宣告を受け溺愛されました

やらぎはら響

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 砂浜に戻るのではないのだろうかと思っていると、テラスを出たらすぐに階段があって海へと降りられるようになっていた。
 けれどそれより驚いたのが。

「像がいる!」

 そう、像がいた。
 海の中に、一頭の像が佇んでいたのだ。
 まともに動物園など行った事のない尚里は、動物を間近で見るのは初めてだ。
 興奮してテラスの手すりにまで駆け寄ると、海の中から像の鼻が現れてブシャーッと鼻から海水を浴びせられた。
 いわゆる像シャワーだ。

「あはははっ」

 全身が一瞬で濡れてしまい、思わず笑い声を上げてしまう。

「凄い!こんな近くで見るの初めてだ」

 はしゃいで振り返ると、ルキアージュが何か眩しいものを見るように尚里を見ていた。

「ルキ?」
「降りましょう尚里、像に乗れますよ」
「ええ!」

 ルキアージュの言葉に尚里に喜色が浮かぶ。
弾んだ足取りで階段をルキアージュと降りた。
 海の深さは腰くらいだ。

「尚里様、鼻につかまってください」

 海で像の傍に立っていたアトバークにそう言われて、おそるおそる尚里は像に近づいていく。
 体や鼻、耳とすべてが大きい。
 思わずルキアージュへ視線をやると。

「大丈夫ですから」

 そっと手を取り像の鼻へと誘導された。
 ザラリとしている感触に、おっかなびっくりとしがみついた瞬間だ。
 鼻先がくるりと丸まって尚里の下半身をぐいと持ち上げた。

「うわああ」

 ぐいーんとブランコのように揺らされる。
 驚いて上げた尚里の声は、すぐさま弾んだ笑い声になった。
 数回のブランコを楽しんで降ろしてもらうと、アトバークが像に何か合図をする。
 すると像はゆっくりと足を曲げてしゃがみ込んだ。
 つぶらな瞳が近くなって、マジマジと見てしまう。

「さあ、尚里」
「へ?」

 手を取られて像の胴体の方へ近づくと、ルキアージュにひょいと抱えられ
像の背中へと乗せられた。

「へあ!」

 思わぬことにまぬけな声を上げてしまう。
 ひらりとルキアージュも尚里の後ろにまたがり、後ろから体を支えられた。
 まさかと思っていると、像はゆっくりと足を伸ばし始め。

「たっかい!」

 ぐいんと目線が高くなった。
 高さに驚いていると、像の鼻がゆっくりと高く掲げられ再び鼻シャワーが浴びせられる。
 尚里の笑い声がその場に響いた。

「凄い!凄いよルキ」

 後ろをはしゃいで振り向くと、鼻シャワーで頭からずぶ濡れになったルキアージュが髪をかき上げていた。

「あはは、ずぶ濡れ」

 ルキアージュも楽しそうに瞳をしんなりさせている。

「水も滴るいい男だ」

 思わず言うと、一瞬目を丸くしたルキアージュが尚里の目を覗き込んできた。

「いい男ですか?」

 あまりの近さと、低い囁き声に思わずカッと頬に血がのぼる。
 思わずルキアージュから距離をとろうとすると。

「尚里、危ないですから」

 逆にぐいと腰を引き寄せられた。
ぴたりと背中にルキアージュの逞しい胸が当たる。
 後ろから抱きしめるように腰も支えられていることに、尚里はどれだけ密着しているのかを意識してしまった。
 パーカーを着ていてよかったと思う。
 裸だったら絶対いたたまれなかった。
 像の背中から降ろしてもらうと、そろそろ次の目的地へ行こうと言われて、尚里はドキドキしていた鼓動を押し込めて頷いた。
 それにしてもパーカーが張り付いて気持ちが悪い。
 もう脱ぐのだしとファスナーを勢いよく下ろそうとした瞬間。

「駄目です」
「いけません尚里様!」

 ルキアージュが尚里の手を取って止めたのとアトバークが叫んだのは同時だった。

「え……なに」
「尚里、パーカーは脱がないでください。すぐにシャワーを浴びれますから」

 ルキアージュの言葉にアトバークもぶんぶんと頷いている。
 まさかまた肌を見せてはいけないとかだろうかと思ったけれど、そういえばトゥルクロイドを首から下げているのだったと思い出し納得する。

「大事な指輪を簡単に見せちゃ駄目だよな」

 うんうんと頷くと、ルキアージュがなんとも言えない表情をしていた。
 何故だろう。
 とりあえずシャワーを浴びて広間に戻り、何故かルキアージュに髪をドライヤーされた。
 自分で出来ると言ったのにだ。
 身支度が整うと、別室で待機していたというフルメルスタと連れ立って再び車に乗った。
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