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次は市街地に行くのだと聞いて、期待が高まる。
ビーチから離れて建物の並んだ景色が近づくと、車は市街地の中で停められた。
再び車から降りると今度はフルメルスタも護衛で一緒に行くらしい。
「わあ、可愛いな」
街並みを見て、尚里は感嘆の声を上げた。
街並みはカラフルだった。
薄いピンクや黄色、水色と建物が白色だけでなく、鮮やかな色合いをしているのだ。
建物の外観はあまり近代的な洗練されたものというよりは、外国の田舎というような外観だ。
それでも古いという感じはしない、独特な雰囲気だった。
くるりと尚里は後ろへと向き直った。
そこには白銀の髪をバンダナに隠しているルキアージュがいる。
さすがに市街地に行くには、その髪は目立ちすぎるからという理由だ。
国で唯一の髪色なのだから、当然といえば当然だ。
そういう尚里も出かけに渡された麦わら帽子を被っている。
黒髪は珍しいので、少しでも誤魔化すためだ。
といっても褐色の肌の人間だらけのなかで象牙色の尚里の肌色はどうしても目立ってしまうけれど。
「やっぱり観光客はいないんだな」
どこを見ても褐色に赤毛のアルバナハル独特の色彩だ。
道行く人は珍し気に尚里を見ているので、本当に外国人がいないのだなと思う。
「観光に力をいれなくても我が国は自国だけですべてまかなえますからね。環境保護の観点でも入国は制限されています」
そんなところに簡単に入ってしまってよかったのだろうかと思いつつ、くるくると眼差しを動かして風景を楽しむ。
「尚里、足元に気をつけてください」
「子供じゃないんだから、転ばないよ」
言った瞬間、石畳に躓いて体が傾いた。
こけると思った瞬間、ふわりと肩を抱かれて転ぶことをまぬがれる。
そしてどこか悪戯気にルキアージュが顔を覗き込んできた。
「気をつけて?」
思わぬ近さにパッと体を引く。
ルキアージュは簡単に手を離して、唇に弧を描いた。
「ビ、ビルとかはないんだね」
「ええ、基本的には建物は古い物をリノベーションされています。街並みはレトロですが室内は最新式のところが大半ですよ」
「へえ」
シブスト通りというらしいこの大通りは、人の流れも結構ある。
右を見ればカラフルな黄色や赤、緑などのコーンが並ぶソフトクリーム屋。
雑貨屋の軒先には籠のバックや麦わら帽子が沢山並んでいる。
像のモチーフのものも並んでいて、可愛らしい。
「喉が渇いたでしょう」
うながされて尚里は小さなカフェに入った。
緑色の壁に赤や黄色の花が飾られていて、艶やかだ。
二人は温かみのある木製のテーブルについた。
「えっと、俺お金……」
言いにくそうに口にすると、ルキアージュは驚いたように目を見張った。
「何を言っているのです。払わせるつもりはありませんよ」
「ええ……」
いくばくかは持っているけれど、アルバナハルのものに換金していないというつもりで言ったのだけれど、ルキアージュの言葉に尚里は驚いた。
そんなわけにはと言いかけたけれど、ルキアージュが店員にさっさと注文してしまう。
なんともいえない表情をしていると。
「あなたは招待された大事なお客様です。だから私にもてなさせてください」
「……そう言うなら」
納得しにくいけれど、招待された身なのは確かなのでお言葉に甘えようと思った矢先。
「それに、花嫁に尽くすのは史上の喜びです」
熱っぽい眼差しに射抜かれた。
思わず頬に熱が上がる。
ルキアージュには眼差しで、言葉で態度で大切だと感じさせられる。
それがくすぐったい。
思わず壁にある絵を見るふりをしてルキアージュから目線を逸らした。
「お待たせしました」
テーブルに置かれたのはピンク色のシェイクだった。
グラスの縁には赤い花がちょこんと添えられていて可愛らしい。
ストローに口をつけると、程よく固くて甘っずっぱい果物独特の旨味が喉を滑り落ちていく。
カラッとした暑さなので、ひんやりしたフルーツシェイクがとても美味しく感じた。
「ルキのそれはなに?」
目の前のルキアージュは、陶器の細長いコップを手にしている。
「ルルド酒ですよ。果実酒で、ジュースと変わりません」
酒という言葉に驚きつつも興味深げに見ていたら、飲みますかと差し出された。
酒をほとんど嗜んだことがない尚里は、おそるおそる口にした。
途端、カッと喉を焼いて胃に滑り落ちていく甘い液体にけほりと咳が出た。
味はすっぱい柑橘系で文句なく美味しい。
「美味しいけど、俺には無理だな」
残念そうに呟くと、尚里は酒に弱いんですねと認識されてしまった。
自分が弱いのではないと思いたい尚里だ。
ビーチから離れて建物の並んだ景色が近づくと、車は市街地の中で停められた。
再び車から降りると今度はフルメルスタも護衛で一緒に行くらしい。
「わあ、可愛いな」
街並みを見て、尚里は感嘆の声を上げた。
街並みはカラフルだった。
薄いピンクや黄色、水色と建物が白色だけでなく、鮮やかな色合いをしているのだ。
建物の外観はあまり近代的な洗練されたものというよりは、外国の田舎というような外観だ。
それでも古いという感じはしない、独特な雰囲気だった。
くるりと尚里は後ろへと向き直った。
そこには白銀の髪をバンダナに隠しているルキアージュがいる。
さすがに市街地に行くには、その髪は目立ちすぎるからという理由だ。
国で唯一の髪色なのだから、当然といえば当然だ。
そういう尚里も出かけに渡された麦わら帽子を被っている。
黒髪は珍しいので、少しでも誤魔化すためだ。
といっても褐色の肌の人間だらけのなかで象牙色の尚里の肌色はどうしても目立ってしまうけれど。
「やっぱり観光客はいないんだな」
どこを見ても褐色に赤毛のアルバナハル独特の色彩だ。
道行く人は珍し気に尚里を見ているので、本当に外国人がいないのだなと思う。
「観光に力をいれなくても我が国は自国だけですべてまかなえますからね。環境保護の観点でも入国は制限されています」
そんなところに簡単に入ってしまってよかったのだろうかと思いつつ、くるくると眼差しを動かして風景を楽しむ。
「尚里、足元に気をつけてください」
「子供じゃないんだから、転ばないよ」
言った瞬間、石畳に躓いて体が傾いた。
こけると思った瞬間、ふわりと肩を抱かれて転ぶことをまぬがれる。
そしてどこか悪戯気にルキアージュが顔を覗き込んできた。
「気をつけて?」
思わぬ近さにパッと体を引く。
ルキアージュは簡単に手を離して、唇に弧を描いた。
「ビ、ビルとかはないんだね」
「ええ、基本的には建物は古い物をリノベーションされています。街並みはレトロですが室内は最新式のところが大半ですよ」
「へえ」
シブスト通りというらしいこの大通りは、人の流れも結構ある。
右を見ればカラフルな黄色や赤、緑などのコーンが並ぶソフトクリーム屋。
雑貨屋の軒先には籠のバックや麦わら帽子が沢山並んでいる。
像のモチーフのものも並んでいて、可愛らしい。
「喉が渇いたでしょう」
うながされて尚里は小さなカフェに入った。
緑色の壁に赤や黄色の花が飾られていて、艶やかだ。
二人は温かみのある木製のテーブルについた。
「えっと、俺お金……」
言いにくそうに口にすると、ルキアージュは驚いたように目を見張った。
「何を言っているのです。払わせるつもりはありませんよ」
「ええ……」
いくばくかは持っているけれど、アルバナハルのものに換金していないというつもりで言ったのだけれど、ルキアージュの言葉に尚里は驚いた。
そんなわけにはと言いかけたけれど、ルキアージュが店員にさっさと注文してしまう。
なんともいえない表情をしていると。
「あなたは招待された大事なお客様です。だから私にもてなさせてください」
「……そう言うなら」
納得しにくいけれど、招待された身なのは確かなのでお言葉に甘えようと思った矢先。
「それに、花嫁に尽くすのは史上の喜びです」
熱っぽい眼差しに射抜かれた。
思わず頬に熱が上がる。
ルキアージュには眼差しで、言葉で態度で大切だと感じさせられる。
それがくすぐったい。
思わず壁にある絵を見るふりをしてルキアージュから目線を逸らした。
「お待たせしました」
テーブルに置かれたのはピンク色のシェイクだった。
グラスの縁には赤い花がちょこんと添えられていて可愛らしい。
ストローに口をつけると、程よく固くて甘っずっぱい果物独特の旨味が喉を滑り落ちていく。
カラッとした暑さなので、ひんやりしたフルーツシェイクがとても美味しく感じた。
「ルキのそれはなに?」
目の前のルキアージュは、陶器の細長いコップを手にしている。
「ルルド酒ですよ。果実酒で、ジュースと変わりません」
酒という言葉に驚きつつも興味深げに見ていたら、飲みますかと差し出された。
酒をほとんど嗜んだことがない尚里は、おそるおそる口にした。
途端、カッと喉を焼いて胃に滑り落ちていく甘い液体にけほりと咳が出た。
味はすっぱい柑橘系で文句なく美味しい。
「美味しいけど、俺には無理だな」
残念そうに呟くと、尚里は酒に弱いんですねと認識されてしまった。
自分が弱いのではないと思いたい尚里だ。
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