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結局あの後も一時間近くアーリンによって体を磨かれた。
花びらを浮かべたジャグジーに入ったり、足のむくみを取るためにもまれたりと、トータル四時間近くだ。
終わった頃には体はピカピカ心はヘロヘロという状態でアーリンから解放された。
室内に戻り、お茶を用意しますねと言われたのでサンルームへ行くと、ルキアージュがテーブルについて書類のようなものを見ていた。
思わず立ち止まると、ルキアージュがこちらに気付きテーブルに書類を置くと立ち上がる。
「仕事?」
邪魔ならと言いかけて、いいえと近づいてきた長身が首をゆるく振る。
「アーリンが飲み物用意してくれるって」
「そうですか」
ひとつ頷いた長身がふいにかがんで顔を寄せてきた。
まさかキスされるのではとぎゅっと目を閉じる。
けれど何の感触もしないので、おそるおそる目を開けるとルキアージュが目前で笑っていた。
「ふふ、いい匂いですね」
そのまま顔を離したことで、香りを嗅いだだけだと気づき一気に恥ずかしくなる。
「どうしました?」
「キ……いや、なんでもない」
キスされると思ったなんて自意識過剰にもほどがあると考え直し、尚里は言葉を飲み込んでごまかした。
そして話題を慌てて探し、先ほどのアーリンの言葉を思い出す。
「パーティーあるんだって?凄いな」
しかしパーティーという単語にルキアージュが眉根を寄せた。
「女をあてがおうとしてくるので鬱陶しいだけです」
「え……」
思いもかけない言葉に尚里は一瞬頭が真っ白になった。
ルキアージュが自分をまっすぐ見ているから忘れそうだけれど、そういえば彼はこの国で王と同じ地位にいるのだ。
女なんてよりどりみどりだという事実に、今さらながらに気付いた。
それに、彼は結婚をしていた記憶があると言っていた。
女性を選ぶのが当たり前だ。
子供だって。
なんだか胸にもやもやと鬱屈したものが回り始めて、尚里は思わず胸を押さえた。
別に、過去のことだ。
そう思っても気分は晴れなくて、思わず視線を落とす。
「尚里、どうしました?」
「いや、なんでもない」
ふるりと首をふると、ルキアージュが探るように顔を覗き込んでくる。
それに苦笑してみせると。
「よければパーティーへ一緒にと思ったのですが、具合が悪いなら……」
「俺も?」
「ええ、よければ。花嫁が来訪していることは周知の事実ですから。でも休んでいた方が」
ルキアージュの言葉に。
「行く」
反射的に尚里は返事をしていた。
パーティーに行けば女をあてがわれるという言葉に、なんとも言えない気持ちになり嫌だなと思った時には返事をしていたのだ。
尚里の反応に一瞬きょとりとしたルキアージュだったけれど。
「では一緒に行きましょう」
柔らかく笑った。
アーリンにパーティーへ出ることを告げると、再びエステが始まってしまった。
今度は髪やら爪やらを手入れするらしい。
ついでにボサボサの髪も散髪された。
まさかそんな準備が必要なのかと驚いたけれど、アーリンがとても張り切っていたのでもう諦めてまかせることにした。
夜になり、尚里は白いヒビリヤを着せられた。
鏡で見ると、ヒビリヤは似合っていないのではないかと思ったが、ルキアージュとアーリンが手放しで褒めたので、一応おかしくはないだろうと思いたい。
いらないと言ったけれど、いいえ絶対に似合いますと耳や腕輪もつけられた。
動くたびにシャラシャラと涼やかな音が鳴って、何だか落ち着かない。
対するルキアージュもヒビリヤを身に着けている。
長身のしなやかな体付きがよくわかって、男っぷりが上がるというものだ。
正直憎らしい。
彼も同様に耳や腕に装飾をつけているけれど、肩で切り揃えられた白銀の髪だけでもいいのではというほど華やかになっている。
尚里と違って目立たないものを身に着けているというのにだ。
「尚里、トゥルクロイドを」
準備が整ったところで、ルキアージュが尚里に手を差し出した。
ルキアージュが身に着けるのだろうと思った尚里は、胸元から鎖を引っ張り出す。
すると青い石が光に反射してキラリと煌めいた。
「はい」
首から取ると、鎖ごとルキアージュの手に乗せる。
受け取ったルキアージュが鎖から指輪を抜き取った。
「鎖は私が預かっておきますね。尚里、手を」
「え……いや、まさか」
当たってほしくない予感にサッと尚里の顔から血の気が引いた。
そんな尚里の反応は無視して左手を取られると、するりと薬指に指輪が嵌められた。
まるで吸い付くようにピッタリなサイズだ。
「ルキが嵌めた方がいいよ」
「いいえ、これは尚里の物ですから」
怖い事を言わないでほしい。
結局フルメルスタが迎えにくるまで、尚里は自分が指輪を嵌めることを反対したけれど勝利はしなかった。
花びらを浮かべたジャグジーに入ったり、足のむくみを取るためにもまれたりと、トータル四時間近くだ。
終わった頃には体はピカピカ心はヘロヘロという状態でアーリンから解放された。
室内に戻り、お茶を用意しますねと言われたのでサンルームへ行くと、ルキアージュがテーブルについて書類のようなものを見ていた。
思わず立ち止まると、ルキアージュがこちらに気付きテーブルに書類を置くと立ち上がる。
「仕事?」
邪魔ならと言いかけて、いいえと近づいてきた長身が首をゆるく振る。
「アーリンが飲み物用意してくれるって」
「そうですか」
ひとつ頷いた長身がふいにかがんで顔を寄せてきた。
まさかキスされるのではとぎゅっと目を閉じる。
けれど何の感触もしないので、おそるおそる目を開けるとルキアージュが目前で笑っていた。
「ふふ、いい匂いですね」
そのまま顔を離したことで、香りを嗅いだだけだと気づき一気に恥ずかしくなる。
「どうしました?」
「キ……いや、なんでもない」
キスされると思ったなんて自意識過剰にもほどがあると考え直し、尚里は言葉を飲み込んでごまかした。
そして話題を慌てて探し、先ほどのアーリンの言葉を思い出す。
「パーティーあるんだって?凄いな」
しかしパーティーという単語にルキアージュが眉根を寄せた。
「女をあてがおうとしてくるので鬱陶しいだけです」
「え……」
思いもかけない言葉に尚里は一瞬頭が真っ白になった。
ルキアージュが自分をまっすぐ見ているから忘れそうだけれど、そういえば彼はこの国で王と同じ地位にいるのだ。
女なんてよりどりみどりだという事実に、今さらながらに気付いた。
それに、彼は結婚をしていた記憶があると言っていた。
女性を選ぶのが当たり前だ。
子供だって。
なんだか胸にもやもやと鬱屈したものが回り始めて、尚里は思わず胸を押さえた。
別に、過去のことだ。
そう思っても気分は晴れなくて、思わず視線を落とす。
「尚里、どうしました?」
「いや、なんでもない」
ふるりと首をふると、ルキアージュが探るように顔を覗き込んでくる。
それに苦笑してみせると。
「よければパーティーへ一緒にと思ったのですが、具合が悪いなら……」
「俺も?」
「ええ、よければ。花嫁が来訪していることは周知の事実ですから。でも休んでいた方が」
ルキアージュの言葉に。
「行く」
反射的に尚里は返事をしていた。
パーティーに行けば女をあてがわれるという言葉に、なんとも言えない気持ちになり嫌だなと思った時には返事をしていたのだ。
尚里の反応に一瞬きょとりとしたルキアージュだったけれど。
「では一緒に行きましょう」
柔らかく笑った。
アーリンにパーティーへ出ることを告げると、再びエステが始まってしまった。
今度は髪やら爪やらを手入れするらしい。
ついでにボサボサの髪も散髪された。
まさかそんな準備が必要なのかと驚いたけれど、アーリンがとても張り切っていたのでもう諦めてまかせることにした。
夜になり、尚里は白いヒビリヤを着せられた。
鏡で見ると、ヒビリヤは似合っていないのではないかと思ったが、ルキアージュとアーリンが手放しで褒めたので、一応おかしくはないだろうと思いたい。
いらないと言ったけれど、いいえ絶対に似合いますと耳や腕輪もつけられた。
動くたびにシャラシャラと涼やかな音が鳴って、何だか落ち着かない。
対するルキアージュもヒビリヤを身に着けている。
長身のしなやかな体付きがよくわかって、男っぷりが上がるというものだ。
正直憎らしい。
彼も同様に耳や腕に装飾をつけているけれど、肩で切り揃えられた白銀の髪だけでもいいのではというほど華やかになっている。
尚里と違って目立たないものを身に着けているというのにだ。
「尚里、トゥルクロイドを」
準備が整ったところで、ルキアージュが尚里に手を差し出した。
ルキアージュが身に着けるのだろうと思った尚里は、胸元から鎖を引っ張り出す。
すると青い石が光に反射してキラリと煌めいた。
「はい」
首から取ると、鎖ごとルキアージュの手に乗せる。
受け取ったルキアージュが鎖から指輪を抜き取った。
「鎖は私が預かっておきますね。尚里、手を」
「え……いや、まさか」
当たってほしくない予感にサッと尚里の顔から血の気が引いた。
そんな尚里の反応は無視して左手を取られると、するりと薬指に指輪が嵌められた。
まるで吸い付くようにピッタリなサイズだ。
「ルキが嵌めた方がいいよ」
「いいえ、これは尚里の物ですから」
怖い事を言わないでほしい。
結局フルメルスタが迎えにくるまで、尚里は自分が指輪を嵌めることを反対したけれど勝利はしなかった。
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