突然の花嫁宣告を受け溺愛されました

やらぎはら響

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廊下を歩いていると、向かいからブラコスタが歩いてきた。
ぺこりと頭を下げると、一瞥されることもなく無視をされてしまった。

「花嫁である尚里様の方が身分が上なのに!」

 憤るリーヤに、そういえばそんな事を聞いたなと思いつつ疑問を訪ねた。

「ルキと仲悪そうだよね」
「イシリスに取り入ろうとしているんですよ。王太子になりたくて」
「第一王子なのに後継ぎじゃないんだ?」

 てっきり尊大な態度から、彼はルキアージュと近い地位なのだと思っていたけれど、違うらしい。

「彼は側妃様の息子で、第二王子のピルケット様は正妃様の息子なので、王太子はまだ指名されてないんです。民衆の指示はピルケット様なので、王と同等の地位にあるイシリスの指示が欲しいんですよ」

 なんとも王宮事情というものは複雑らしい。
 離している間に指定されていた中庭のガゼポに行くと、すでにピルケットが席についていた。
 尚里に気付くと、サッと立ち上がり頭を垂れる。
 周りにいた召使達も、深々と頭を下げた。
 恭しい出迎えにひるみつつ、尚里もぺこりと頭を下げた。

「我々に頭を下げる必要はありませんよ、尚里様」

 屈託のない笑顔に、尚里は肩の力を抜いて笑顔を向けた。

「お招きありがとうございます」
「敬語も不要です」

 いやでもと言えば、イシリスに話しかけるように敬語抜きでと言われてしまった。
 ルキアージュには最初に驚きすぎて敬語を使うタイミングを見失ってしまったのだ。
 お言葉に甘えさせてもらう事にして、尚里は席についた。
 それを見て、ピルケットも席につき召使たちが給仕に動き出す。

「今日はどうして俺を?」
「イシリスの誕生日を知らなかったようなので、プレゼントに困っているのではと思いまして」

 ピルケットの言葉に、そのとおりだと尚里は眉を下げた。

「知ってたら、せめて日本で何か用意したんだけど……ここじゃ外に行くのはルキと一緒だし、手持ちも日本円なんだ」

 その様子にピルケットがくすりと笑う。

「今日、明日はイシリスの生誕祭りがあります。何かいいものがあるかもしれません、お金は私が通貨に換えて差し上げますよ」

 願ったり叶ったりである。
 しかし。

「市場に出てもいい?」

 勝手に外出など大丈夫なのだろうか。
 というかルキアージュにバレずに買い物できるのだろうかと疑問に思う。

「リーヤがいれば大丈夫です。彼はマナが使えますから」

 思わずリーヤを見ると、こくりと頷かれた。
 頼もしい限りだ。

「イシリスを二時間ほど足止めしておくので、その間に出かけるといいですよ」

 ピルケットの提案に、尚里は一も二もなく頷いた。
 その後、アーリンも合流して尚里は双子と市場へ繰り出した。
 余談だがアーリンもリーヤ程ではないがマナが使えるらしいと知って、驚いた。
 昨日よりも出店の増えている市場をきょろきょろと歩きながら、尚里はどうしようと頭を悩ませていた。

「尚里様はどんなものをお贈りしたいですか?」
「うーん、プレゼントなんて買ったことないからなあ。ルキは何でも持ってそうだし」

 そっと胸にあるトゥルクロイドを服の上から押さえてしまう。
 これには大きく見劣りするかもしれないけれど、何か身につけるものなんか渡せたらと思っていると、ふとある出店に目が行った。
 店頭には色んな石が並べられており、その横にはブレスレットやネックレスが陳列されている。

「いらっしゃい、アクセサリーの材料だよ」

 店主に声をかけられ作り方を聞けば、一番簡単なのは石をつなげたブレスレットだと教えられた。

「それなら俺でも作れるかも」

 値段もピンからキリまであるので、予算内で納められそうだった。
 早速、石を選ぶけれど色とりどりで迷ってしまう。

「何色にしよう」
「黒曜石などいかがですか?尚里様の色なのできっと喜ばれますよ」

 アーリンの助言に、尚里は指差された黒い石たちに視線をやった。
 艶々とした黒曜石は綺麗だけれど。

「自分の色渡すって恥ずかしくない?」
「そんなことありません」

 双子は見事にハモッた。
 ならばと背中を押されてメインの石は黒曜石にした。
 それを繋ぐ小さな石は紫色のアメジストだ。
 たしかアルバナハルの喜色だったはずだ。
 最後に石を繋ぐ細い紐を選ぶと、尚里は王城へと帰路についた。
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