突然の花嫁宣告を受け溺愛されました

やらぎはら響

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王城に戻ると、額にガーゼを当てたアーリンが出迎えてくれたことに尚里は安堵した。
リーヤには持ち場を離れたことを深く謝罪されたけれど、もとはと言えばそうしてほしいと頼んだのは尚里だ。
気にするなと言えば、双子は深々と頭を下げた。
同様に出迎えてくれたピルケットが、後始末は自分がすると申し出たのをルキアージュが頷いている。
それを見ていたら、ピルケットにパチリとウインクされて、それに気づいたルキアージュの背中に隠されたのには、思わず笑ってしまった。
とりあえず埃っぽくて仕方がなかったのでお風呂に入りましょうと言われ、そうすることにしたのだけれど。

「さ、尚里様。髪を洗ってお手入れしますよ。潮風で痛んでしまいますからね」
「怪我してるんだからゆっくりしてていいよ」

 アーリンがはりきって風呂の準備をするのに、尚里が慌てて止める。
けれど。

「尚里様のお世話は僕の仕事ですから!」

 キリッとした顔で言い切られてしまった。
 実際、傷は浅いらしいのでその言葉を信じることにして、大人しく髪の手入れをされた。

「あのさ、その」
「どうしました?尚里様」

 湯舟に浸かって、アーリンが浴室を出て行こうとして振り返る。

「……相談があるんだけど……」

 おずおずとその内容を言えば、アーリンは目を輝かせて協力してくれた。
 協力的すぎて尚里が引いてしまいそうになったのは秘密だ。
 入浴を終えてソファーに座っていると、ルキアージュが来たことをアーリンに告げられた。
 それにドキリとしながら待っていると、ルキアージュが室内へと現れる。
 アーリンはそれを確認すると頭を下げて部屋を出て行った。

「落ち着きましたか?」
「……うん」

 お互いに気まずげに口ごもってしまう。
 尚里は手の中に持っていた指輪を一度ぎゅっと握りしめると、ソファーから立ち上がった。

「これ……」

ルキアージュに差し出した指輪に、彼は傷ついたように眉を下げた。

「私を拒絶しますか?」
「ごめん」
「ッ」

 まるですがるように、指輪を持っている手首を掴まれた。
 少し痛いそれが、ルキアージュの尚里に対する想いを体現しているようだと思ってしまう。

「あの……俺、自信がなくて、花嫁って言われてもピンとこなくて、それなのにこれを受け取ったの、後悔してる」
「強引、でしたからね」

 自重めいた笑みがルキアージュの綺麗な顔に浮かぶ。

「尚里、私は」
「俺!これを返すよ」

 ぎゅっと握られている手首が痛んだ。
 彼からの執着。
 尚里は柔らかく微笑んだ。

「それでもう一回渡してほしい。ちゃんと今度は受け取るから、花嫁として」
「尚里……」

 ルキアージュが驚いたように目を見開いた。
 じわじわと尚里の言葉が沁み込んだように、笑みを浮かべそれが深くなっていく。
 尚里の促すままに手首を離して指輪をそっと取ると、ルキアージュは尚里の左手を優しく持ち上げた。
 片膝をついてするりと薬指に指輪が吸い付くように嵌められる。

「結婚してください、私の花嫁」

 柔らかい唇がその手の甲に押し当てられる。

「喜んで」

 尚里が満干の想いで答えると、ルキアージュはその左手の甲に額を押し当てた。

「本当は俺も渡したいものあったんだけど」
「渡したいもの?」

 立ち上がり、ことりとルキアージュが首を傾げる。

「誕生日プレゼントにブレスレットを作ってたんだけど、海に捨てられたんだ」

 途端にルキアージュの唇がへの字に曲がった。

「残念です。とても欲しかった」
「うん、いや、だから、えっと……」

しどろもどろに尚里が視線を彷徨わせ始めると、ルキアージュが不思議そうに名前を呼んでくる。

(ええい、男は度胸!)

 ズボンのポケットからごそりと黒いリボンを取り出した。
 不思議そうにしているルキアージュから目線を逸らしつつ、左手首にそれを結ぶ。

「リボンかけるから……受け取ってくれるか?」
「尚里……ッ!」

 瞬間、抱きしめられた。
 顔が近づくと、何度も唇を啄まれる。

「何よりも嬉しいプレゼントです」

 ルキアージュの感極まった言葉に、尚里は頬が赤くなるのを感じた。
 新しいプレゼントを考えた時に、自分でもどうかと思ったけれど心だけでなく体も彼に差し出そうと自然に思ったのだ。
 自分から誘うなんてと思ったけれど、そこは腹をくくって内心恥ずかしさで憤死しながら頑張った。

「ん……」

 何度も角度を変えて口づけられる。
 唇が離された時に、尚里は以前噛んでしまった場所にそっと舌を這わせた。

「もう、痛くない?」
「平気ですよ」

 くすりと笑うルキアージュがまるでお返しとばかりに唇に舌を這わせる。
 その感触に尚里の唇がほころぶと、ぬるりと舌が入り込んだ。

「う、ふ」

 鼻から抜ける声に、自分のものなのに恥ずかしさでどうにかなりそうだ。
 ルキアージュの手が風呂上りの温かな肌を求めるように服の下から入り込んできた。

「あ、やっ」

 脇腹を撫で上げられ、そのまま胸に辿り着いた褐色の指が服の下で蠢く。

「ベッド、いきたい」

 ここでなんて恥ずかしすぎるし、正直もう立っていられない。
 口づけの合間になんとか伝えると、ひょいと抱き上げられた。

「仰せの通りに」

 抱き上げられるのは初めてではないけれど、今からのことを思うと顔を見るのが恥ずかしい。
ルキアージュの首に腕を回して肩口に顔を埋めると、彼が吐息で笑ったのがわかった。
寝室へと到着し、いささか乱暴にシフォンカーテンをまくると、しかし壊れ物のようにそっとベッドへ下ろされた。
シャツを脱ぎ捨てたルキアージュが覆いかぶさってくる。
 再び口づけを再開されて、そのあいだに手がシャツの裾を胸の上まで捲り上げた。

「ちょっま」

 裸になるより恥ずかしいと、止めようとしたけれど。

「ひゃあ」

 親指で乳首を押しつぶされた。
 驚いて声を出してしまったことに、ルキアージュが唇をゆるめる。

「かわいい、尚里」
「か、かわいくない」
「いいえ、かわいいです」

 ふっと吐息がかけられたと思って身構えた瞬間、乳首に舌を這わされた。

「ひん」

 丹念に舌が円を描き、ちゅうと吸われる。
 その反対では爪先でかりかりと刺激され、尚里は身もだえた。
 胸の刺激にもじもじと足を摺り寄せてしまう。

「ん、や」

 胸がてらてらと光り、空気にひんやりとするのに、体は熱くなってたまらなかった。
胸から腰へと体の形を確かめるように手の平がなぞっていく。

「あなたの肌は手に吸いつくようだ」
「ん、アー、リン、が協力、してくれ、た」

 切れ切れに白状する。
 そうなのだ。
 今夜ルキアージュに身をささげるに至って、恋人のいるアーリンに助言を乞うたら、肌を徹底的に磨かれたのだ。
 リボンを用意してくれたのもアーリンだ。

「いい仕事をする」

 くつくつと喉の奥でルキアージュが笑う。
 なんだか自分が凄くガッついているようで、尚里は思わず両手で顔を覆った。

「尚里、顔を見せてください」
「むり、はずかしい」

 断ったけれど、顔を隠している手の甲にキスの雨が降る。
 それがくすぐったくて、おそるおそる手をどければ、嬉しそうに瞳をしんなりたわませるルキアージュの顔がある。

「ありがとうございます。色々考えてくれたんですね」
「うん」
「お礼をしなくてはいけませんね」

 なんだか無性にいい笑顔で言い切られて、へとまぬけな言葉を返すと。

「ああっ」

 服の上から尚里の股間を大きな手と長い指が刺激しだした。

「やだ、うそ、ま」

 性急な動きに足の指先が丸まって、シーツを蹴る。
空いた片手で再び乳首をつままれたりこねられたりと、下半身とは別の快感が襲ってくる。

「や、でちゃ、でちゃうから」
「ええ、出してください」

 声にならない声を上げて、びくびくと体を跳ねさせると尚里は射精していた。
 ズボンも下着もつけたままで粗相してしまったことに、羞恥心で顔が真っ赤になる。
 はあはあと息をととのえているあいだに、ずるりと精液で汚れた服たちを脱がされた。

「あ、ああっや、ん」

 息が整うのを待ってももらえずに、今度は陰茎を口に含まれた。
 悲鳴のような嬌声が上がる。
 ルキアージュの肩で切り揃えられた髪が肌を滑ってくすぐる。
 熱い口内に含まれた陰茎がぴくぴくと動くのを可愛がるように、ルキアージュは吸って舐めまわす。
 快感からのがれようと身を捩じって逃げを打っても、すぐに腰を掴まれ引き戻される。

「あ、ああっ」

 ドクンと大きく脈打って、尚里はルキアージュの口内で吐精した。
 ごくりと喉を鳴らす音に、泣きが入る。

「うそ、のんだぁ」
「はい、飲みました」

 舌足らずに非難したけれど、尚里のものですからとにべもなく言われてしまった。
 尻のあわいを指が辿り、最奥の後孔に触れる。
 びくりと肩が跳ねると落ち着かせるように、腰から太ももをゆるゆると撫でられる。
 また先走りが尚里の陰茎からダラダラと零れて最奥まで濡らしていくのが、恥ずかしくて仕方がない。
 ゆるりと尚里の先走りで濡れた指が、後孔へと入ってきた。

「んんっ」

 異物感に思わず顔を顰めると、頬やこめかみにキスが散らされる。
 指が二本に増やされ、水音がぬちぬちと聞こえるのがいたたまれない。
 もういいからと羞恥で口走りかけた刹那。

「あ、んっ」

 びりりと一点をかすめた瞬間、我知らず尚里の口から悲鳴が上がった。

「ふゃ、や、やだ」

 いやいやと過ぎる快感に首を振る。
 パサパサと髪が枕に散ったけれど、ルキアージュは許してくれず尚里の弱い一点を指先でくすぐり続けた。

「まって、るき、るきっ」
「尚里」

 逞しい褐色の肩にすがって快感をやりすごそうとすれば、はあ、とルキアージュの口から熱っぽい吐息が漏れた。
 見れば、ルキアージュの下半身は服の上からでもわかるくらい、痛いほど張り詰めている。

「尚里、あなたに入りたい」

 耳元で低く囁かれ、尚里は無我夢中で頷いた。
そのしぐさに、ルキアージュが愛しそうに瞳をたわめる。
 手早く服をベッド下に脱ぎ落すと、ルキアージュはそそり立った陰茎を二、三度しごいた。

「息を吐いて」

 ルキアージュに言われるまま、なんとか息を吐く。
 その呼吸に合わせて、ぬぐぐと丸い切っ先が尚里の中へと埋め込まれていく。

「あ、う」

 息も絶え絶えになりながら眉根をよせて、すがっている肩に爪を立てた。

「尚里、尚里」

 何度も名前を呼ばれ口づけられる。
 下唇を優しく吸われ、一瞬体から力が抜ける。

「んんっ」

 ぐぬ、と一番太い場所が抜けてルキアージュの陰茎が尚里の体内へと押し込まれた。
 本当はまだ半分ほど入っていないのだけれど、尚里との体格差を考えればルキアージュはすべて収める気はなかった。

「動き、ますよ」

 ゆさ、と小さく体を揺らされただけで尚里は嬌声を上げた。

「や、んっルキ」

 抽出がどんどんと速くなる。
 はふはふと息を乱す尚里の髪や頬を大きな手の平が撫でていく。

「あぁっ」

 その手が下生えをくすぐり臍を撫でて胸の頂をきゅうとひねる。
 下半身だけでもいっぱいいっぱいなのに、と思って爪を立てる力が快感に比例して強くなる。
ルキアージュの逞しい腹筋にこすれて、尚里はいつのまにか再び吐精していた。

「ッ」

 ルキアージュが低く呻いた。
 びゅくびゅくと自分の体内に彼の精が注がれる感触。
 それにぶるりと身を震わせながら、尚里は意識を手放した。
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