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17 縁をつなぐ
しおりを挟む「え。それ本気ですか?」
少年は思わず遠い目をしました。
「もちろん本気だよ。」
ポンポン、と王子さまは本を叩きます。
「パンプキンポタージュにカボチャの煮付け……いろいろ調べてはみたけれど、あのカボチャを料理してしまうのは、やはり友好的でない。
ここはひとつ、うちの野菜畑にアレをお招きする方向で進めたいと思う。」
「はあ。」
「シンデレラは私が引き付けておく。君はそれを持ってカボチャのところへ行き、お城の畑に奴を定植するんだ。」
「ええええっ!」
渡されたのは肥料と、黒い畑の土です。
「それを持ってシンデレラのカボチャにアピールしろ。なんなら綺麗なカボチャも連れて行くと良い。」
「カボチャの美醜って何ですかー!?」
「さあな。ともかくやってみてくれ、上手く行けば彼女を城に足止めできる。」
「足止めしてどうされるんです?」
「私が、家まで送る。それでシンデレラの家がわかる。」
にっこり。王子さまは良い笑顔です。
ひょっとすると王子さまは、舞踏会でものすごく疲れてしまったのかもしれません。
お側仕えの少年は、王子さまのお顔と肥料袋を、何度も往復してガン見したのでした。
☆ ☆ ☆
その頃、シンデレラのお屋敷では。
舞踏会最後の夜に向けて、継姉たちのお支度が過熱しておりました。
「今日は本気出すわよ!」
継母が吠えています。
「いい、あなた達はね。学校を出たばかりのお子さまだって思われてるの。平凡な格好じゃ、垢抜けない小娘と見なされる。舞踏会で舐められたくないでしょう?」
継姉たちの前には、おっっっそろしくスッキリした真紅のロングドレス。
ラインが美しい、艶やかな逸品です。
(うお、どシンプル………っっ。)
シンデレラはよろめきました。
(こういう服はな、立派なお肉がガッツリ付いた女性を待っているんだよ!)
ぽっちゃりぜい肉が付いた下の継姉は引きつり、ペラーンとした薄い体の上の継姉は、この世の終わりのような顔をしています。
しかし継母は引きません。
「口紅は赤!髪型はアップ!さあ、どんどん靴を持って来てちょうだい!!」
(ええい、せめて被害を押さえよう。)
シンデレラはタオルを引っ張り出して、上の継姉の胴体に巻きました。
「何やってるの?」
「サラシじゃありませんよ。モコモコにして、体の厚みを出すんです。ドレスを押し返す肉の変わりです!
胸だけにパットを入れてもボリューム足りないですからね!!」
やれやれ何が悲しゅうて、姉妹で補正しまくってパーティーに行くのだか。
ぎゅうぎゅう。タオルを紐で縛りながら、シンデレラは王子さまのことを思いました。
(今日で舞踏会は最後かー。次はいつ会えるかなあ。………ぐすっ、もう会えなかったらどうしよう。あああ、そんなの嫌ー!!)
ええと。それは普通に、王子さまと連絡先を伝え合えば良いと思うのですが。
(住まいが暖炉とか言って引かれちゃうのも嫌……。)
シンデレラはシンデレラで、しょうもないことを悩んでいたのです。
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