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「八神さん? ごめんね? 中に出してしまって。泣かないで?   今、出すからね」

 先生は俺が泣いている理由が中に出したことだと思っているようだ。
 違う、違うよ、先生。

「違っ……嬉しくて……」

 トロリと尻を伝う生温い感覚に再び涙をこぼす。
 俺は先生にぎゅっと抱き着いた。

「先生……好きです……好きになってもいいですか?」

「僕なんて、八神さんに一目惚れでしたよ?  こんなおじさんなのに」

 フッと先生がそう言って笑った。
 こんなかっこいい先生がおじさんな訳なくって。
 俺は必死で否定した。

「先生はおじさんなんかじゃないです」

「ありがとう、八神さん」

 その呼び名に俺は違和感を感じて。
 先生に名前で呼んで欲しいなんて言ったらおこがましいだろうか。
 そう逡巡する。

「先生……春って……呼んでくれませんか? すみませんっ、図々しくて!」

「春……」

 先生がそう呼んで触れるだけの口付けを落とした。

「俺も……時雨さんって呼んでもいいですか……?」

 俺はおずおずと尋ねる。
 厚かましいだろうか。訊いてしまった後なのにちょっとだけ怖くなって。でも、そんな俺を先生がフワッと抱きしめた。

「良いに決まってます」

「時雨さ……」

 俺の瞳からボロボロ涙がこぼれた。
 こんな幸せなことってあるだろうか。
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