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「春、朝ごはん出来たよ」

 そう呼ばれてダイニングテーブルに着くとトーストとスクランブルエッグとサラダが用意されていた。

「いつもすみません、時雨さん」

「気にしないの」

 今日は部屋を解約しに行こうと思った。
 時雨さんに甘えてしまうことになるけれど、あの部屋にはもう帰りたくない。

「時雨さん、俺、今日部屋を解約してきます」

「一人で大丈夫?」

 時雨さんがまた形の良い眉をハの字にして問いかけてくる。
 大丈夫、部屋の解約くらい一人で出来る。

「大丈夫です……それよりも……部屋を解約したら時雨さんの迷惑になりませんか?」

 その言葉に時雨さんがフッと笑って。
 俺の頬にそっと手が当てられた。

「言ったでしょう? 僕は春が居てくれたら嬉しいんだよ?」

「時雨さん……」

 俺は思わず瞳を潤ませて、時雨さんの手の上にそっと手を重ねた。
 時雨さんが俺の手をぎゅっと握って「気を付けて行ってくるんだよ?」と言ってくれた。

「はい、行ってきます。時雨さんもお仕事頑張ってくださいね」

 そう言うと時雨さんがまたフッと笑った。

「そんなこと言われたの久しぶりだな」

 時雨さんはどんな人達と付き合ってきたのかな……なんて嫉妬してしまいそうになったけれど、時雨さんよりずっと年下の俺にはあずかり知るところじゃなくて。

 そんなことを考えるのはやめようと思った。
 今の時雨さんは俺を見てくれているんだから。
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