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「聖、昨日美聖と一緒に『ネロック』に行ったんだって?」
撮影の休憩中、俺の専属アパレルブランド『プリメア』の女社長・高山 亜美さんがスタジオまで足を運んできて突然そんなことを言われて驚いてしまった。
「あ、お疲れ様です。亜美さん。……はい、昨日美聖に〝婚約者〟を紹介するとか言われてナンバーワンの時也さんに会って……」
気さくな社長で、名前呼びを強要するところが可愛らしい女性だ。
で、この後撮影が終わったら店に行くつもりなんです……とは言わず、口を閉ざしたのだけれど――。
「時也に惚れちゃった?」
パチッとウィンクされながら投げ掛けられた言葉に俺は思わず目を瞬かせてしまった。
「正直……一目惚れでした。あっ! 人としてなんかもう魅力的すぎてって意味です。あんな人に俺、今まで出会ったことがなくて……」
「私は今は『ネロック』に元居た子が独立してオーナーやってる店に通ってるけど……ホストは入れ込んじゃだめよぉ? 一時の癒しをお金で買う場所だから。まして時也はナンバーワンだからお金かかるわよー。歌舞伎町界の〝覇王〟みたいな存在なんだから」
亜美さんが放った〝覇王〟という言葉が何だか酷くしっくりくるような気がして、ますます時也さんという存在に興味が湧いてくる。
(今日は邪魔な美聖がいないからたくさん話せるだろうな……)
「はい。時也さんは俺には手の届かないような人でしたよ。でもなんか、よくわからないんですけど感銘みたいなものを受けて。俺もああいう人間になりたいなって思いました」
「時也は格別らしいからねぇ。『ネロック』のナンバーツーに真夜って子がいるんだけど、私のいま通ってる店のオーナーと付き合ってるの。その二人のキューピッドが時也なのよ」
「え? それってナンバーツーの真夜さんって人と亜美さんの通ってる店のオーナーって……男同士で付き合ってるってことですか?」
パチパチと瞳を見開くと、亜美さんはなんてことのないように「そう」と頷くので少しだけ驚いてしまう。
「まぁ、夜の世界じゃ珍しい話じゃないし、私の推しを幸せにしてくれたのが時也だから感謝してるのよ」
「俺、今日は一人で店に行こうかなって思ってるんです。時也さんのこと、もっと知りたくて」
嬉々として告げると亜美さんは何やら意味ありげに笑いながら「ガチで惚れるなよー」と背中を叩いてくるので思わず苦笑してしまった。
「俺はそっちの趣味はないですよ。人として惚れたんです」
そのはずだ――。
「聖、昨日美聖と一緒に『ネロック』に行ったんだって?」
撮影の休憩中、俺の専属アパレルブランド『プリメア』の女社長・高山 亜美さんがスタジオまで足を運んできて突然そんなことを言われて驚いてしまった。
「あ、お疲れ様です。亜美さん。……はい、昨日美聖に〝婚約者〟を紹介するとか言われてナンバーワンの時也さんに会って……」
気さくな社長で、名前呼びを強要するところが可愛らしい女性だ。
で、この後撮影が終わったら店に行くつもりなんです……とは言わず、口を閉ざしたのだけれど――。
「時也に惚れちゃった?」
パチッとウィンクされながら投げ掛けられた言葉に俺は思わず目を瞬かせてしまった。
「正直……一目惚れでした。あっ! 人としてなんかもう魅力的すぎてって意味です。あんな人に俺、今まで出会ったことがなくて……」
「私は今は『ネロック』に元居た子が独立してオーナーやってる店に通ってるけど……ホストは入れ込んじゃだめよぉ? 一時の癒しをお金で買う場所だから。まして時也はナンバーワンだからお金かかるわよー。歌舞伎町界の〝覇王〟みたいな存在なんだから」
亜美さんが放った〝覇王〟という言葉が何だか酷くしっくりくるような気がして、ますます時也さんという存在に興味が湧いてくる。
(今日は邪魔な美聖がいないからたくさん話せるだろうな……)
「はい。時也さんは俺には手の届かないような人でしたよ。でもなんか、よくわからないんですけど感銘みたいなものを受けて。俺もああいう人間になりたいなって思いました」
「時也は格別らしいからねぇ。『ネロック』のナンバーツーに真夜って子がいるんだけど、私のいま通ってる店のオーナーと付き合ってるの。その二人のキューピッドが時也なのよ」
「え? それってナンバーツーの真夜さんって人と亜美さんの通ってる店のオーナーって……男同士で付き合ってるってことですか?」
パチパチと瞳を見開くと、亜美さんはなんてことのないように「そう」と頷くので少しだけ驚いてしまう。
「まぁ、夜の世界じゃ珍しい話じゃないし、私の推しを幸せにしてくれたのが時也だから感謝してるのよ」
「俺、今日は一人で店に行こうかなって思ってるんです。時也さんのこと、もっと知りたくて」
嬉々として告げると亜美さんは何やら意味ありげに笑いながら「ガチで惚れるなよー」と背中を叩いてくるので思わず苦笑してしまった。
「俺はそっちの趣味はないですよ。人として惚れたんです」
そのはずだ――。
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