覇王はトラウマごと疫病神を愛しすべてを覆す

ちろる

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「立てるか? リビングまで来れるか? 無理そうなら俺のお姫様抱っこで運んでやろうか? それとも……水飲んで口移そうか? なーんてな」

 楽しそうに笑う時也ときやさんに俺の頭の中はパンク寸前。

(本当にこの人……心臓に悪すぎる……)

「ちょっと頭痛いですけど……立てます。お姫様抱っこなんてやめてくださいよ。もう。本気にしますよ?」

ひじりちゃんが望むなら本当に実行に移すけど? 男だろうがかわい子ちゃんには変わりねぇしな。あ、でも美聖みさとさんに怒られちまうな」

 ククッと笑う時也さんをもう直視出来なくて、俺はバレないように紅潮した頬を隠したいみたいに俯きながらベッドから降りた。

 促されたリビングは二〇帖以上の広さはあるだろうかという、これまたモノトーンなファニチャーでコーディネートされたシックな部屋だった。

 黒いカーテンの隙間から覗く眺望を見る限り、二〇階以上の高さはあるだろうタワーマンションであることが窺えた。

 時也さんは俺を黒の革張りのソファに座るよう促してくるので、そわそわと着地するとすぐにキッチンからミネラルウォーターのボトルを持ってきて手渡してくれる。

「すみません……時也さん。っていうか俺、酔い潰れてたんなら美聖に連絡して迎えに来させてくれればよかったのに……」

「んー。なんか聖ちゃんは連れて帰りたくなっちまったんだ」

 そんなことをポツンと呟かれただけで、心臓がうるさいくらい跳ね回ってしまうのは何故だろう。

 時也さんは何気なく取った行動なだけだとわかっているのに、まるで〝俺だから特別〟みたいな言い方をされてしまうとドキドキして仕方がない。

(どうしよう……。俺、駄目かもしれない)

 ――そう、駄目だ。

 俺はもう誰かを愛して不幸にさせてはいけないし、時也さんに至っては同性など範囲外だろう。

 意識してはいけない。

 なのに、胸は勝手に高鳴って、酒の余韻で痛む頭は正常な思考回路を停止させてしまったのだろうか。

(時也さんに、たまらなく惹かれてしまう――)
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