覇王はトラウマごと疫病神を愛しすべてを覆す

ちろる

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 それから一年が経って――。

 俺は時也ときやさんのマンションで一緒に暮らしながら、フリーのモデルに転向して、本格的に多岐に渡ってこの道一本でやっていくことを決めた。

 時也さんはホストを引退して起業し、今はエステサロン『グリティア』の代表取締役を務めている。

ひじりちゃんさぁ……」

 情交の後、シャワーを浴びて時也さんとベッドでくっついていたら、彼は俺の右頬を撫でながら艶っぽく笑んで見せた。

 時也さんは、ホストを辞めて昼職になってからというもの、神秘的な白髪はくはつだった髪の毛を、今はトーンを落としたグレーアッシュにしていて、グレーの瞳と相まってますます魅力的になったと思う。

「なんですか? 時也さん」

 胸に顔をうずめて、時也さんの愛用するスパイシーで、それでいてフルーティでもある、甘い毒のような彼にピッタリの香水の匂いを鼻腔に吸い込む。

「今日さ、来年……『グリティア』が都内に新たに三店舗展開されることが決まったんだ」

「本当ですか?」

「ああ、聖ちゃんの内助の功のお陰ってわけ。そんでさ、訊きてぇんだけど、〝疫病神〟ってなんだっけか?」

 その言葉に俺はパチパチと瞳を見開いていると、シャワーを浴びてほこほこと温かい耳朶をまれるから、まだ鎮火したばかりでかすかに火種を残す身体がびくっと震える。

(そう……俺は疫病神だったんだ……)

「見事にさ、俺、疫病神追い払っちまったみてぇだな? 聖ちゃんと結納してから、幸せなことばっかだ。疫病神とか言ってた卑屈ちゃんは今は何を考えてる?」

「卑屈ちゃんって……事実だったんですから。でも――」

「……でも? 今は?」

(時也さんと一緒にいるようになって俺は……)
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