僕、魔女になります‼︎

くりす

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第2章〜新しい世界の歴史〜

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 まず、世界の改変が行われた時間軸は、正確には不明だが第2次世界大戦中である。
 そのため、改変が行われる時より過去の出来事は殆ど影響を受けていないが、改変後の時間軸は大きく書き換えられたことになった。
 そして、その改変の内容だが、どうやら世界大戦中のある日突然、太平洋上で後に『世界樹』と呼ばれるようになる途轍もなく巨大な樹木が出現した。その世界樹は出現した後に、その姿が広範囲の特殊な濃霧で包まれてしまったために近づくことが困難になってしまったらしい。そのため、世界樹に関しての調査は現代になっても殆ど進展していないとのこと。
 
 また、世界樹の出現はそれまでの世界の法則に大きく影響を及ぼした。
 それは、人間を含む数多くの生命や物質に多かれ少なかれの差はあるが『魔力』という新たなエネルギーを与えた。魔力の影響を受けた存在は様々な変化を表した。
 人間においては、魔力を手に入れる前と比較すると身体能力や平均寿命の向上が確認された。加えて、魔力の保有容量が一般的な値より大きい人たちの中には、魔力を用いることで世界の理に干渉し、様々な現象を起こす『魔法』と呼ばれる術を扱うことができる者がいた。
 その魔法を扱うことができる人たちは、のちに『魔法使い』や『魔女』などと呼ばれるようになった。
 魔女という言葉が意味するように魔法を使うことができたのは、現代でも女性しか確認されていないらしい。

 このような変化が世界で発生したが、世界は先程述べたように第2次世界大戦中だったために、大戦に参加している国々は魔法を新しい武力として戦争に用い始めた。
 実際、魔法の威力は個人の資質に大きく左右されるが、たった1人で多くの兵器を相手にすることができるほど強力であった。この魔法が導入されたために戦場は大いに荒れ果て、多くの犠牲者を出し続けた。

 しかし、魔力の出現から数年後、戦争に参加している主要国の多くである異変が発生した。
 それは、各国で他の魔女とは比較できない強さを持つ魔女が現れ、その魔女は自国にいる他の魔女を率いて自国の政府などに戦争の停止を要求したのだ。
 それに対して各国の政府は、国内外の魔女という戦力を相手にすることは、国の敗北に繋がると確信したために他の国々との間で終戦の条約を結ぶことになった。
 また、この終戦条約を結ぶのに要因の1つに、世界樹が出現してから世界中で後に魔窟(ダンジョン)と呼ばれる迷宮のようなものが発見されたのもある。

 終戦条約の締結後、世界の国々は政府と魔女たちの話し合いにより、国家によって一般の魔法使いから優秀と認められた者を『魔女』という資格を与え、魔女の役割などを決定した。
 魔女の役割とは主に2つある。
 1つは台風などの災害を含む国家が魔法の使用を認めた有事の際に、魔法を用いてそれらの処理を行うこと。
 もう1つは、先程述べたダンジョンの探索において、調査隊の補助や護衛などを行うことである。
 以上のような役割の決定後、各国は魔法使いを魔女として育成するための機関を設立すると同時に、その育成機関について国際的なルールを作成した。

 そのような案件が進んでいく中で、世界中で不可解な現象が起こり始めた。
 なんとダンジョンの周辺で魔力を持った異形の怪物が確認された。これらの怪物は、後に『魔物』と呼ばれるようになる。そして、魔物たちは近隣の人たちに危害を加えだす。
 これに対し、各国も銃火器や魔法を用いて対応した結果、並の銃火器では魔物に太刀打ちできないことが明らかとなった。
 そのため、魔物を魔女による解決を求める災害に決定した。
 しかし、魔物の存在は決して人々の生活に害を及ぼすだけではなかった。後に『魔石』と呼ばれる魔物の核(コア)のおかげで、魔法と科学の両方において技術の進展することができたのである。

 以上のような世界が、どうやら姉と女神であるルアの新たに作り出した世界らしい。

 
 
 そして、状況はルアと僕の会話に戻る。
 「以上が、これから貴方と貴方のお姉さんが生活していく世界についての説明です。細かいことは、新しい世界の貴方自身が知っていると思いますので大丈夫かと思います。」
 長々とした説明を終えた満足感からか、少し達成感がある表情をしながらルアは僕に確認をする。
 「何か質問や気になる点はありますか?」
 「新しい世界については、だいたい理解できたよ。ただ、さっきから気になってたんだけど『新しい世界の僕』というのは、『今の僕』からするとどういった存在なの?」
 「そう言えば説明していませんでしたね。大事なところなのに説明が遅れてすみません。」
 ルアは申し訳なさそうに軽く頭を下げた後、恥ずかしそうに微笑んだ。このような行動をされるとルアが女神様であることを忘れそうになる。
 そんなことを考えていると、ルアが説明を始めた。
 「結論から言いますと、新しい世界の貴方は新しい世界で育ってきた貴方自身です。そのため、今の貴方が新しい世界で生活していく上で必要な記憶や経験を有しています。そうすることで、今の貴方が新しい世界で戸惑うことなく生活できるための器が新しい世界での貴方です。」
 ルアはそう述べた後、これだけでは分かりにくいと思ったのか少し考え込むような仕草をしてから語り出す。
 「えっと…。例えるなら、 ロールプレイングゲームの主人公を操作する感じです。プレイヤー本人とは違う世界に存在し様々な設定を与えられていますが、プレイヤーの意思で動かすことができる存在ですから。」
 「なるほど。じゃあ確認したいんだけど、そんな存在が偶然生まれるとは考えられないから、姉さんがその存在を造ったのかな?」
 (ーーと言うか、女神様もゲームとか知ってるのか…。まぁ、観測が仕事らしいからおかしくもないかな?)
 「はい。まぁ正確には私も関与してますが…。ちなみに、貴方のお姉さんも同じような状況ですよ。」
 「つまり、僕も姉さんも今までの記憶と新しい世界での記憶がある状態で新しい世界での生活が始まるということ?」
 僕はルアに確認をした。すると彼女は笑顔で頷いた。
 「その通りです。ご理解していただいて良かったです。」
 「でも、姉さんにはどう説明したものか。僕自身はルアに説明してもらったけど、姉さんは急な変化に戸惑うだろうし…。」
 僕が呟くと、ルアは何処確信しているような雰囲気で応えた。
 「おそらくですけど、大丈夫だと思いますよ。」
 「何か根拠でもあるの?」
 「根拠はですね、貴方自身です。」
 ルアはよくわからないことを自信に満ちた笑顔で応えた。
 その発言に対して、僕は当たり前のように聞き返した。
 「僕が根拠?」
 「はい!だって貴方は今、貴方にとって非日常と言っても過言ではない状況にいますよね。」
 「まぁ、たしかに…。」
 「それなのに貴方は私の説明だけで、この状況を殆ど抵抗なく受け入れています!」
 そんなルアの言葉を聴いて、僕は自分がこの非日常的な出来事を受け入れていることに気がついた。
 そのことに少しばかり驚いていると、ルアは話を続けた。
 「そして、貴方が心配している人物は貴方のお姉さんです。きっと大丈夫ですよ!」
 自信満々のルアの説明を聴いた僕は、少しの間ポカンとした後に思ったことをそのまま口にする。
 「それ根拠になってる?」
 その質問を聴いたルアは、驚いた表情でこちらを見ながら、僕の質問に対して聞き返してきた。
 「えっ…。根拠になってませんか?」
 「うん。多分、なってない。」
 僕の返しを受けたルアは少し考えるような仕草をした後、名案が思いついたかのように掌を合わせながら口を開く。
 「じゃあ、女神である私の予言ということにしましょう。」
 (ーーこの女神様、ちょっと大丈夫かなぁ)
 そのような女神様に対してだいふ失礼なことを考えていると、ルアが幼い見た目に相応しい笑顔で台詞を続ける。
 「さて、他に何か質問はありますか?」
 「じゃあ、最後に1つ聴いてもいい?」
 「どうぞ。」
 「ルアは新しい世界には行かないの?」
 僕は、こちらの質問を待っているルアに対して尋ねる。すると、何か思うところがあるのか意味深な笑顔を浮かべながら答えてくれた。
 「私はあくまでも観測者です。そのため、私は基本的に世界への干渉はしません。まぁ、今回の世界崩壊ようなイレギュラーな事象が起きたら話は別ですけどね。」
 「じゃあ、ルアは新しい世界には来ないんだね。とりあえずは、世界の崩壊は防げている訳だし。」
 この僕の問いにルアは穏やか笑顔を返した。
 (ーーまあ、おそらく僕の言った通りなのだろう。)
 そんなことを考えていると、ルアが口を開いた。
 「貴方のことですから察してくれていると思いますが、一応注意しといて欲しいことがあります。」
 「ルアのことを姉さんに説明しないことかな?」
 「その通りです。私のことを思い出すと今回の世界改変を行った記憶が蘇ってしまう可能性があるからです。」
 ルアは僕がちゃんと理解していたことを嬉しそうな笑顔を浮かべた。
 そんな可愛らしい笑顔を見せながらルアはこの状況をまとめ僕を新しい世界に送り出す。
 「それでは紲名玲さん。色々とお願いをしてしまいましたが、新しい世界での新しい人生を楽しんでください。貴方の未来が幸の多いものになることを祈っています。貴方の想うがままの未来を紡いで下さい。それでは縁がありましたら、また会いましょう。」
 「まぁ、出来る限り頑張ってみるよ。」
 僕の返しに満足したのか、ルアは柔らかな笑顔を浮かべながら小さく頷くと、右の掌を僕の方に向けてきた。
 すると、ルアの右の掌に幾何学的な魔方陣が浮かび上がった。
 そして、魔方陣を中心に眩い光が生まれ僕の視界を覆い尽くした。その次の瞬間、僕の意識は遠退いていった。

 ーー「楽しみしてますよ。」ーー

 最後に、そんなルアの言葉が聴こえたのは気のせいだろうかーーー。
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